心理学のすすめ~よりよい成果をあげるために~

随分昔のこと、百人単位の部下を束ねる私の上司が、ある学会誌に「人は変わらない」という記事を寄稿されていました。
当時は私も十数人の部下を持つ身で、部下の一部に対して「この人は成長しないなぁ」とか、「考え方が間違っている」と思っていて、上司の寄稿した記事に対して「その通り」と頷いていたものでした。
私の指示をはき違えて理解したり、任せた仕事の結果が私の考えているものと全く違ったり、仕事が全く進んでいなかったりという部下に対して、私はその人の特性だから仕方がない・・・そんな事を思っていたのでした。
しかし、心理学を学び、カウンセリングを始めてみると、仕事やプライベートで問題を抱えた人達のお話を聞く機会がとても多くなり、その心情や問題点を理解するようになりました。
そして、その人達が抱えている問題をサポートしていくと、多くの人達がその原点に気づき、自らの力で変化していく姿を目の当たりにする事になりました。
もちろん、人により変化に要する時間は異なります。また、変化の過程も人により様々です。でも、その人達が変化するぞと思われている限り、変化していくのです。
この事実を実感して、私は「人は変わらない」という考え方から、「人は変わる」という考え方に変わりました。そう、私自身が持っている「観念」を変化させて、私自身が変化したわけです。私たちは誰しも問題を抱える可能性があります。
今、問題が無いと考えておられる人ですらその大小はさておき何らかの気になることはあるでしょうし、それが大きな問題に発展する可能性を秘めている訳です。
また、発達心理学者のエリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erik・H・Erikson)は、乳児期から老年期までを8段階に分けて、それぞれの世代で解決すべき問題(発達課題)があると提唱しています。年代に応じて問題が生まれてくるのですね。

問題が大きく脹らんでいくのは、その問題がその人のどんな過去の出来事とリンクしているかによります。広い意味でのコンプレックス(劣等感コンプレックスのみではなく、エディプスエレクトラコンプレックスやカインコンプレックスなど多くの感情の渦)であったり、その一部分である何らかのトラウマ(心的外傷)がその原因です。まさに、私たちは心の中に地雷原を抱えているようなもので、その地雷を踏み、爆発することによって問題が膨らみ始め、そして多くの場合それが連鎖してより大きな問題(爆発)へと広がっていきます。
そして問題が大きくなればなるほど、仕事や職場への影響も大きくなってしまうのです。
この広がりを食い止めるには、先ずは部下とのコミュニケーションを部下が望む方法で日常の中でとること、そして問題の芽を見つけたらそれが大きくならないように適切なサポートを行うことが望まれます。

企業では、近年管理職にメンタルヘルスケアの講習などが行われていますが、それでは管理職として不十分ではないかと痛感しています。人財をはじめとする与えられた資源で最大の効果を引き出すことが求められる管理職としては、それに留まらずより深く、人というものを理解する必要があるのではないでしょうか?
部下のモチベーションを上げたり、上手なコミュニケーションを行ったり、人が抱える問題を未然に防止することにより職場のストレスを無くし、よりよい環境を整えるなど、より大きな成果が得られる状態にできると思います。

私たちは、心について学校では十分に学んでいません。もっぱら自分の体験という自己流で学んできているに過ぎないのです。
英語でも数学でも、自己流でそれをマスターできるのは限られた一部の人ではないでしょうか?

よりよい成果をあげるために、管理職の方はもちろんのこと、多くの皆さんが心理学を学ばれてはいかがかと思います。

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この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。