きっかけは、たまたま目にした『お試し乗馬体験無料!』のダイレクトメールでした。
当時はコロナが少し落ち着いて人々が外に出だしていたものの、まだまだ“密”というものは敬遠されていた頃だったこともあり、無料体験だけのつもりで申し込みをしました。
そして体験当日。
誰かと直接交わせる言葉、馬の体温や乗った時の揺れ、息遣い。
ほんの短い時間だったのですが、じわっと心が潤っていく様な、何かがこみ上がってくるような感じがして、思わず涙が出そうになってしまったんです。
「癒されるっていうのはこういう事なのかもしれないなぁ…」
そんな経験をしてしまったものですから、当然の如くまたやりたいという気持ちが出てきてしまったのです。
ですが、私の中には元々“乗馬はお金持ちの人がやる事”というイメージがあったせいか、「私が習い事としてやるのはおこがましいのではないか」という気持ちも出てきてしまったのです。
実際にかかる費用については確かに安くはなかったものの、全く手が出ないという程でもなかったのに。
“またやりたい”と“おこがましい”、散々その間を行き来した結果、コロナが落ち着くまでの期間限定という条件で気持ちの折り合いがつき、入会する事にしたのです。
入会してからは曜日や先生にこだわりなく、時間が空いた時にぽつぽつと通っていたのですが、どの先生もみんな優しく、馬たちものんびり。
レッスン中はいつも私の心はルンルンで頭の中はお花畑の様な状態、「癒されるな~」と感じるひと時…。
そんな状態が数か月続いた後、初めて受ける先生のクラスへ参加しました。
いつも通りルンルン気分で馬に乗り、パッカパッカと歩き出して5分が経った頃、私の頭の中の花は全て吹き飛んでいったのです。
「何だそれ!全然だめ!」
「そんな合図じゃ何も伝わらない!!」
「全然ちがーーーーう!!!」
私達人間は、想像外の出来事が起きた時、100パーセント誰もが同じ状況になります。
それは一瞬で終わる時もあれば、しばらく続く場合もあるのですが、そう、…びっくりするのです。
ワタシハ…ナンテクラスニキテシマッタンダロウカ…。
「癒されるな~」なんて感じる隙は全く無く、レッスンが終わる頃には頭の中はすでにパンクし、身も心もヘロヘロ状態。
そんな中、先生が最後に言ったのです。
「今日言った事が最低限出来ないと、本当の乗馬の楽しさなんて分からないよ!」
私十分満足していたはずなんですよ。
そもそもが期間限定、限られた時間の中でわざわざこんなヘロヘロにならなくても、これからはまたルンルンなお花畑状態でいられるクラスを選べば良い。
「癒されたい」「気晴らしがしたい」という目的は十分達成されていたのですから。
ですがこその日の帰り道、私の中に今まで無かったものが生まれて溢れだしてしまったのです。
「全然できなかったのに楽しかった!無我夢中になれるって楽しかった!なんだかよく分からないけど楽しかった!
…で、本当の乗馬の楽しさって何なのさ?」
“乗馬はお金持ちの人がやる事”というイメージ。
結局それの根っこにあったのは「世間ではよくそう言われているよね」というだけの事だったのですが、一緒に出てきたあの“おこがましい”という気持ちは何だっんだろうって考えた時、3つの事が出てきたのです。
1つ目は、「うちは4人も子供がいるからお金がかかってしょうがない」と両親がよく言っていたので、長女だった私は子供ながらに「なるべくお金がかからない様にしなければ。だって私はお姉ちゃんだから!」という思いが大人になった今でも残っていたから。
2つ目は「神戸メンタルサービス(カウンセリングサービスの母体で、心理学を学んだり、心を癒すワークやセミナーなども受けられるところです)にも入ったのに、さらに乗馬?」という、1つあれば十分でそれ以上欲張るのはダメという意識強かったから。
3つ目は、たいして稼げていないとか、いい年して結婚もしていないとか、不足だらけの自分に喜びや楽しみを許可できない気持ちがあったから。
そんな3つが合わさって「私が乗馬を習い事にするなんておこがましい」という思になっていたようなのです。
*
あれから数年、私は今でも乗馬を続けています。
続けようと思えたのはもちろんあの時に溢れ出た気持ち、言ってしまえば“心が最高に喜んだ瞬間”があったからこそなのですが、そこにはもう1つの大きな収穫があったのです。
それは、“自分の感情に素直になり、自分が1番欲しいと思ったものを自分で与えられた。自分で自分を喜ばすことが出来た”という事です。
これには“自分に許可を出す”という事が必要になるのですが、私はずっとこれが出来なかったのです。
新しい出会いが多いこの季節。
これを読んでくださった皆さんの中にも、私の様に誰かとの出会いによって心に何かしらの“気持ち”が生まれるかもしれませんし、もしかしたらそれ以外の事で生まれるかもしれません。
そんな時、もしよければその“気持ち”を少し覗いてみてあげてください。
その先には、心が最高に喜ぶ瞬間が訪れるかもしれませんよ!
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。