セックスに依存する心

「セックスが本当にしたいわけじゃない。でも・・・」その心の内にある何かが鍵になってくるようです。

男女関係のカウンセリングの中で、意外というか、やはりというか、とても多いのが性に関するご相談です。
友人や家族、恋人にはなかなか言いにくい話題でもあるせいか、一人で抱え込んでしまっていらっしゃる方も多いようですね。

その中でも、最近「セックス依存症なのでは?」という方(ほぼ全員が女性)に良くお目にかかります。
以前、依存症や中毒に関する講座をご紹介してから、とりわけセックスに関するご相談が多いので、今回改めてご紹介させていただこうと思っています。

●セックスに依存してしまう女性達

とても言い難そうに、勇気を振り絞って話し始めて下さいます。
「私、セックス依存症なんじゃないかと思って」

中には、話を切り出しただけで、それまで我慢してきた気持ちが涙として零れ落ちてしまうケースも少なくありません。

「彼はいます。不満があるわけじゃないんです。でも、ふと寂しくなって、飲み会や会社で知り合った人と関係を持ってしまうんです。もちろん、彼への罪悪感で一杯で、辞めなきゃ、と思うんですけど、つい声をかけられると断れなくて」

「魔がさしたように、ときどき、無性に男性が欲しくなってしまうんです。そういうときは、わざとナンパされるような場所に行くんです。でも、その後はものすごい最低な気分になってしまいます」

「彼氏、って言う人、もうここ何年もいないんです。でも、セックスだけの関係の男友達はいつも何人かいて。いい加減、普通の恋愛をしようと思うんですが」

「彼と一緒にいるときは、何度も何度も求めてしまうんです。彼の方が根を上げても、いつも触れていないと不安で寂しくなってしまって。変態じゃないか、とか、すごく淫乱な女じゃないかって思って嫌な気分になってしまいます」

他にも色々なパターンがそこに見られますし、その背景も様々です。

●何が欲しいんだろう?

そんな女性達をカウンセリングするとき、僕は
「この方が本当に欲しいのは何だろう?」
という気持ちでお話を伺います。
もちろん、最初は彼女達もそれが何かはわかりません。
でも、話を聴くうちに少なくとも一つのことが分かってきます。

「セックスが本当に欲しいわけじゃないんだよね?」

そうお聴きすると、彼女達は一様に「ええ。そうなんですよね」と答えて下さいます。
「セックスそのものは彼とする方がやっぱり好きなんですよ・・・」とも。

そうして色々お話を伺っていくと、彼女達の心の中にぽっかりと空いた空洞のようなものが見えてくるようになります。

「凄く寂しいんじゃない?」
「実はめっちゃ怖がりさんなんちゃう?」
「何かいつも虚しかったりしてない?」

向かい合わせたソファ席から伝わってくる気持ちを伝えていきます。
そうすると彼女達は、時には頷き、時にはニコッと笑いながら同意してくれることが多いんです。

見た目や態度とは裏腹に、内面はとても素直で真っ直ぐな女性が多いことにも最近気付きました。
最初、取っ付き難かった方も、話をして打ち解けてくると、素直に自分の気持ちや心の内を話してくれます。
中には今までずっと誰にも言えなかった話を堰が切ったようにお話してくださる方も少なくありません。

そうして、更にお話を伺っていくとこんなことが解ってきます。
彼女達自身、内側にある満たされない寂しさや不安、虚しさを解消したいんだな、ということ。
だから、彼女達は、セックスの行為そのものよりも、むしろ、セックスが終わった後に裸で抱き合ったり、甘えたりして男性の体温を感じられる瞬間を求めているようです。
そこで感じられる深い安心感や繋がりで、その心の内側の空洞を埋めようとしているのかもしれません。

●セックスは親密感のシンボル

誰でも一人を感じると寂しさを感じるものです。
そして、寂しさを感じると人は誰かとの繋がりを求めるようになります。
友達や恋人に電話をかけたり、家族の元へ帰ったり。

でも、その寂しさや虚しさが強くなると、それは衝動的な欲求を引き起こすようです。
以前、僕がカウンセリングした方の中に、毎晩のように家の近くのコンビニに出かけ、そこで声を掛けて来た人に付いていって関係を持ってしまう女性がいました。
彼女自身、声を掛けられたところまでは覚えているのに、それ以降記憶が飛び、気付けば裸で見知らぬ男性にしがみ付いていたそうです。

そうなってしまった背景には、長年付き合った彼と突然別れてしまい、同時に当時よく遊んでいた親友にも裏切られ、そのダブルのショックでほとんど気が狂ってしまったようになった時期があったようなんです。
それで、夜な夜なクラブへ出かけ、男性と関係を持っていたのですが、それがエスカレートしてしまったようです。

彼女自身、彼氏と親友を同時に失った心の穴を必死に埋めようとしていたのかもしれません。
でも、同時に、それが元で更に強く傷つくことにもなってしまい、お会いした時には睡眠薬が無ければ眠れない状態にまでなっていたんですね。

セックスというのは、心理的に見ると親密感や繋がりのシンボルです。
性的な解放感もありますが、人との繋がりを直接的に感じることができる方法の一つなんですね。
親密感や繋がりを感じれば感じるほど、僕達は心の底から安心できます。
それは、まだ小さい頃に泣けばお母さんが飛んできて抱っこしてくれたような感覚に近いものがあるのかもしれません。

だから、セックスに依存してしまう女性達は、この安心感を求めてセックスに走ってしまうのかもしれません。
その後に辛い気持ちを感じることを知っていながらも埋められないくらいの空洞を心に抱えてしまっていると言えるのではないでしょうか。

●心の空洞を癒す

彼女達が心の真ん中に空洞を持つきっかけになったものは様々です。
失恋だったり、幼い頃からのご両親との関係がルーツになることもあります。
特に強烈なインパクトのある体験をされた方もいらっしゃいますが、その多くは普通に育ってこられた方ばかりです。

でも、親密感や繋がりを強く欲しているわけですから、それを作り出していくアプローチを僕は心がけるようにしています。
そんなことが可能なの?って思われるかもしれませんね。

大人になれば誰でも「繋がりが欲しいんだけど、男性とだったら抱かれる他ないし・・・」と思ってしまいます。
でも、そうじゃないんだよ、という経験をしていけば、そこで無駄に体を預けなくとも大丈夫になっていくんです。

欧米などでは恋人同士じゃない男女であっても、気軽にハグを交わしたりしますよね。
ほとんど挨拶のように。
ハグをしたり、目と目を見つめてアイコンタクトをしたりするだけで、心は親密感を感じることができるんです。
僕たちのセラピーでは、そんな感覚を心の中に作り出せるように色んなアプローチをしていきます。
もちろん、そのやり方は人それぞれなんですけどね。

彼女達をセラピーした後に良く頂く感想には次のようなものが多いんです。
「カウンセリングを受けたあと、電車に乗っているときも、家に帰った後も、心がほくほくと温かいままで、すごく不思議だけど、幸せな気持ちでした。この気持ちがいつまで続くのかは不安なのですが、こんな気持ちになれること自体が嬉しいし、不思議です」

僕はその感想にこんな返事を付けています。
「その気持ちがずーっと続くに越したことはないんですけど、そのうち少しずつ無くなって行くかもしれません。でも、この経験を忘れないで覚えていて下さいね。セックスしなくても、この感覚が得られるんだ、ということをね。それを覚えていたとしたら、悪戯に心を傷つけることもないし、自分を責めることも無くなっていきますから」

先ほど紹介したコンビニの彼女は、こうした親密感を感じられるセッションを重ねたり、心の痛みとなっていた彼氏や親友との関係、またはご両親との関係で出来た痛みを癒していくことで、すっかりとセックスに依存するパターンを解消していくことが出来ました。
とても素直だったせいか、劇的な変化を見せたことも多くて、僕の方が驚かされることもありましたね。
だいぶ以前の出来事なんですけど、とても印象に残っています。

もし、あなたの心にもそんな空洞があるとしたら、それを埋めていく方法があることを知って頂きたいな、と思います。
実際に使わなくとも、知ってるだけで安心することもあるでしょう?
いざという時のために、ね。

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