お互いを大切にするコミュニケーション(1)~違いを認める~

ここ数回の成井の担当回では”コミュニケーション”をテーマしてお話させて頂いていますが、まだまだネタが尽きないのがコミュニケーションの奥が深い所。苦手な上司や同僚、お客様に対してなかなか言いたいことを言えずに、仕事を失敗してしまったり、なんだか自分だけが損をしている様な気がする。。。

部下に対して色々伝えているつもりなのに、部下は全く自分の意図を汲み取らずそれどころか不満を持ったり、失敗をしてしまってどんどん自信を無くしていく。そしてその度自分の仕事が増えて抱えきれなくなってしまう。。。

もちろん、こうしたビジネスの場面だけでなく私達が他の誰かと関わろうとする時に避けて通れないのが”コミュニケーション”ですよね?

今回はコミュニケーションスキルの1つとして最近では企業や学校などの様々な場面でトレーニングにも使われている『アサーション』についてのお話です。

●アサーションって?

アサーションは1950年代にアメリカで行動療法と呼ばれる心理療法の中から生まれた考え方です。
当初は自己主張が苦手な人を対象としたカウンセリング技法として使われていましたが、その理論や思想は1960~70年代にはアメリカにおける人権擁護の思想と運動を土台として発展してきました。
私たちの「感じる権利」「考える権利」「表現する権利」は、すべての人に与えられている基本的人権であるという考え方が、それまで言動を圧迫され続けていた人達に大きな勇気を与えました。
そして現在では、自己主張・自己表現や、交渉の方法論として、欧米を中心に広くマネージメントの場面で取り入れられています。。

例えば「引込み思案の人がみんなを引っ張るムードメーカーになる!」という風に、急に自分の傾向を変えるのは難しい事ですが、コミュニケーションの仕方は変えられます。
より相手に自分の気持ちが伝わる様に、普段の自分の表現を少し変える事はそんなに難しいことではないのです。
しかし、その為にはまずは自分のコミュニケーションパターンに気づいたり、自分は何を感じ何を思い何を望んでいるのか?という自分自身を知るという事が大切になってきます。

●コミュニケーションの基本は「私」と「あなた」

対人関係は、必ずコミュニケーションの「伝え手」と「受け手」で成り立っています。
1対1でない、1対複数という場面もありますが、そこでも伝える相手は「その場にいる一人一人」に対してですので、コミュニケーションの最小単位は

『自分(私)』と『相手(あなた)』

と言えますね。

対面でのコミュニケーションであれば、伝え手側は会話の内容だけでなく、身振り手振りや表情、声のトーンや言葉の調子なども含めて、私達は相手に伝えたい事を表現します。
そしてそれらの情報・刺激を通じて受け手側にも自身の思考や感情などが働き、相手の話を受け取り、相手が何を言いたいのか?を理解します。

それがメールやブログ、資料などの文章でのコミュニケーションであれば、文字の大きさや絵文字、顔文字、デコレーションなどの画面の視覚的な要素だけでなく、受け手側の居心地の良さ(例えばくつろいでソファーにいるか?寒い外にいるか?等)や心の状態(落ち着いた状態か?それとも心に余裕がない状態か?等)も、情報・刺激として伝わり、それらも含んだ状態で、私達は相手の話を受け取り、理解するでしょう。

一口に「コミュニケーション」と言っても、そこにはたくさんの情報・刺激のキャッチボールがあり、それらのたくさんの情報や刺激を

『どう感じ、どう受け止め、どう意味付けるのか?』

という”理解の枠組み”は実は人それぞれ違っているのです。

それを簡単に書くと下の様なイメージですね。

自分:聞く・見る→【気持ち・考え】→表現する
↑                ↓
相手:表現する←【気持ち・考え】←聞く・見る

上の様なキャッチボールをぐるぐると続けながら、私達は相手を理解し、自分を伝える事ができます。

●違いを認めることが第一歩

この「”理解の枠組み”は人それぞれ違っていている」というのがお互いを大切にするコミュニケーションにおいて重要なポイントです。
相手との違いを「OK」とした上で、お互いにその違いをどう分かり合おうとするのか?こそが、コミュニケーションの醍醐味とも言えるかもしれません。

しかし多くの場合、私達は『自分にとっての当たり前=相手にとっての当たり前』と思い込んでしまいがちです。
その為、相手との違いを感じた時につい、「分かってくれない!」「理解できないのは相手の問題だ!」と攻撃的な気持ちになってしまったり、逆に「私は自己表現が下手なんだ」「どうせ話しても無駄なんだ」と気持ちを飲み込むようになってしまい、ますます相手と分かり合うことから遠ざかってしまうしまう事があります。

自分:聞く・見る→【気持ち・考え】→表現する
↑                ↓
相手:表現する←【気持ち・考え】←聞く・見る

私達が普段コミュニケーションを取る時には、上記の様な複雑なプロセスをいちいち考えたりはしませんが、このプロセスをあなたの頭の片隅にでも置いておいて頂けると、聞く・見ると表現するの間の【気持ち・考え方】が実はお互いにとても重要で、だからこそ普段あまり意識して表現しないこの自分の気持や考え方の部分をふまえた上で「より少しでも、明確な自己表現をしよう」という気持ちになるかも知れませんし、相手の話を聞く時にも心構えが出来るかも知れません。

そうした積み重ねが、より明確な相互理解を生み、相手とのコミュニケーションが気持ちの良いものになっていく事でしょう。

—–

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、対人関係、自己啓発、ヴィジョン、ビジネス心理を得意とし、”少しでも楽に・簡単に・シンプルに”をモットーに、分かりやすい心理分析と日常的に無理なく取り組める提案を行っている。 その人本来の輝きや、問題の先にあるヴィジョン(幸せな未来や才能)を引き出すカウンセリングが好評である。