お互いを大切にするコミュニケーション(3)~自分を知ってスキルを磨く

「アサーション」というコミュニケーションスキルをベースにお届けしている、『お互いを大切にするコミュニケーション』シリーズ。
今回はその第3弾です。

前回の第2回目は「自分のコミュニケーションのパターン(ついついしがちな自己表現の傾向)を知ろう」というお話でした。

おさらいすると、私達が自己表現をする時には大きく分けて3つの傾向があると言われています。

A: 不十分な自己表現(非主張的な自己表現)
B:過剰な自己表現(攻撃的な自己表現)
C:適切な自己表現(アサーティブな自己表現)

不十分?非主張的?という言葉はあまりピン!とは来にくいですよね?
それぞれを言い換えるとこんなイメージです。

A:自分の気持ちや考えている事を表現できない自己表現
B:自分の主張を通す為に、相手の気持ちや言い分を軽視してしまう自己表現
C:自分も相手も大切にしようとする自己表現

これは「どれがダメでどれがいい」という形で自分や相手を判断するために使う事はオススメしません。
それよりも、自分の自己表現の傾向を知ることで「もっと自分の気持ちをや考えを相手にスムーズに伝えるにはどうしたらいいか?」というコミュニケーションを円滑にする為のスキルアップに使ったり、
なかなかうまくコミュニケーションが図れない相手の傾向を知ることで、より相手を理解した上で相手に伝わりやすい形でコミュニケートするなど、
お互いが歩み寄れるコミュニケーションを目指す為の、傾向と対策と思って頂けるといいかと思います。

それぞれの自己表現の傾向は前回詳しくお話しましたので、よければそちらを参照下さいね。
http://ameblo.jp/tukaelbusiness/entry-11158247698.html

今回はそれぞれの傾向を知った上で「じゃあどうしていけばいいのか?」という対策の部分についてのお話です。

A:不十分な自己表現(非主張的な自己表現)
→自分の気持ちや考えている事を表現できない自己表現

● 自分の気持ちを大切にする

非主張的な自己表現は、相手を立てたり気を使ったりして、一見すると相手を大切にしているようですが、自分自身の気持ちや考えを踏みにじってしまう訳ですから、自分にとっても相手にとっても本当の思いやりや理解には繋がりにくいのです。
私達は一人ひとりみな違うので、「何も言わなくても分かってもらえる」というのは難しく、あなたから表現しないと相手も「あなたをどう大切にすればいいのか?」が分かりません。
またそれは逆も同じで「私は大切にしていたつもり」でも、相手にとって「本当に嬉しいか?大切にされたと感じれるか?」は、相手にしか分からない事なのです。

お互いがお互いを大切に扱う為にも、まずは【自分をオープンにすること】が鍵になります。

● 自分の気持ち・考えを明確にするトレーニング

赤ちゃんの頃、私達は自分の欲求や気持ちにとても素直でした。
しかし大きくなるにつれ、自分の気持ちを訴えても聞き入れて貰えなかったり、周囲の人や自分自身で「言ってはいけない」と禁止していく中で、だんだんと素直な自己表現をしなくなってしまいます。
表現しない気持ちや考えは、私達の心の中で認識し、強化されない為、段々と薄れていったり、心の底に封印されてしまいがちになります。
そうして「自分が何を求めているのか分からない」「どうしたいのか分からない」という状態が作られやすくなるのです。

まずは自分の気持ちを明確に把握すること。
そして出来る限り「自分の気持ちを表現すること」にエネルギーを注いでもいいと自分自身に許可してあげることが大切なのです。

その為の1番シンプルなトレーニングは、独り言でいいので「私は」という主語をつけて、自分の気持ちや考えを文章にしてみる練習をすることです。
例えば「どうしよう・・・」と感じた時には「私はどうしようか迷っている」、「違う!」と感じた時には「私は違った意見を持っている」、「攻撃された!」と思った時には「私は否定されたように感じた」という感じです。

相手がどんな行動をとったとしても、あなたの中で生まれる気持ちは、あなた自身のものです。
「私は」という主語をつける事で、あなた自身が感じていることを明確にしていく事ができます。
するとその分、相手にも分かりやすい自己表現になるのです。
また自分の気持ちはいつも白黒はっきりしている事ばかりではありませんので、「よく分からない」「どちらでもいい」という事もあると思います。
そうしたグレーな部分の気持ちや、曖昧な気持ちを確認しておくことも大切ですね。

B 過剰な自己表現(攻撃的な自己表現)
→自分の主張を通す為に、相手の気持ちや言い分を軽視してしまうパタ

● 自分に正直になる

過剰な自己表現をしてしまう人は、一見自己中心的に動いているように見えますが、実はその裏には相手に逆らわれることへの恐れや、相手が自分と違うに対しての不安(世の中に「正解は1つしかない」という観念から生まれます)、相手と向き合えない不器用さなどを抱えています。
その為必要以上に強がっていたり、相手に隙を見せないようにと防衛的になってしまいます。
自分が感じている不安や恐れ、不器用さを表現することを、「負けだ」「格好悪い」と感じてしまい、自分自身のそうした気持ちを抑えこんでしまい、自分自身に対しても不正直になってしまっているのです。
そうした自分の不安や怖れを隠すために、相手を攻撃して自分を守ろうとしている場合もあります。

お互いを大切にする為にも、【自分に正直でいる】というのが鍵になります。

● 要求や希望を明確にするトレーニング

例えば、仕事中私語で盛り上がっている部下に対して「うるさい!」と思った場合、いきなり「うるさい!」と非難するのではなく、少し「自分が何を”うるさい”と感じているのか?」を観察してみてください。
私語を一切禁止したい訳ではなくて、ただ話し声が大きくてがうるさいとか、話で盛り上がっている様子が仕事を怠けている様に感じれるのが腹立たしい、といった具合です。
そうするとそこでは「私語がうるさい」のではなくて「大声」や「怠けているように見える事」があなたにとって苦痛や不満だと言うことになるでしょう。

相手は自分たちが大声になっている事に気づいていないのかもしれないし、一段落ついて開放感から私語で盛り上がっているのかもしれません。
そこには相手なりの理由があります。
その時に、例えばあなたにとっては「大声」苦痛や不満なのだという事が明確になっていれば、そこでは「うるさい!」と同じように大声で相手を怒鳴るのではなく、
「その声が私にはとても大きく感じれるので、少し静かにお話してほしい」
と”お願い”という形で伝えられるかもしれません。

相手を非難したくなったり、イラッと来た時にこそ、「私はどうしてそう感じているのか?」を観察してみてください。
自分の気持ちを観察することは、状況や相手について見える事実を出来るだけ客観的に把握する事に繋がります。
そしてそれを感情的にならずに、相手に伝わりやすい『具体的な提案』という形で表現出来たときに、相手との衝突や誤解は大きく減らす事ができます。
また、相手に対する要望や提案や依頼は「1つしかない」という訳ではありません。
1つの提案に対して、相手も「YES/NO」という返事を持っています。
なので、自分の提案にもいくつか選択肢を考えておくといいでしょう。
提案する事が結論ではなく、そこから相手との話し合いを始めるつもりの心構えでいると、より楽に次の提案が出来るかもしれませんね。

C:適切な自己表現(アサーティブな自己表現)
→自分も相手も大切にしようとする自己表現

これは上記のA・Bそれぞれの傾向を知って対策を行った先に自然と辿り着く自己表現です。
アサーティブな自己表現は、多少時間がかかってもお互いを大切にしあえるので、お互いに晴れ晴れとした気持ちになれます。

意見の相違があった時には、面倒がらずにお互いの意見や気持ちを出し合い、相手に歩み寄ったり、相手から歩み寄られたりしながら、お互いにとって納得がいく答えを探していこうとする姿勢が大切です。
「相手のやり方に合わせるのか?それとも自分のやり方を通すのか?」ではなく、
「私と相手にとってのベストなやり方を探す」だけでいいのです。

また話し合いのプロセスでは2人の間に活発なやりとりが生まれるので、1人で考え込むよりもより豊かで創造的な結論へ至る事があります。
なので結果として、自分の可能性も相手の可能性も広げる事ができるのです。

3回に分けてお届けしてきました「お互いを大切にするコミュニケーション」。
アサーティブな自己表現を通して私達はより円滑なコミュニケーションをとっていきたいものですね。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、対人関係、自己啓発、ヴィジョン、ビジネス心理を得意とし、”少しでも楽に・簡単に・シンプルに”をモットーに、分かりやすい心理分析と日常的に無理なく取り組める提案を行っている。 その人本来の輝きや、問題の先にあるヴィジョン(幸せな未来や才能)を引き出すカウンセリングが好評である。