尊厳と誇り 〜命のピラミッドを感じて〜

僕は、毎月ご先祖さまのお墓参りを欠かしたことがありません。  
ずっとそんな良い子孫だったかというと全くそうではありませんでした(笑)
若いころは、お墓に行くという事すら、年に一回あるかないかでした(謝)


何年か前、僕がカウンセリングを受けている時の話です。
ちょうど、自分の尊厳、誇りについての話題だったと思います。
当時、僕はいろんなことに自信を失ってしまい。
男として家族を守る自分の力にさえ、疑問を抱く状態でした。
当然のことですが、僕には母方と父方の家、先祖があります。
その日のカウンセリングでは、父や母を取り巻く環境、
僕からすると祖父や祖母、親戚の叔父や伯母の話題になっていました。
普段の生活ではあまり意識していない領域です。
すると僕の中にあるひとつの感情を再確認しました。
母方の家にはすごく親しみをもっているのですが、
父方の家に対しては、なにか縁遠い距離を感じていたのです。
両親が離婚した僕は、父に引き取られ、父方の姓を名乗っていますが、
その父方の家に対して何か距離を持っていました。
理由はそんなに複雑ではありませんでした(笑)
父方の家は非常に厳しい家柄だったんです。
僕は小さい頃いわゆるママっ子でした。
そして母方の家は商売をしていて、祖父、祖母、親戚の叔父や伯母、
皆んなが子供好きで、まして僕は 初孫!
どれほど、僕を、かわいがり、かまってくれたかは・・
文字通り 僕は祖父や祖母の目の中に入っても叱られない存在でした(笑)
それに対して父方の家・・
父は兄弟も多く、貧乏な家だったので、それぞれがその全てを自らの手で、
立ち上げてきた企業家たちでした。
溺愛され、ひ弱だった子供の僕は、
よくその父方の親戚の叔父達に追いかけられたものです。
「なんやお前は女みたいな顔しやがって・・おっちゃんが育て直したる!!」
幼い僕は、縁遠くなりますよね。(笑)
そんな感情をその時になってもう一度確認した僕は何か気になりはじました。
祖父は父がまだ子供の頃、亡くなってましたので僕自身は会っていません。
祖母も、小さい頃の記憶はありますが、もう他界して何年も経っていました。
姓を名乗り、血を受け継いだ父の家系・・
何か、少し距離を持っている自分に罪悪感も感じはじめて、
なんとなく毎月お墓に行く様になりました。
毎回ちゃんと墓の周りの草をむしり、落ち葉を拾い、墓石を磨いて、
「 おじいちゃん、おばあちゃん、命を繋いでくれてありがとう 」
と、心に唱えながら・・
何ヶ月目かの時、墓石を磨きながらふと考えたんですね。
僕はまちがいなく この祖父と祖母の血を受け継いでいる・・
そして その祖父と祖母にはそれぞれ父と母がいる。  
その代のぼくのご先祖さまは 4人いたはず。
そしてそのご先祖の前の代には、8人。
その前の代は16人。その前は32人。そして64人・・128人・・・
あれ?? 遡れば遡るほど僕に血を継いでくれた人は増えていく?
今、考えると当たり前のことなんですけど、その時少し驚いたんですね。
それまで僕は、あまりそういうことを深く考えてなかったので、
命の歴史 ってなんとなく、すごい昔に二人存在していて、
その命が別れていって細分化されて、僕自身は、
その命のピラミッドの底辺の末端に存在しているんだと感じていました。
だけど今、墓を目の前にしている僕を中心に考えてみると、
僕の意識が届く範囲を遡る限り、
僕を命のピラミッドの頂点として、遡れば遡るほどご先祖さまが増えていく。
その一人一人が、まちがいなく僕に命を受け継いでくれた。
その人たちの一人がかけても今僕は存在してないはず。
そして、確かに今僕が、そのピラミッドの頂点に立っている・・・
それぞれの人生はどんなだっただろう。
もちろん幸せや豊かさもあっただろうが、
今のこの時代よりもっと厳しい時代があったことも僕は知っている。
今ここに立つ僕と同じ事を悩みぬいて生き抜いてくれた人たちも。
もっと、過酷な環境で、それでも生き続けてくれた人たちも。
ずっと遡れば、毎日毎日家族を養う獲物を追いかけて草原を走っていた頃も。
皆んな皆んな、命を守るため、生きるために戦っていたにちがいない。
そして、今僕はそのすべての人たちの命を受け継ぎその頂点に君臨している!
過去の壮大な数の人と、壮大な数の人生と命に僕は支えられ存在している!
そのすべての血と個性と命と、そのすべての生きる力を僕は引き継いでいる。
そしてもう一度そのすべての命に、感謝と誇りを感じ得たのを覚えています。
僕は、今 カウンセリングを通して、
僕達がいかに自分を愛せるかを、学んでいるんだと考えています。
そして、そのひとつの命がどれだけ輝いているか、
そして、その人生がどれだけの価値と尊厳を持っているのかを学んでいると。
今、僕達の中にまちがいなく流れているもの・・
時間を平いらにして見てみれば、
僕達のこの命は壮大な命に支えられている・・
僕達のこの人生は壮大な人生に支えられている・・
それを感じた時、そんな命と自分の存在に、
もう一度 尊厳と誇り を感じ得ることはできないでしょうか。
※吉原 直人は2007/6月でカウンセリングサービスを退会しました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

退会しました。