「恩返し」と「恩送り」

私は、生まれ育ったところから離れた他県に嫁ぎました。
主人(離婚しましたが)の両親と同居をすることにしましたが、家族以外に誰も知っている人がいない土地に住むことになりました。
子どもが生まれるまでは、私も働いていたのでさほど気になりませんでしたが、子どもが生まれてから、ずっと家にいるようになり、同居がとても辛くなりました。
日中、家にいるのが嫌でどうやって時間をつぶそうかと思うようになっていき、子どもを車に乗せて半日ドライブしたり、ショッピングモールに行きお昼を食べ、夕方までまたドライブをしたり公園で時間を潰して帰る。そんな毎日を送っていました。

住んでいたところは、主人の生まれ育ったところだったので、近所には主人の同級生も多く住んでいました。
その中の一人に、うちの子と同じ年の子どもがいるお宅がありました。
そこの奥さん(仮にAさんとします)も他県から嫁いで来たとのことでした。
子どもが同じ年ということもあり、家に呼んでくれるようになりました。
初めは半日くらい遊びに行かせてもらっていたのですが、だんだんと朝から夕方まで、ずっといさせてもらうようになり、お昼もいつもごちそうしてもらうようになりました。
本当に、毎日毎日「おいで。来てくれていいからね。」と快く受け入れてくれるので、なんでそこまでしてくれるのか聞いたんです。
そうしたら、「私もね、嫁いできたころ、Bさん(他の同級生の奥さん)に同じようにしてもらっていたの。してもらったことをしてるだけよ。」っておっしゃってくれました。

AさんはBさんにお返しをしたいと思っていましたが、Bさんは離婚されていてもう近所には住んでいなかったので、お返しはできなくなってしまったそうです。
でも、本人にお返しができなくても、他の人に同じようにしてあげればいいのだと思い、私に同じように親切にしてくれたんだそうです。

「孝行をしたい時には親はなし」ということわざがあります。
親御さんが亡くなられた方から、「親孝行らしいこと、なにもできなかった。生きている間にもっと親孝行しておけばよかった。」というお話をよく伺います。
そうおっしゃる方の言葉からは、とても後悔の念が感じられるのですが、そんな時に、いつもAさんのことを思い出すのです。
してもらった人へ直接恩返しをできればいいですが、それが叶わないこともあるわけで、そんな時は他の人へ恩を送っていけばいいのではないかなと。

親から受けた行為は、子どもにしていけばいいし、子どもがいなければ他の人にしてあげたらいい。
先生から受けた恩も、また他の人や子ども達に送っていけばいい。
上司からの恩は部下へ。
そうやって、してもらった人に恩を返すのではなく、自分がしてもらったように他の人にしてあげることを「恩送り」と言うそうです。

凄く良くしてもらったのに、お返しができていない時って、とても悔やまれるしずっと心のどこかに残っていたりします。
でも、そんな時は、他の人に親切にしていくことで、恩返しをしたい人への想いも癒されていくのではないかと思います。

また、恩返しでは、こんな気持ちになる場合があります。
親切にした相手から恩返しされていないと感じた人は「してあげたのに…」とか、「やって損した」と思うことがあります。
「あれだけしてあげたのに、たったこれだけ…」とか「もうしてあげない」なんていうこともあるかもしれません。
でも、そんな時も、「恩送り」を思い出すと、自分に返してもらわなくても「自分も他の人にしてもらったからしてるだけ」と謙虚な気持ちになったり、「他の人にしてあげてね」と優しい気持ちになれるのではないかと思います。

私も離婚をして地元に戻ってきてしまったので、Aさんへ恩返しをすることはできません。
Aさんへの感謝の気持ちを込めて、他の人へ恩送りをしていけたらと思っています。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

平島愛深

自己肯定・自己実現、対人関係(家族、子育て、職場)、離婚問題を得意とする。 離婚を経験する中、病気(リウマチ)を克服し、2人の娘(下の子は発達障害)を育てあげる。 「誰にも話せなかったことが何故だか自然と話すことができた」「どんなことでも受け止めてくれる」と圧倒的受容感に定評がある。