心地よい音色

みなさんは、ガムランって聞いたことがありますか?
ガムランはインドネシアの伝統的な民族音楽で、様々な青銅楽器を使って演奏されます。
何年か前にはCMでも使われていたこともあるので、みなさんもどこかで耳にされたことがあると思います。
最近ではヒーリングミュージックと呼ばれることもあるようです。
私が結婚していた頃、夫(元)の駐在でインドネシアに住んだことがあります。
その時、現地でガムランを習っていました。
 始めたきっかけは、友達が習っているのを知って見学としてついていったのが始まりでした。
主なガムランには中部ジャワのジャワガムランやバリ島のバリガムランがあるのですが、私が習ったのはジャワガムラン。バリガムランに比べると、ゆったりとしたテンポが多く、優しく柔らかな音が響きます。
そこは日本人主体の外国人のグループで、先生はジャワ人。 初めて行った日に私も楽器を触らせてもらい、すぐ演奏が出来たのが楽しくて嬉しくて、週2回、せっせと通うようになりました。
(楽譜にある数字どおりに楽器をたたけば、最初から誰でもガムランが出来た気分になれます。

ガムランは、数種類の楽器がいろいろなリズムを担当してひとつの曲を奏でる合奏になるのですが、個々の楽器の音色や響きが合わさった時のハーモニーや音色の心地よさや感動は、病み付きになってしまいます。
太鼓(クンダン)のテンポで同じ曲でも叩き方が変わり、曲の雰囲気が変わっていきます。
本当に奥が深くて、どんどん夢中になっていきました。
外国人のグループということで、先生のグループが結婚式で演奏する時に一緒にやらせてもらったり、どこかの大使館のパーティで演奏したりと、いろいろな経験をすることが出来ました。
日本に本帰国後は、ジャワガムランを演奏するグループがあることを知り、年に1度の演奏会を聞きに行ったりしていました。
その後、そこで初心者のためのガムラン講座が開かれることを見つけて、その講座に参加したのが8年ほど前のことです。
初心者向け講座(春・秋)は始ったばかりで、私は講座の初期メンバー(たぶん2期目)で2年近く通いました。
講座といっても、和気あいあいとした感じで、先生と生徒というような堅苦しさはありません。ガムランが好きな人たちが、ガムランの魅力を伝えたくて教えているというような教室でした。
ガムランには10数種類の楽器があるのですが、現地で習っていた頃はそのうちの3-4種類くらいしか触ることができませんでした。
でも、ここの講座では今までやったことのない楽器も習えておもしろいし、嬉しいし、何より日本語で説明が聞けるのがラクでした。
(現地の時は、インドネシア語でしたから、わかるようなわからないようなということも多かったのです。

一緒に習っているメンバーは、私以外はもちろんガムランを触ったこともない人たちばかりでしたが、ジャワ舞踊からガムランに興味を持った方、音色が好きでやってみたくてというように、年齢も仕事もきっかけも様々でした。
みんなガムランが大好きで、本当に熱心に習っていました。
 教えてくださる方(先生役)たちもとても優しく丁寧で熱心。当初の曜日以外にも練習時間を作って、個人レッスンのようにしてそれぞれが上達したい楽器を教えてくださったりもしました。
本当に楽しいものでした。
リズム感がない私は、なかなか上手く出来ないこともあったのですが、もっと上手になりたいと頑張っていました。
でも、途中でパートナーとの問題がおき、その渦中で夫(元)の転勤で東京を離れることになり、辞めざるを得ませんでした。
その後、東京へ戻り数年して私はひとりになるのですが、時々ガムランのことを思い出していました。
「またやりたいなあ。まだみんなやってるのかなあ」なんて思ってみるものの、自分の近況を聞かれると辛いという気持ちもあり、なかなか足が向きません。たまにその演奏グループのHPを見ては、なつかしく思ってみたりするぐらいでした。
またやってみたいと思いながらも、そこへ行くことはありませんでした。
でも今年になって、久しぶりにそのグループのHPを見たとき「春のガムラン講座」を見つけ、「やっぱり行ってみよう」とすぐに申し込みました。
 昨年に職場での異動もあり、今のほうがその練習会場にも遠くなったのですが、なぜだか素直に行きたい! 行こう! と思ったんです。
だけど、申し込んだのが2月の初めで講座は4月中旬から。直前まで申し込んだことをすっかり忘れているくらいで、もう行くのを辞めようかという気持ちも湧いてきました。
ただ、申し込みの時に以前にも講座でお世話になったことを伝えてあり、覚えていてくださったので行かないわけには行かないと思い、頑張って行ったんですよね。(申し込まなきゃよかった、くらいの気持ちでした。

講座初日、そこにいたのは変わらない先生たちとあの時一緒にやった初期メンバーがまだ4人ほど残っていてビックリ。彼らはずっと練習にきていたそうで、今年で10年目だとか言ってるんです。
私が辞めて8年近く経っているのに私を覚えていてくれたことも感激だったんですが、もっと驚くことは見た目が全然変わっていない。(老けていないんです。
) 最後に会った時の彼らそのままで、つい先月まで私も来ていたかのような感じでした。
(好きなことをやっていると若いままのようですよ。)
数年ぶりのガムランは、やり方を忘れていることも多かったけど、簡単な楽器なら自然と手が動きます。
嬉しい、楽しい、ワクワクの気持ちが湧いてきて、何よりガムランをやりながら感じたのは、「ああ、やっぱりこれ(ガムラン)が好き!」という思いでした。
好きなものや好きなことって、別にないなあと、実は思っていることが多い私ですが、「ああ、これが好きだった。大好き!」という気持ちを思い出させてくれたのがガムランでした。
止まっていた時間が動き出したかのような気持ちになりました。
それに、初期のメンバー(同期ですね)とも以前よりフランクに話せる感じがあり、とても気楽に楽しめたんです。
(その頃は離婚問題を抱え始めてたころですから、私も心を閉じていて固かったでしょうね。)
「初期メンバーが戻ってきてくれるのは、嬉しいよ」と口にしてくれる人もいて、受け入れてもらえたという嬉しさでいっぱいでした。
面倒くさくて行くのを止めていたら、こんな気持ちは味わえなかったことを思います。
講座はもう終わってしまったのですが、毎週練習会があるので続けていこうと思っています。
みなさんにも昔夢中になっていた好きなことや止めてしまった、止めざるを得なかった好きなことはありますか?
もう一度始めてみることは、何か気持ちを動かしてくれるかもしれませんし、何かを思い出させてくれるかもしれません。みなさんもよかったら試してみてくださいね。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

自己否定、自己嫌悪、疎外感、自己肯定を得意とする。「その方の心に寄り添い、一番の味方でいること(安心感)」をモットーに、わかりやすい言葉で恋愛問題や対人・自己との関係を紐解き、改善・生き易さへと導いている。  東南アジア2カ国での生活経験もあり、国や文化の違いについても造詣が深い。