●イッツ ア ミステイク

僕はかつて、建築作業場に出入りする車両誘導の警備員をしていました。
作業
場の警備員と言えば、多くの方は出入り口(ゲート)に立ってるだけでラクそ
うな仕事だな、立ってるだけで一日がすぎてお金もらえてうらやましいな、っ
て印象をお持ちの方もいるかもしれませんが、さにあらず。
ちなみに作業場に入る車って、一般車両で材料を届けに来る業者さん方の車が
あれば、作業に来る職人さんたちの車もあります。
多くは、大型車がほとんど
です。
荷の積み下ろしに便利な、アームクレーン付のユニックトラックやダン
プトラック(ダンプカー)、生コンクリート運搬のミキサー車やけん引荷台が
ついた大型トレーラー、でっかいクレーン車などなど・・・。
道中の大型車をごらんになるとわかると思いますが、進行方向にむかって長い
車が多いかと思います。
道を曲がる時は周りこんで曲がります。
例えば交差点
を左折する時は、全体を少し右へはみださせて後部がカドにあたらないように
行きます。
右折の時はその逆です。
後輪は、ハンドルとつながった前輪のよう
に向きを変えられないからです。
大型車のドライバーの方は、安全のためにこ
ういった運転をされます。
(トラックの最前部を「アタマ」・最後部を「オシ
リ」と呼ぶ関西独特の言い回しがあって、このような大型車の曲がり方を「オ
シリをふる」と言います。
)
僕らがゲートに立った時の仕事は、大型車が場内搬出時に接触事故のないよう
に気をつけるのと同時に、ゲート付近に車両が入りやすくするためのスペース
を確保すること、それと近隣(きんりん)対策(詳しくはのちほど)でした。
作業場は住宅街にあることもあれば、ビジネス街の時や、商業地や歓楽街の時
もあります。
道が混みあい、駐車場もいっぱいの時に、ゲートそばに車を止め
に来る方もいます。
ところがそれをされると、先ほどお伝えしたように、搬出
入の大型車は車長が長いので接触したり、曲がりきれなくなることもあるので
車両感覚を読んで前もって、余分目にスペースを確保しておくことでした。

が一駐車しようとする車があれば、丁重に移動をお願いする、配達の車が納品
に困って止めようとしたら「じゃあ5分だけOK」って停車時間を時間を区切
るかたちで移動をお願いしてました。
忙しい日には、掘削土砂搬出大型ダンプ三十台、生コン打設の十屯ミキサー車
百台、ショベルカー搬出用幅広の六十屯低床(ていしょう)トレーラーが来た
り・・・段取りが重なることもありました。
(大きな作業場では十屯ミキサー
車搬入が一日に四百台なんてケースも。そんな時は、警備員はゲートに2人つ
きます。

作業場の周辺環境も様々なので、工事が始まる前には周囲の方に、事前説明の
上、合意が得られた上で始まるのですが中には悲しいかな、始まっても協力的
ではない方々もおられました。
言い合い・押し問答・ケンカ・なぐりあい寸前
の一歩手前。トラブルは、作業指揮者の監督さんたちが対応されますが、この
ようなゴタゴタが毎日のように続く、物件の立ち上げが難しいものがありまし
た。特に僕が行ってた警備会社は、ヨソさんがお受けにならない物件中心に依
頼が来たから、なおさらでした。
周囲の攻撃口調、白い冷たい目線の続く中でも表面は冷静に、内面は怖れと不
安でいっぱいでも毅然とした対応をする。近隣の住民さんがいらしたら、相手
から返事がなくてもこちらからは挨拶をするとか。特に警備員は目立つので目
に付くところの矢面にたつ代表としてご近所に作業場全体への好感を持っても
らう・・・これが上記でお伝えした「近隣対策」でした。
知らず知らずに気を遣いすぎて、発散できないウサやストレスがたまりすぎて
血圧があがるわ、痛み止めの薬はもらいに行くわでガマンすればするほど、お
さえた感情がひどくこみあげたものです。
いつしか誰かに都合よくこき使われ
たり、利用されてるように感じたりることもありました。
上司にも思わずボヤ
いてました。
「なんで人が嫌がるような仕事ばかりとってくるんだ!なんで嫌
がるようなところばかり行かせるんだ!」って。
そこで当時の上司は言ったものでした。
「確かに難しい仕事ばかりやってもら
ってます。
これ以上今の派遣先に通い続けるのが大変と言うならこちらも考え
ます。
でも向井さんはホテルマンもやってた人当たりのいい、第一印象のいい
好感度を持った人なんだよね。大型車搬出入の誘導は経験をつめばなんとかな
る。でも、周囲の風当たりが厳しい作業場で雰囲気を少しでも和らげて支障な
く日程をこなせるような一役を買ってほしい、そんな存在としてお願いしてる
ことは知っておいてくださいね。」と。
「は?俺は人当たりがいい?第一印象の好感度がいい?ホンマかいな?」と思
いつつも、ここまで言われたら断る理由もなく、言い返すことも出来ませんで
した。この仕事に就く前から、僕は自分に対するセルフイメージが低かったり
自己嫌悪も強い人間だったから、自分が人から好感を持って見られる!?かつ
いでんじゃねぇだろうな!!って、真剣に思ってました。
「自分はたいしたこ
とができるような人間ではない。」がいつもあったから。
会社から表彰状や派遣先から感謝状をもらったり、景品が出ても御好意は心底
から受け取れず。そんな後日のある日、終った作業場を見に行くと、何事もな
かったかのように、工事の依頼主がにこやかに引き渡された物件のまえにいら
してご挨拶したら「あら、警備員さんお久しぶり。あなたよくがんばってくだ
さってたわね。」と言われて「えっ?好意を持ってみてくださってたの?」っ
て。工事は携わった関係者全員の総力で築き上げたもので、その中に俺もいた
んだとわかった時、なぜか自虐的に笑ってました。
「好意を持って見られるは
ずがないこの俺が誰かに感謝されることもあるんだ。」って。なんだか嬉しい
ような恥ずかしいような不思議な気持ち・・・。でも、それが額面どおりだっ
たんだって気付けるようになったのは、それからもっとあとでした。
自分に対するセルフイメージの低さは、卑屈や劣等感を産み、内面に映し出さ
れた感覚はそのまま外部や周囲に反映されるので「自分はいつも低く見られて
る!」「優男(やさおとこ)に見えるさかいに、軽う扱われてるわ!」って思
ってました。
口調もいつしかトゲトゲしく、モロ男口調の時も(苦笑)。
でも、これは例えば幼少から「オマエはだらしないヤツ!」とか言われ続けた
としましょう。すると「自分はだらしないんだ。」って思い込みをいつしか持
ち、それがその人の生きるバックボーンになり、何らかのカベにあたった時に
パターンとして出てくるんですね。しかし、それは真実の姿ではありません。
受け入れたセルフイメージは、幼児・子供時代には抵抗するするスベを知らな
い、言われるがままを受け入れざるを得なかったミステイク(思いちがい&誤
解)から来るものだと気づけた時、警備員時代の出来事もパターンから抜け出
す一環として捉えようとすると、自分の中の「人当たりがよさそうな見た目と
中身のギャップ」の葛藤からラクになりました。
昨今直接お会いしたり電話でお話するお客様からは「ブログで書かれる記事の
印象と雰囲気はあいませんね。
」「もっと怖い人だと思ってたけど安心しまし
た。」とか「受話器越しの声のトーンは落ち着いてますね。」と、おっしゃっ
ていただける機会が前にもまして増えたので・・・「あれ?俺のトゲトゲしい
男口調は何処へ行ったんだろう?」って、自分でも驚いてます(苦笑)。
「私は(俺は)どうせこんなヤツなんだから・・・」と思ってる皆さん。その
思い込みは、本当のあなたらしさを証明したり、表現するものでしょうか?誤
ったセルフイメージを持たれてないかどうか、検証してみてくださいね。

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