従属の効果について

自信のある人には 人を楽しませるゆとりがある

こんばんは。

神戸メンタルサービスの平です。

どの会社にも一人や二人、仕事はあまりできないけれど、なぜかとてもかわいがられる人というのがいるはずです。

関西では「いじりやすい人」とか「いじられキャラ」と呼んだりしますが、こういう人はおバカなことを平気でしているわりには人気が高かったりするものです。

また、ビジネスの現場では、「こんなことを言えた義理ではないのですが、竹田さんだからこそお願いできるのです」などと言われることがあります。

こう言われると、つい許してあげたくなりますよね。

「あいつ、ほんとにバカだなぁ」とか「この人は自分より下なんだ」と思ったとき、人は心のどこかで優越感を感じています。

心理学では“従属の効果”といいますが、相手を上手に持ち上げたり、自分を相手より下のポジションにもっていくと、相手をいい気分にさせることができます。

それにより、自分自身の好感度を上げることもできるのです。

人は一般に、自分のなかにある劣等感を隠すために、無理や背伸びをしながら、人より高いポジションで生きようとしています。が、見下げられる人からすると、それはあまりいい気分のものとはいえません。

あなたがほんとうの自信や余裕をもつことができたら、とても簡単に人より下のポジションに入ることができます。そして、相手を楽しませてあげることもできるのです。

たとえば、街などを歩いていると、「おかあさんのバカ!」と怒っている子どもを見かけることがありますよね。

そのとき、「親に向かって、なんという口をきくの!」とムキになっているおかあさんと、「ほんとにバカなおかあさんでごめんなさいね」と笑顔で子どもに応対しているおかあさんとでは、どちらの好感度が高いか明白でしょう。

私たちは自分のことばかり考えて、自分の言動が相手にどのような影響を与え、どんな気分にさせているのかということをあまり考えることがありません。

しかし、人にかわいがられるタイプの人は、この従属の効果を上手に使いながら、相手をいい気分にさせることができるのです。

人の幸せを喜んであげられる人は 自分もきっと幸せになれる

以前、私の友人が東南アジアに行ったのですが、彼は帰国するとき、持っていったもののほとんどをむこうに置いてきてしまいました。

いったいどうしたのかと聞いたところ、宿屋のおじさんが日本語が堪能で、宿泊しているあいだじゅう、彼の持ち物をうらやましがっていたというのです。

「コノトケイ スバラシイネ トテモイイネ。コンナトケイ モテタラ  ワタシ ハッピーネ。イツカ コンナトケイ シタイネ」

それでつい、それほど高い時計ではなかったこともあり、置いてきたというのです。

さらに、iPodやひげ剃りや旅行用ドライヤーなどもすべて、「ニッポンノ デンカセイヒン ゼンブ スバラシイ」などとおだてられ、すっかりいい気になってあげてしまったらしいのです。

これは極端な例かもしれませんが、ビジネスマンが取引先の社長の家に招かれたときなどに「私もいつかこんな家に住めるようになりたいです」とか「僕も将来、ベンツに乗れるような男になりたいです」と言ったなら、とてもかわいがられると思いませんか?

劣等感があると人の成功をねたんでしまいがちですが、まわりにいる人たちの幸せや成功をあなたが認めてあげればあげるほど、それはあなた自身の幸せや成功にもつながっていくのです。

昔、「プリティ・ウーマン」という映画が大ヒットしました。

ジュリア・ロバーツが演ずる貧しい売春婦ビビアンがリチャード・ギア演ずる大金持ちの実業家ルイスに見初められ、どんどん美しく幸せな女性になっていくという物語なのですが、心理学的に見ても、ビビアンはとても上手にこの従属の効果を使っています。

実業家ルイスは超一流ホテルの最上階にあるスイートルームをまるで自分の家のように使っています。

ある日、彼の気まぐれから、売春婦ビビアンがこの部屋に招かれることになります。

ルイスはずっとこの部屋で暮らしているので、その素晴らしさをまったく感じられなくなっています。

“デッドゾーン”のステージに彼はいるわけです。

ビビアンはドアを入るなり、「うわーっ、なんてすごいの!」という表情をして、部屋の素晴らしさを感じまくり、堪能します。

映画のなかでは泡々のお風呂にとても楽しそうに入るシーンなどが映し出されます。

そんな大喜びの彼女を見て、ルイスはようやく「俺は成功しているのだ。とても幸せなのだ」と感じられるようになるのです。

次の日の朝、ルイスは眠りから覚めたばかりのビビアンにこう言います。

「君が朝食になにが食べたいのかよくわからなかったので、メニューにあったものすべてを頼んでおいた」と。彼はそんな大胆で贅沢なことができる自分を実感しながら、彼女をもっと喜ばせ、驚かせたいと思ったのです。

成功や豊かさはもうあたりまえで、感じることさえ忘れていたルイスですが、ビビアンという自分の下のポジションの人ができたことにより、あらためていい気分になれたわけです。

その後、ルイスはビビアンに投資しはじめ、彼女はどんどん美しくなっていき、この気分のよさをもっともっと味わいたいと考えた彼が彼女にプロポーズするという結末を迎えます。

もし、ビビアンが「なによ、この偉そうな金持ち!」という態度で接していたとしたら、間違いなく彼女の成功はなかったはずなのです。

来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。