諦めない事の大切さ〜願いを叶える第一歩〜

中学生の頃、僕は学校のクラブ活動で軟式野球をやっていました。野球が大好
きでした。
野球部に入って最初に与えられたポジションは、キャッチャーでした。
ただ、体格が良かったので、そのイメージでキャッチャーに選ばれた気がして
いました。僕達が子供の頃にあったアニメでいうと、巨人の星の伴宙太、ある
いはドカベンの山田太郎といったイメージでしょうか。
キャッチャー稼業というのは、実はとても大変なのです。
来る日も来る日も、投球練習場で、しゃがんだ姿勢で、ピッチャーの球を受け
ます。
バッティング練習の時には、キャッチャーマスクをつけて、汗を滴らせながら
しゃがんでピッチャーの球を受けます。時にはバットをかすったファールチッ
プを体に受けて「う〜っ」とひっくり返ることもありましたね。なかなか辛い
練習でした。


その頃の僕は、キャッチャーをやれと言われ、「そうなんだぁ」と思いキャッ
チャーをやっていましたが、本当に就きたかったポジションは、ピッチャーで
した。
キャッチャーも「守りの要」と呼ばれる重要なポジションの1つなのですが、
何となく地味な感じがしたのです。どちらかというと、守りの中でも攻める立
場になるピッチャーに憧れていました。ピッチャーが好きだったのですね。
そこで、学校のクラブでピッチャーになれるかどうかは別にして、クラブの練
習が無い日や練習が終わった後など、一人で壁に向かってボールを投げ、跳ね
返ってくるボールを受け取る遊びをしていました。
そして、それを続けていると、投げる事がだんだん上達してきて、ボール6〜
7個分の幅しかない、壁から突き出た細いコンクリートを狙ってボールを投げ
て遊ぶようになり、かなり正確にそれを繰り返せるようになっていきました。
何球その細いコンクリートの柱に当て続けられるのかなどと、自分で自分の連
続記録に挑戦しては楽しんでいました。
やがて時が経過して、上級生がクラブを去り、いよいよ僕達の学年がレギュラ
ーになる夏が来ました。
レギュラーポジションを決めるというその日、当時は練習には滅多に顔を出さ
ない野球部の監督がグラウンドにやって来ました。
先ずは、ピッチャーを決めるという事で、それまでピッチャーとして養成され
ていた同級生がピッチャー候補としてマウンドに立ちました。
監督は、そのピッチャー候補が投げるボールを、キャッチャーの後ろから真剣
な眼差しで見ていました。しかし、そのピッチャー候補はそんな状況に緊張し
たのか、ストライクゾーンをボールが全く通りません。ホームベースの手前で
ワンバウンドしたり、暴投に近い球だったり、散々な状況でした。
監督が首をひねり始め、やがて一旦ピッチャー候補の投球は中断となって、全
員で遠投の練習をする事になりました。
遠投というのは、普通のキャッチボールとは違って、例えばキャッチャーから
外野手ぐらいの距離の間で、キャッチボールをする練習です。すごく距離が離
れているのですが、キャッチボール相手の胸元に向かってボールを正確に投げ
なければなりません。いかに相手を動かさずにキャッチボールをするか、とい
うことを目指します。これは結構難しいのです。
監督は、遠投のキャッチボールをしている我々の間を動き回りながら、一人一
人の様子を見ていきました。そして、メンバーの中から、僕を含めて何人かが
「お前」「お前」というようにピックアップされていきました。マウンドで、
ピッチングをしてみろという話です。これがピッチャーを選び直すテストだと
いう事は、誰の目にも明らかでした。
何人かが先に投げて、最後に僕の順番が来ました。
その時、何故か僕はうまくできるという確信を持ちながら、自分の持てる力を
全て出す形で、キャッチャーに向かって何球か投げ込みました。キャッチャー
の後ろで僕の球を見ている監督すら余り気になりませんでした。
僕の投げた球は直球だったのですが、スピードが速く、自然とホイップ(浮き
上がる)して少し高めになるものの、ホームベース上を通過し、ストライクに
なります。投げる球全てが全くと言っていいほど、同じコースを通ります。
監督が首をかしげながら「この球は、中学生には打てないぞ」と囁いたのが聞
こえました。
結局、僕はこのテストでレギュラーのピッチャーに抜擢されました。
そして、ピッチャー候補だった彼は、レフトのポジションに収まりました。
確かに自分なりに遊び感覚で練習もしましたが、運も一杯あったのですね。
ピッチャー候補だった彼の体調も良くなかったかも知れません。僕の体調はす
こぶる良かったのも事実です。そして、僕よりも豪腕投手がメンバーにいなか
った事もそうでしょう。
でも、先ずはそうなりたい、そうしたいと思う事、そして「絶対無理だ」など
と自分で勝手に判断したり、「どうせ僕なんてなれっこない」と自分自身のネ
ガティブな感情に縛られることなく、自由な気持ちの中でその思いを継続した
事で、僕の願いが叶ったような気がします。
努力するかどうかは別にして、先ずは何事も諦めない事、それが、願いを叶え
る第一歩ですね。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。