臆病な二人

自分のことを知り、わかってもらえること

こんばんは

神戸メンタルサービスの平です。

彼女は45歳のキャリアウーマン。イメージに反さず、かなりの自立タイプの女性です。

何度か恋愛し、最後につきあった彼とは結婚を考えたりもしたのですが、30代の終わりにその彼と別れて以来、恋愛とはごぶさたしています。

その間も仕事に打ち込み、しっかりとしたキャリアを築いてきた彼女は、経済的にもゆとりがあり、月1回の国内旅行、年2回の海外旅行を恒例にするなど、気楽な独身生活を謳歌してきました。

そんな彼女が、運動不足の解消を兼ねて『ポケモンGO』をはじめたところ、予想外におもしろく、すっかりハマッてしまったのです。

時間をつくってはあちこちをウロウロしていたのですが、レアキャラがゲットできるというスポットに行くたびに、ある若い男性を見かけることに気づきました。

で、おたがい顔見知りになり、話し込んだりするようになったわけです。

彼は彼女よりひとまわり下の33歳。実家暮らしのバイト暮らし。イケメンなのですが、自分に自信がないタイプ。しかし、素直な好青年で、彼女は好感をもったわけです。

といっても、彼女にとっては甥っ子か年の離れたイトコと話すような感覚で、恋愛感情はなに一つ感じていませんでした。

ただ、彼女が知っている人生の楽しみを彼はまるで知らなかったので、「じゃあ、おねえさんが今度、新宿のバーに連れていってあげるわ」というようなかんじで、なんとなくおつきあいがはじまったのです。

そうして、いろいろなところに出かけていったわけですが、彼は慢性的にお金のない生活をしていましたから、彼女の教えてくれる世界がうれしくて、楽しくて仕方がありません。

新しいことを体験するたびに、それはもう、爆発的によろこぶわけですね。

それを彼女は「まるで飼い犬のような」という表現で話してくれたので、若い彼がしっぽを振って大喜びで彼女とのお出かけを楽しんでいる様子が私の目にも浮かびました。

そして、彼女にとってはそれだけのことだったのですが、デートを重ねるうちに、若い彼がどんどん彼女のことを好きになっていってしまったようなのです。

で、猛アタックがはじまった‥‥というか、彼女の家に居ついてしまい、帰ってくれないような状態です。

彼女も悪い気はしないのですが、「こんな若い子にのめりこんだって、そのうち捨てられるだけ」と思うと、臆病で自信のない自分が出てきます。

それは久しぶりの感覚でもありました。彼女はなぜかいつも、弱気でビクビクとした恋愛をしてきたのです。

しかしながら、若い彼は彼女の中にそんな感覚があることは知りません。

ある日、彼と距離を取ろうとする彼女があまりに冷たい態度をとったことから、彼は爆発してしまったのです。

泣き叫ぶように自分の思いを吐き出す彼に、彼女も呼応するように感情を爆発させました。

そして、自分は恋愛にはまったく自信がないこと、ひとまわりも違う彼と恋をしても、数年後には捨てられるに決まっているという思いを彼にぶつけました。

彼はその様子にびっくりしましたが、彼女が叫ぶように話してくれたその気持ちはとてもよく理解することができました。

なぜなら、彼自身、社会に適合できる気がまったくせず、人生にまったく自信をもてずに生きてきたからです。

そして、「会社に勤めても、どうせ数カ月でみんなから失望され、辞めることになるだろう」という思いをずっと抱えていたのです。

二人のおつきあいはいまも続いています。そして、最近はたがいにビクビク、オドオドとしていたところから、自分らしさや本音をどんどん表現してみるということにチャレンジしているようです。

人が人を好きになるときに、いちばん大事なこと。その一つは、「自分のことを知り、わかってもらえること」ではないでしょうか。

この二人にとっては、それがいちばんの絆になり、恋を育んでいるようなのです。

では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。