幻滅を覚えたときの処方箋~もう一度感じる力を取り戻そう~

幻想の世界に生き続けるのではなく、真に人生に自分を差し出すことができるようになること

こうあって欲しいと願っていたものが実は叶っていなかった。このままでは叶えられないと気づいてしまった。そのような現実に直面した時に、私たちは幻滅という、極めて大きな痛みと失意を覚えることがあります。夢は打ち砕かれ、失われてしまったロマンスを嘆き、生きる気力が失われてしまうこともあるでしょう。
人生に幻滅を覚えるとき、わたしたちの中では一体何が起こっているのでしょうか?
今回は、どうしてこんなことになってしまうのか、深層心理を解説しながら、癒しのヒントとしての見方、受け止め方をお届けしたいと思います。


「いつかは人並みに結婚って思っていたけれど、私、本当に結婚できるのかしら!?」と急に自分の置かれている状況を目の当たりにし、幻滅してしまうことってありますよね。

あるいは、すべて順調だと思っていたのに、パートナーの不貞が発覚した時、幸せだったはずのものがすべて幻想だったことに気づかされます。

また、すでに結婚していて家庭もあるというのに、「自分には居場所がない」と感じてしまうことの中にも幻滅が現れることがあるかもしれません。

人生で幻滅を覚えるとき、私たちは「いったい自分は、これまで何してたんだろう?」「何が起こったの!?」というような混乱とともに、認めがたく受け入れがたい現実に戸惑うことってありますよね。

■幻滅とはどういうことか?

幻滅とは、もともと幻想に過ぎなかったものの崩壊です。

自分の人生に何か欠けているものがあると感じているとき、私たちはそこにないものを埋め合わせるかたちで空想します。
空想自体は私たちの誰でもがするものですが、空想への浸り込みや、欠けているものに対して空想への依存度が高いと、やがて、そのことが現実との間に大きなギャップを生み出すことになります。

現実のものごとに対して何の働きかけもない空想は、幻想の中での心象として、私たちの心を埋め合わせてはくれますが、人や場所やものごとに対して自分を差し出してはいません。

ですから、本来積むべきはずの尊い経験を積むことなしに、心ここにあらずの時間を過ごしていた、ということも実は少なくないのです。
このように、現実を否認し、自ら作り出した幻想の中でしか存在しない世界に安全地帯を見出し、引きこもっていた時期があるともいえそうです。

■なぜ、幻滅を招いてしまうのか?

多くのカウンセリングの臨床現場に携わってわかることは、過去に「大切なものを失ってしまった」といったような、深い悲しみ、嘆き、そして、喪失の恐怖が隠れています。

かつて体験した失恋などのハートブレイク、親や誰かからの拒絶、仲間はずれなどの経験を通じて、「自分は愛されない人間」「受け入れてもらえない」という痛み、そして「大切なものを失うことの怖れ」をいまだに抱えていることが多いのではないでしょうか。

「自分は愛されない人間」「受け入れてもらえない」という痛みは、やがてセルフイメージとなり、その前提に基づいて、似たような経験を引き寄せてしまいます。

また、その後も、さまざまな環境や人間関係の中で、同じような痛みや悲しみを繰り返し感じていたようなこともあったかもしれません。

そのような度重なる関係性の喪失体験は苦痛に他なりませんから、私たちはますます、心を閉ざし、感情を抑圧し、実際の体験からも遠ざかり、ファンタジーを持つことになります。

このようにして、自分がこれ以上傷つかないように、痛みを感じないように、自ら人との関わりを遠ざけてしまっていたのかもしれませんね。

■居場所がないと感じていたころの状況

少し前にさかのぼって、どのような感覚で生きていたのか振り返っていただくと、たいていの方がこんな風なことを打ち明けてくださります。

・何をやってもつまらない
・他人の幸せを喜べない
・誰かといても、何を話していいのかわからない
・他人に興味を持てない
・人並みに結婚もしたいのに、関係がなかなか深まらない
・苦手な人が多い
・自分の居場所がない

これらは感情を抑圧して、感じることができないために起こる感覚であることが多いのですが、私たちが幻滅してしまうのは、実は、自分自身があらゆるものごとを拒絶してきた結果ともいえそうです。

心理学的には、私たちが「できない」と思うことには、やらない意図や意思が隠れており、自分が決めている、といえます。

現実離れした理想やファンタジーは、自分が心の世界に作り出した幻想ですから、一番の安全地帯にもなりえます。

一方で生身の人間を相手にしたときというのは、自分の理想とする反応が必ずしも返ってくるわけではありませんから幻滅を招いてしまうのです。

それゆえに、幻滅は、現実と幻想との間での乖離を生み、きわめて大きな痛みと、失意を招いてしまうことがあるのです。

■喪失を癒す

いずれにしても、ここで大切なのは、幻想の世界に生き続けるのではなく、真に人生に自分を差し出すことができるようになることです。

ここでは、それを避ける元となった喪失の怖れや痛みを癒すことが、近道になります。

あまりにも辛すぎて、消化することができなかった感情を追体験することは、歓迎しにくいものかもしれないけれど、感じることを許すのも癒しにとっては大切なプロセスになります。

一体どれだけ私たちは、感じることを自分に禁止してきてしまったのでしょう。

今日はそっと、あなたの中の悲しみやさみしさ、みじめさに寄り添ってあげられるといいですね。

幻滅は人生のウェイクアップコールのようなもの。
その衝撃は小さくなかったかもしれないけど、あなたが、真実に目覚め、真の自分の人生に心を開き、積極的に人やものごとに関わることを促してくれているのです。
真の充実感や幸せを感じられる人生を得るためにも、まずは感情を感じることを自分に許可してあげてみてくださいね。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

熊谷 佐知恵

恋愛、夫婦関係、職場の人間関係、転職・キャリアほか、自己実現など幅広いジャンルに対応する。 わかりやすいレクチャーをモットーに、感覚やインスピレーションを活用するハートフルなセラピーとの両面で癒しのプロセスを後押しするのが強み。自分のペースで気づき、変化、成長できると好評である。