甘えることは悪いこと!?~イメージとバランスの心理学~

皆さんは、周りの人から「甘えているんじゃない?」と言われたら、どう感じるでしょうか?
大人になると、「甘える」だけでは、ダメなように感じたり…、責められているように感じたり…。
自立的な生き方が板についてくると「甘えること」が悪いことのように感じている方って、とても多いんです。

「甘えること」に対する定義やイメージは、人それぞれ違うものです。
この定義やイメージの違いが、私たちの感じる感情に違いをもたらします。
「甘えること」だって、心のバランスを保つには、大切な要素の一つです。

皆さんの中にある、「甘えること」のイメージをチェックしてみませんか?
今回の心理学講座では、「甘えること」について考えていきましょう。

◎リクエストを頂きました◎
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「学校に行きたくないなあ」「会社をやめたい」と言うとき、
周囲から「甘えてるだけじゃない?」と言われることが多いと感じてます。
しかし、頑張り過ぎている人にとっては、むしろ、休んだほうがいいよ、という心のサインであったりすると思うんです。
甘えと、本当に休んだ方がいいという心のサインの違い、
心理学でみる、自分や周囲に甘えている状態について、教えてほしいです。
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リクエストいただき、ありがとうございます。
リクエストを基に、「甘えること」について考えてみたいと思います。
頑張りすぎている方にとっては、休むことが甘えているように感じる方もいます。
大人になると、「甘えること」が悪いことのように捉えられがちですが、「甘えること」だって私たちにとって、大切な要素の一つです。
まずは、あなたの中「甘える」ことに対するイメージを見ていくことにしましょう。

「甘えること」のイメージを見直そう

「学校に行きたくない」とか「会社をやめたい」と感じることは、皆さんも一度は経験したことがありますよね。

例えば、あなたが「会社をやめたい」と思っていて、その気持ちを周りの人に打ち明けたとしましょう。
そんなとき、友人や同僚、家族やパートナーから、
「甘えているだけじゃない?」
と言われたとしたら、あなたはどのように感じるでしょうか?

もし、あなたが甘えていること=“悪いこと”や“いけないこと”といった否定的なイメージや観念、禁止を持っていたとしたら、「甘えているだけじゃない?」と言われたことにより、頭の中では…

会社を辞めたい=甘えている=悪いこと、いけないこと

という風な図式が出来上がり、
周りから責められたり、攻撃されたりしたように感じて、自己嫌悪や自己攻撃に陥ったり、反発したくなったりします。

甘えることに対する否定的なイメージや観念、禁止が周りから責められたり、攻撃されたりしたように感じさせる要因となりますから、ここでは甘えることを許可することや甘えに対する肯定的なイメージを持つことによって、周りの人から責められたり、攻撃されたりしたように感じることを軽減することが出来ます。

甘えることは、心の状態のひとつ

心理学的には、甘えること=依存の要素として見ていきます。
甘えること(依存の要素)は、自立的に頑張ってきた方にとっては、今まで禁止してきたものですから良いものとは感じられず受け入れがたいものです。

それは、ダイエット中(禁止してきたもの)に目の前で甘いケーキ(甘えること)を食べられるようなものですから、決して良い気分にはなりません。
このように自立の方から見れば、甘え(依存)は受け入れがたいものですが、心理学では、依存も自立も一概に良いもの・悪いものとして判断していくのではなく、心の一つの状態として捉え、依存と自立のバランスを見ていきます。

依存側に偏っていれば、自分以外の誰かや何かに頼ったり、寄り掛かったりし過ぎている状態になり、一切の主導権は自分以外の何かに明け渡しているため、能動的に何かをするというよりは自分以外の何かに変化や成果を求めがちです。また、自分の描いたとおりにならないことが多く傷つくことも少なくありません。

自立側に偏っていれば、何でも自分で出来るという利点はありますが、自分を律し続け、一人で頑張りすぎて燃え尽きてしまったり、人を寄せつけずに繋がりを感じにくかったり、助けを求めることが出来ないなどという傾向があります。

いずれも、依存と自立のバランスが崩れていることが問題を作るため、依存に偏っていれば自立の要素(自分で決めてみる、自信をつける…など)を、自立に偏っていれば依存の要素(甘えること、助けを求める、休みを取る、お願いをする…など)といった対極の要素を取り入れることによって、依存と自立のバランスを整えていきます。

そうすることで、自分でできることは自分でやり、出来ないことは人にお願いするといった相互依存というバランスのとれた関係性にたどり着くことができます。

最後に

心理学では、
「学校に行きたくない」
「会社を辞めたい」
という気持ちに「良い・悪い」という判断を加えずに、今、心がそう感じているという風に、心理状態の一つとして捉えます。

学校に行きたくないという気持ちも会社を辞めたいという気持ちも、どれをとってもあなたの心に確かにある気持ちです。
あなたの中にある確かな気持ちを受け入れていくこと、あなたが何故そう感じるかというところに問題解決のヒントが隠れています。

感じること一つ一つが、あなたに発信されたサインです。
あなたに発信されたサイン、ぜひ受け取ってくださいね。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

人間関係の築き方・コミュニケーションのスキルアップ・個性を生かすことを得意とする。 お客さまのテーマを多角的な視点でとらえて分析することにより、新たな視点や心の気楽さを持つことが出来ると定評がある。ゆるぎない安心感の基盤を基に行うカウンセリングは、心のうちを語りやすいと評価が高い。