不倫と虐待の傷

相談者名
キャサリン
結婚十年、私37歳、夫43歳、小学生の子供一人。
崩壊家庭で育ち、両親から精神、身体的な虐待、10代で親離婚、以後母の過干渉、束縛を受けました。
大学生の頃自殺を図り未遂に終わり、その後結婚し、子供を産んだにも拘らず未だに家族というものが何かよくわかりません。
精神的に安定、自立した健全な夫と出会い、何ともいえぬ安らぎを得ると同時に、心の奥に怒りが渦巻いているのを感じました。
何に対する怒りかわかりません。
妊娠した時、憂鬱になりお腹を叩き、出産した時も辛い気持で産後の鬱になりました。
子供は可愛い、でもどう接して良いのかわかりません。
自分の子供の頃と重ねて惨めになり涙がでます。
子供を虐待してしまいそうで怯えて心理的な距離を置いてしまいます。
カウンセリング、鬱病の投薬も受けました。
無価値感、罪悪感、怒りと悲しみ、感情を掘り起こしましたがインナーチャイルドの癒しだけは、どうしても出来ませんでした。
その後母と決別しました。
そうする以外、正気で生きていける道は残っていませんでした。
決別半年後、友達(独身男性)と話をし、彼も一生拭えない深い虐待の傷を心と体に負っている事を知り我事のように悲しく泣きました。
夫に感じない激しい感情、男性の魅力を彼に感じました。
彼も私に同じような気持を感じて、不倫の関係になりました。
互いを求める気持はとても強く、激しい感情に振りまわされ、不倫と言う関係に傷つき傷つけあい、彼から拒絶されました。
自殺するくらい落ち込みました。
自分を傷つけ虐待した両親と彼の姿が重なりました。
優しい夫を思うと、自分のした事に激しい嫌悪感と罪悪感を感じます。
彼の事は終わった、そう思っていた時に偶然再会し、別れ際付き合っていた頃の様に強く抱きしめられ、記憶が一瞬に戻ってしまい不倫の関係が再開。
夫と子供、親しい友達、自分自身も裏切って勝手な事をし続け、不倫の彼の事も不幸にしています。
自分が断ち切れば、終わる事なのだと思います。
その一歩を踏み出す勇気がでません。
自分が嫌でたまりません。
どうしても、どんなに頑張っても、自分が嫌いで、生きている資格がない気がします。
何のために生きているのか判らない、そんな気持をずっと幼い子供の頃から抱えて生きてます。
不倫の彼を手放す事が出来ないのは、自分の代わりに、自分を愛してくれる人を求めているのでしょうか。
なぜ、夫ではダメで、不倫の彼に求めてしまうのでしょうか。
カウンセラー
大谷常緑
キャサリンさんこんにちは。
はじめまして。
ご相談を担当させていただく大谷です。
よろしくお願いします。小さい頃から今に至るキャサリンさんの辛い出来事やお気持ちに涙しました。

さて、キャサリンさんはカウンセリングもお受けになり、様々な感情を掘り起こ
す努力をされたとのこと、とても前向きで、勇気ある方だと思いました。
今回もご相談をいただいて、何とかしたい、何とかご自分を変えたいというお気
持ちがよく伝わってきました。

今日は、心理の少し深い部分にスポットを当てて回答をさせていただきたいと思
います。

キャサリンさんは小さい頃、「私は生まれてきて良かったの?」「私はここにい
てもいいんですか?」という気持ちをお持ちになったような気がします。
この事は、キャサリンさんがおそらく、心のどこかでおわかりになっていると思
います。
これは、とても、とても辛い感情ですね。
もちろん、この感覚というのは誤解ですし、キャサリンさんを必要としている人
は、過去も、今もたくさんおられます。
その事は、実はキャサリンさん自身がとてもよくおわかりになっていると思うの
ですが、その感情だけが心の奥深い所にまるでトゲのように残ってしまっている
のですね。

「私は生まれてきて良かったの?」「私はここにいてもいいんですか?」という
事を確認するために、キャサリンさんは今生きておられる感じです。キャサリン
さんの目的は、「私は生まれてきて良かったんだ」と確認することなのですね。
これが根本にあるとても大きなキャサリンさんのニーズ(欲求)になります。

本当にそう言ってもらいたかった人、それを感じさせて欲しかった人はご両親だ
と思うのですが、お母さんからそんなことを感じられなかったのですね。だから、
決別された。
お母さんとの間で嫌なやりとりなどもあり、それが表面的な原因となってお母さ
んを遠ざけられたかもしれませんが・・・。

このニーズがあると、「私って必要ないでしょ」という行動と「私を必要として
欲しい」という2つの一見全く裏腹な心理とそれに基づく行動のパターンが現れ
ます。

前者は、例えばお子さんと心理的な距離を取られている部分です。
お子さんは、キャサリンさんの事を必要とされていますよね。キャサリンさんが
いないと、生きていけない。絶対必要な存在なのです。
しかし、キャサリンさんは表面的な理由はともかく、怖れを抱いてお子さんを遠
ざけられています。キャサリンさんがそこでお子さんと親密になってしまうと、
自分が生まれてきて良かったのだという事を受け取ってしまうからなのです。こ
れを受け取ってしまうと、実はキャサリンさんの生きている目的を失ってしまう
のですね。

多くの人間は、目的達成を望みながら、目的を達成しないように無意識的に問題
を作り出します。なぜならば、目的を達成してしまうとあたかもそこには何もな
くなって空虚な時間や空間しか残らないように感じたり、あるいは目的を達成す
る事で幸せになってしまう事が怖いからです。
実際はそうではありませんよね。目的を達成しても次の目的が生まれてくるでし
ょうし、幸せになって楽しむ人生の方がいいはずです。

後者は、例えば不倫の関係です。
「私を必要としている人」を自分を罰しながら、幸せを受け取らない形で作って
いるのです。これは、私を必要としている人をそのまま受け取ってしまう形を作
ると、「私って生まれてきてよかったのですか?」という事が確認出来てしまっ
て、生きている目的が無くなるからです。

ご主人との関係もお子さんの関係と似ていますね。
ご主人からそれを受け取ってしまうと、「私って生まれてきてよかったのですか?
」と確認するという生きている目的が無くなって、幸せになってしまうからなの
ですね。

さて、ここでこの心のパターン(心の癖)を手放すには、2つの事をやっていた
だければと思います。

まず最初は、「私は生まれてきて良かったのだ」と思う事です。そう思う選択を
する事です。そしてそれが真実です。
キャサリンさんが小さい頃、ご両親はご自分達の事で一杯一杯だったのでしょう
ね。
人間、気分がいいときに誰かに対して精神的な虐待をしたり、身体的な虐待をし
たりすることはありません。
だから、たとえそのような状況があったとしても、キャサリンさんが生まれてき
て悪かったという事ではなく、それはご両親の問題なのです。
そして、キャサリンさんが生まれてきてくれたこと、ご両親は心のどこかで喜び、
癒されたときがあったと思います。キャサリンさんは、お子さんから癒されたり、
喜びをもらったりという事はないでしょうか?きっとあると思います。それと同
じ感情をご両親も抱かれた事があると思いますよ。
お子さんが「私(僕)って、生まれてきて良かったの?」とキャサリンさんに尋
ねられたとしたら、キャサリンさんは何と答えますか?
それがキャサリンさんへの答えでもあります。
また、ご主人、お子さん、キャサリンさんを必要とされていますよね。
この真実をご自分でお認めになってください。

2つ目は、ご自分を大切になさってください。
人間は、あらゆる場面で、時に無意識的に、時に意識的に多くの選択をして生き
ています。
極端な話をすれば、朝何を食べるか、どこで食べるか、何時に食べるかなども選
択ですね。
その選択をするときに、ちょっと考えてみてください。「私は、自分に優しい選
択をする」という事を。
どんな選択がご自分にとって優しい選択かはキャサリンさんご自身が一番よく分
かっていらっしゃるはずです。

回答がお役に立てれば幸甚です。
ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。