二人の決め事が守られない訳~ルールはお互いを縛る鎖~

いい関係を作るために二人の間で交わされる「約束」。

でも、多くの場合、守られなくなって関係性の悪化を招きます。その原因と対処方法をご紹介。

二人の関係がうまく行くようにした約束(決め事)なのに、結果的にそれが守られず、ケンカになったり、別れることになったりすることが多くあります。

今日はそんな心理についてお話したいと思います。

●ルールはお互いを縛る鎖

「決め事」「約束」というのはルールですよね。
スポーツでも、ルールが多く、複雑になればなるほどやるのも見るのも難しくなるもので、対人関係でも、男女関係でも決め事を作れば作るほど、苦しくなってしまうものです。
それが例え、お互いのコンセンサス(合意)の上で交わしたものであったとしても、です。

それはルールというものは、お互いの行動や思考、感情を制限させるもので、どんなものであっても窮屈な感情を引き起こさせるものだからです。
「ルールは破られるもの」なんて言われますが、縛られるのを好む人ってあんまりいないと思います。
ただ、全くの放任は嬉しくなくて少しは縛って欲しいと思うこともありますし、安定的な生活を送るにはある程度のルール(いわば“マナー”)が必要なことも確かにあります。

例えば「昔から専業主婦が夢だったし、彼の稼ぎも悪くないから、一生懸命家事をするの!」と新婚時代は意気込んでいた奥様。
数年経つと「私は家政婦かい。あんたの飯炊き女かい」と、帰ってきてはゴロンと居間でテレビを見出すご主人に不満を持つこともしばし。

お互い最初に交わした決め事のはずなのに・・・。

例えば「うちは共働きだから、家事は分担制なの。夫が洗濯や掃除をやって、私は主に炊事や水周りね」と決めたのに、徐々に旦那の洗濯の仕方や妻の料理に不満を持つ日々。
そして「たまには変わって欲しいわ。献立毎日考えたり、仕事帰りに買い物するの大変なのよ」。

お互い合意した決め事のはずなのに・・・。

●“ロマンス時代の約束は不履行になる可能性が高い”という法則。

付き合い始めに
彼女:「私寂しがり屋だから、いっぱいメールくれる?」
彼氏:「うん。もちろんだよ。毎日メール送っても大丈夫?」
彼女:「ありがとー!うれしー!私も送るね。楽しみにしてる!」
なんて会話を交わすカップルも多いかもしれません・・・。

でも、もって3ヶ月や半年、徐々に彼からの連絡が無くなっていったりします。

付き合って数ヶ月のロマンスの時期では、お互いに盛り上がってたり、うまくやりたい、少しでも良く見せたい、好かれたい自分がいますから、たくさん約束事をしたりするんですよね。
ちょっと無理かな~苦手だな~と仮に思っても、「今度こそ、うまくやろう!」とか「こいつとなら出来るかもしれない」とか思い込んでしまい、進んで約束してみたりします。

それは自分がかつての恋愛や対人関係で傷ついた分だけたくさん出てきます。
かつての彼が連絡をくれなくて不安で寂しい恋愛をしたことがあったら、「二人で何でも話し合える関係にしようね!」と言いたくなります。

でも、ロマンスの時代が終わり、相手の嫌なところが見えてきたり、あるいは、関係に慣れてきたりして、普段着の自分を取り戻してきた分だけ、こうした初期の約束は反故にされやすくなります。

まさか、付き合い始めに、契約書を交わして「契約不履行の場合には大阪地裁にてその是非を問う」なんて入れるわけではないですから、約束が守られなかったとしても我慢する、文句を言うしかないのかもしれません。

●“ロマンスを過ぎての決め事はお互いを縛る鎖にしかならない”という法則

最初の頃、盛り上がったついでに交わした約束が守られなくなると、より厳密なルールを二人の間に作りたくなります。
「毎日メールくれるって言ったじゃん。どういうことよ!」とお冠な彼女。
その態度にちょっとびびって「ああ、分かった分かった。頑張るよ」という彼氏。

2,3日はメールくれるかもしれませんが、やはりその後はさっぱりになってしまいがちです。
で、再び文句を言うと彼が切れて「お前、ウザイんだよ。もうメールなんて書いてやらねーよ」なんて言われて大喧嘩したりします。

これはうまく行くように決めたルールのつもりなのですが、その背景には「うまく行かなかったこと」があるわけですから、余程の覚悟が無い限り、そう簡単に変わることはありません。
つまりは、この時期に約束を交わしても、それはお互いの合意というよりは「嫌われないための防衛策」「この場凌ぎのごまかし」になってしまうんです。

だから、うまく守られることってあまりないですし、仮にメールが続いたとしても、それはどちらかの犠牲の上に成り立つものですから、遅かれ早かれ再び火の手が上がることは間違いありません。

また、この時期の決め事・約束事は一方が他方への、あるいはお互いへの不信感が隠れていますから、例えその約束を守ってくれたとしても受け取れずに猜疑心や不安を持ってしまうこともあります。
「毎日メールしてくれって言ったけど、単に挨拶だけじゃない!ちゃんと心のこもった言葉を書いてよ!」
と不満を募らせたり、
「そんなに毎日無理しなくてもいいのよ。気になったときだけでいいから」
と発言を後退させてしまうことも。

●どうして「決め事」が必要なのか?

うまく行くために、良い関係を作るために決め事(ルール)を作るはずなのですが、そのルールを作れば作るほどうまくいかなくなる背景にはとあるポイントがあります。
これは恋愛だけでなく、例えば、社内規則や校則などにも当てはまる心理です。

どうしてルールが必要なのか?というと、先ほどもちらっと触れた「うまくいかなかったから」という理由がです。
そこに“心の痛み”があるんですよね。
「うまく行かなくて辛い思いをしたから、もうそんな思いはしたくない」と。

つまり、お互いに合意したルールを作ることは“安心感”を作ってくれるんです。
「これでもう大丈夫」という。
でも、それは信頼しあった上でのものではなく、形だけ整えた見かけ上の安心感になってしまいますから、心のどこかに常に不安や怖れを感じてしまうんですね。

だから、次から次へと決め事を作りたくなりますし、そうじゃないと不安になってしまうんです。
よく「彼氏の束縛がきつい」とか「彼女からいつも監視されてるようで怖い」などの言葉を聞いたことってありませんか?
これは決め事を作れば作るほど、むしろ不安が募って悪循環にはまっている状態と言えないこともありません。

●心の痛みがルールに現れる例

また、そうしたルールを作ってしまう心の痛みは今のパートナーシップだけが問題ではなく、前の恋愛から学んだことも多く含まれます。

例えば「前の彼氏が連絡くれなくなっておかしいと思ったら他の女を作ってた」という経験があるとするでしょう?
そうしたら、新しい彼との間でも同じことが繰り返されないように防衛策として「メールや電話はちょくちょくしようね」とルールを提案するようになるでしょう。

そうすると、そのルールがあるうちは、常にその背景にある痛みを抱え続けることになってしまいます。
だから、メールをくれても本当に安心するというよりは、ホッと一安心するだけで、次の瞬間にはまた不安が募ります。
そして、きちんとメールを毎日送ってくれていても不安になったりします。

そして、ますますルールにしがみつくようになり、自分や相手のどちらかがそれを破るような状況を作ってしまうんですね。

そうした心の痛み(怖れ)から始めたことは、最初は盛り上がりますが(瞬発力はありますが)、長続きしません。
それは怖れや痛みをずーっと感じ続けることって誰でも嫌だからです。

もちろん、自分にそんな痛みがあるということは、自分自身はともかく相手は知りません。
でも、自分のそんな怖れは何らかの形で相手に伝わってしまうものです。

○シミュレーション

具体的な例を挙げましょう。
たまたま彼が仕事で遅くなったので、私のことを気遣って一日メールを送らなかったとしましょう。
でも、私からすれば、毎日来てたメールが今日来なかったわけですから、過去の傷が疼いて「もしかしたら、今夜他の女と・・・?」なんていらん心配をしてしまったりします。
そうすると、次の日やその晩遅くに私が送るメールは「昨日はどうしたの?何かあったの?私何か変なこと言った?」という相手を詮索するような内容になってしまうはずです。
そしたら、それを受け取った彼としては「お前のためを思って一日送らなかったのに何だこのメールは?」とちょっとムッとします。
でも、いきなり怒るのは大人気ないので「何でもないよー。昨日は忙しかくて、帰りが遅くなったから、メール送らなかっただけだよ~。マジごめんね~」なんて返したりします。

それで私はちょっと落ち着きますが、傷がまだまだ疼いていると「そっかー、良かったー。ちょっと不安になっちゃったのー。ありがとー」なんて返事を無意識的にしたためてしまいます。
で、彼は「は?不安?俺のこと信用してないのか?」という気持ちになってしまうかもしれません。

そんな風に不安や怖れ(心の痛み)がベースになってしまうと二人の関係に暗雲が俄かに立ち込めてしまう場合もあるんです。
でも、自分ではそんなつもりないですから、「どうしてこうなっちゃったのか分からない」となってしまうんです。
まさか、何の気なしに書いた「不安になった」という一言が相手の不信を買うなんて思わないですから。

●信頼すること

傷ついている分だけ厳密なルールを作ってお互いを縛りたくなってしまうわけですから、ここでは「相手を信頼する」ということがとても大切です。

痛みが強いと、今の彼に前の私を傷つけた彼をダブらせて見てしまうようになります。
だから、過去の痛みがあれば、それを癒し、手放すことも効果的なアプローチです。

でも、その癒しのプロセスでも、目標となるのは「いかに彼を信頼するか?」なんです。

彼を信頼するには、自分に対する信頼(自信)も必要です。
だから、自分に自信を持つことがもう一つ手前の目標です。
(あ、ここで愕然としないでくださいね)

痛みがあると自信も持てなくなるわけですが、自分を信頼することが出来たとしたら、彼からメールが来なかったときに、素直に
「前の彼がメールをくれなくなったときに浮気してたの。だから、毎日来てたメールが来なくなったら不安になっちゃって。あなたと元彼は違うって分かってるんだけど。気分悪くさせたかな?ごめんね」
という表現ができるようになります。

そうすると彼側としたら
「よっしゃ、それならその男を俺が忘れさせてやろうじゃないの」
(つまりは「俺が癒してあげるぞ!」)
なんて思ってしまったりもします。

それに彼から「昨日忙しくって」というメールをもらったときにも
「ありがとー!そこまで私のこと考えてくれてるのね!嬉しい!」
って素直に受け取ることもできるようになるんです。

もちろん、例えの話なので、全てがこのように解釈されるわけではありませんけどね。

でも、素直に、めんどくさがらずにきちんとコミュニケーションすることの大切さは分かっていただけたでしょうか?

信頼というと大層なことのように感じられるかもしれませんが、相手に対して心を開く、オープンになる、素直になる、そういうことなんです。

(それが難しいんだよ、という大合唱が聞こえるようですけど)

でも、そう思えば、相手の問題ではなく、自分自身の問題だってことに気付けません?
相手を変えるよりも、自分を変える方が簡単だとは思いません?

自信を持つ、という目標が「素直になる」「オープンになる」というさらに身近なものに変わってきますね。
(そうやって、「目標」というものは少しずつ身近なものに置き換えていくことが可能なんです。)

●素直な気持ちを伝えること

もし、今パートナーがいらっしゃる方は、できるだけ今の素直な気持ちを相手に伝えてみようと思って下さい。
何度書き直してもいいですから、メールや手紙の方が始めはいいかもしれませんね。
もちろん、直接伝えてみてもOKです。

ただ、こうした気持ちを伝える文面はできるだけシンプルに短くする方が効果的です。
長いとそれだけで相手を辟易させてしまうこともありますし、逆に伝えたいメッセージもぼやけてしまいます。

ただ、二人の関係によっては今はそうした行為が逆効果になる場合もありますから、今の状況をきちんと受け止めることも大切です。
そういう場合は、送信せずに下書きフォルダにおいて、来るべきチャンスを待ちましょう。

●縛られない自由な関係へ

そうしてより深い絆(信頼関係)で二人が結びつくと、元々あったルールにもどんどん融通を利かせることが可能になっていきます。
家事を交代したり、メールが来なくても不安にならなかったり、より素直な気持ちを伝え合えたり。
最初は何らかのルールを作ることは無理のないことだと思いますが、それがある程度うまく行ったら、徐々に崩していくことが大切なんですね。

そうすると、お互いを縛りあう関係から、自由な関係に脱却でき、より自然な関係性を築いていくことができるようになっていきます。

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