あなたの頑張りを見てくれている人がいるかもしれない

私は、学生時代に強迫神経症という病気にかかってしまい、治るのに5、6年くらいかかってしまいました。19歳くらいからその病気と闘っていましたが、完治しないまま大学をなんとか卒業し、新卒としてある会社に就職しました。

その会社は、音楽や映像に関する会社で、私は、3年ぐらい経理事務を行い、その後営業に異動になりました。

営業に異動したころは、病気はほとんど治っていましたが、当時の私は、あまり人には言えない、こんな病気にかかってしまったということに、ものすごい自己嫌悪、自己否定の気持ちを無意識に持っていました。

そんな状態で、私は、レンタルビデオ店にビデオを売るという営業をしていました。今はビデオテープはほとんどありませんが、私が営業をしていたのは今から20年以上前で、当時はまだDVDもありませんでした。

映画の最新作のビデオを売るという、まともな仕事ではありましたが、一方で、レンタルビデオ店に置くビデオの適正本数というものはだいたい決まっていて、お客さんであるお店側としては、多く仕入れればもうかるというわけではありません。

しかし、私の営業としての立場でいえば、一本でも多くのビデオを売る必要がありました。お店の規模を考えれば、おのずと適正本数は決まってくるのですが、上手くセールストークをして、なるべく多く仕入れてもらうようにしなければならないのが、当時の私の仕事でした。

このような矛盾は、もしかしたら、ビジネスシーンでは良くあることなのかもしれません。でも、私は、自分がやっていることが、「押し売りなのではないか?」という疑問を持ってしまい、悪いことをしているような感じがして、営業をしているのがとても辛かったのです。

いまから考えれば、私は、ほとんど治っていたとはいえ、あまり人に言えない病気にかかってしまった自分を強烈に自己否定していましたので、自分自身の存在が「迷惑」だと思っていました。実際に、その病気により、親兄弟や、友達や、病気になる前から付き合っていた当時の彼女に、多大な迷惑をかけてしまいました。

病気が原因で、もともと無意識に「自分は迷惑な人間である」と思っていたことに加えて、お客さん側からすれば、多く買えばよいというわけではないビジネスモデルでしたから、私は、もともと迷惑な人間が会社のノルマを達成するために押し売りをしている、という感じがして、本当に悪いことをしているような感覚があったのです。

もともとは、自分がいうのもなんですが、私は真面目な人間ですから、営業として働くということが、悪いことをし続ける、という感じにとらえてしまい、本当に辛かったのです。

 

それでも、私には、「絶対にひねくれないようにしよう」という信念のようなものがありました。もちろん限界はあるのですが、会社が決めたノルマを達成しようと頑張りました。

あるとき、私のお客さんであるビデオレンタル店の仕入れ担当者が、こんなことを言ってくれました。

「もっとビデオが売れるように、どんどん押して、売り込んでいった方がいいよ」

会社の上司に言われるのなら分かるのですが、お客さんである仕入れ担当者から、もっと大塚君の営業成績が上がるように、お店側に押して押して、売り込んでいった方がいいと言われたのです。

私なりに頑張って売り込んでいるつもりだったのですが、お客さんのほうから、もっと押してもいいと言われてしまいました。でも、その仕入れ担当者の言葉に、私は本当に救われました。

「もしかしたら、営業は必ずしも迷惑ではないのかもしれない」

と、初めて少し思えたのです。

しかも、お客さんが私を救ってくれたことは、一度や二度ではありませんでした。いつも「いろいろと良くしてくれる」から、今回は多めにビデオを仕入れるよ、というようなことは、しょっちゅうありました。

私としては、「迷惑な営業をしている」と思い込んでいますから、「いろいろと良くしてれる」の意味が分かりませんでした。でも、お客さんの反応を見れば、「もしかしたら俺は迷惑ではないのかもしれない」と、少しずつ思えるようになったのです。

 

あるお店の仕入れ担当者とは特に仲が良くなり、というか、面倒をみてくれて、私と仕入れ担当者の2人で飲みに行くまでになりました。私より10歳くらい上の、社会人として先輩である彼は、私の仕事の悩みをたくさん聞いてくれました。

あるとき、彼は、私にこんなことを言ってくれました。

「ストレス解消には、モーツァルトなどのクラシック音楽がいいよ」

私は、当時クラシック音楽は全く知らなかったのですが、もともと音楽好きということもあり、そのアドバイスを素直に実行したら、クラシック音楽が大好きになってしまいました。ストレス解消に役立ったのかはよく分かりませんが、私の趣味の一つが確実に増えた出来事でした。

その彼とは、実は、今でも付き合いがあります。私はカウンセラーと並行して自営業をしていますが、私の自営業のお客さんである会社の社長が、その彼なのです。もう20年以上のお付き合いです。

 

私は、自分の自己否定、自己嫌悪が原因で、迷惑な営業をし続けていると思ってずっと辛かったのですが、その迷惑をかけているはずのお客さんが、私をたくさん救ってくれました。

実は、私は、そのビデオの営業マンのとき、全国でトップ3に入るぐらいの営業成績を上げていたのです。営業は辛かったですが、結果は残していたのです。

私は今はカウンセラーをしていますが、正直に申し上げると、私も今でも単なる人間ですから、自己嫌悪や自己否定を今でも持っています。要するに、自分を否定して疑ってみてしまうクセは、今でもあります。

それでも、今から考えれば、ビデオの営業マンの時代に、あれだけたくさんのお客さんが救ってくれたのですから、そして、実際に営業成績が良かったのですから、私の仕事は、迷惑ではなかったのかもしれないと今は思えます。

 

もし自分なりに当時の自分を評価するとしたら、

自分なりの信念をもって、誠実に頑張っていた

といえると思います。そして、その頑張りをお客さんが見ていてくれて、評価してくれて、私を救ってくれたのだと思っています。

いまから振り返れば、当時のお客さんだけでなく、会社の上司や先輩、親兄弟や友達など、私の周りのあらゆる立場の人間が私を見ていてくれて、救ってくれたような気がしています。

辛いながらも、ひねくれずに、頑張ったことが良かったのかもしれません。

そして、カウンセリングをしていると、クライアントさんは、ひねくれずに、前向きに進もうとされている方々ばかりで、本当に素晴らしいなといつも思います。

今何らかの悩みがあったとしても、あなたを見ている人は、どこかにいるのかもしれないですよね。

読んでいただき、ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大塚 亘

恋愛や夫婦関係などパートナーシップの問題、親子などの家族関係、自己価値や自信など個人の性格の問題を得意とする。 「答えはクライアントさんが持っている」という信念のもとに、問題の先にあるクライアントの価値やビジョンを見続け、クライアントが無理なく実践できる提案を行っている。