「ありがとう」と「すみません」をキチンと使い分けていますか?

ある日の会社での出来事です。
出来事といっても、そんなに大した話でもなくて、言葉の使い方の話です。

わたしの隣の課にいる20代後半に入ったくらいの男性の話です。
(男性というよりは男の子という感じの方が似合いますが・・・)
彼は転職してきて、そろそろ3年近くになると思います。
彼は仕事をなかなか覚えないようで、入社当時から同じことを何度も注意されていました。
言葉遣いは、「はい」とか「承知しました」とか、とても丁寧に応えますし、謙虚というよりはへり下ったな姿勢です。
だけど、人の話や状況、出来事を理解することや人とのコミュニケーションはどうやら苦手らしく、わからなくても、「はい」とこたえているようです。
その理由を「わからない」と相手に言うことはとても失礼なことだと思っているからと上司に話しているのを耳にしたことがあります。
なので、しょっちゅうミスをするから上司にも怒られるし、取引先や協力会社にも「すみません」と電話で言っていることもよくありました。

先日、彼がやはり電話に出て、相手に「すみません」と何度も言っているのを聞きながら、「ああ、また何かミスしたんだなあ。大丈夫なのかしら」と思っていました。
彼が電話を切った後、課の先輩にあたる女性が「そんなにすぐに謝ってばかりじゃなくていいよ」と伝えたんですね。 

確かに、彼はどこからか電話がかかってくると、しっかり状況も確認せず「すみません」と先に言ってしまうクセはあるように思います。
それは、彼自身がいつも何か失敗すると思っているから、悪くなくても先に言ってしまおうと、つい「すみません」を連発してしまうのかもしれません。

だけど、その時の彼のこたえは、「いや、こちらの不手際を知らせてくれて、こうしておきますと言ってくれて助かったんです」というものでした。
私は、背中合わせの彼の後ろの席でその言葉を聞きながら、「それって、すみませんじゃなくありがとうでしょ!!」と思いつつ、心の中で「ああ、(カウンセラーとして)伝えたい。でも他の課のことに口出しも出来ないし・・・」と思っていると、その先輩の彼女がこう言ったんです。
「それは、感謝でしょ。『すみません』じゃなくて『ありがとう』だよ」って。
(そうそう、そうだよ!と私の心の中の声。その先輩、素晴らしい!と思って聞いてました。)

彼が先輩の言葉をどう受け取ったか、どう理解したかはわかりませんが、私たちも「ありがとう」と「すみません」をごっちゃにしている時はないでしょうか?

もう20年ほど昔になりますが、私が元夫の駐在で海外にいた時、日本語教師のをボランティアをするためその手ほどきを受けたことがありました。
その時に「すみません」について学んだことで、改めて認識したのが、「すみません」の3用途でした。

 ①すみません – 謝罪のことば
 ②すみません – 呼びかけのことば (人に声をかけたり、お店で店員さんを呼ぶとき)
 ③すみません – 御礼のことば 

説明されると確かにそうだなと思うし、誰もがその時々で無意識に使い分けていたりしているのですが、普段何気なく使っているので、私はあまり深く考えたこともなく、「へえ~。」と驚いたのでした。
(英語に置き換えてみると、この3つの意味が同じ単語ひとつになることがないのでわかりやすいかもしれません。
 ①Sorry
 ②Excuse me
 ③Thank you)

このことを知って意識するようになると、「ありがとう」と言えばいいところを「すみません」と使っていることが意外と多いことに気がつきました。
たとえば、エレベーターに乗って、乗り合わせた人が「何階ですか?」ときいてくれてその階数ボタンを押してくれた時やエレベーターのドアを開けて待っていてくれたりした時に、「ありがとう」ではなく「すみません」と言っていませんか?
会社で誰かが書類を持ってきてくれたり、コピーを取ってくれたりした時に、「ありがとう」のつもりで「すみません」と使っていたりしませんか?

誰かが親切にしてくれても、特に先輩・上司、目上の人や知らない人からだと、なおさら感謝を伝える時に「ありがとうございます」より、つい「すみません」と言ってしまうようにも思います。
(どことなく、「ありがとう」の丁寧語が「すみません」だと感じているからなのかな、と私は思っているのですがどうなのでしょうね。)

私たちにはいつのまにか身についてしまった口ぐせがあります。
「ありがとう」と感謝の言葉でいいのに、してもらったことに申し訳なさを感じる気持ちが強いと、つい「すみません」と口に出てしまうのではないでしょうか。
いつも自分はダメだと自信がなかったり、遠慮がちだったりすると、頭ではわかっていても「ありがとう」と感謝の言葉を口にするより、こんな私のためにしてもらって)「すみません」のような気持ちになっているのかもしれません。

あなたは、「ありがとう」と「すみません」をキチンと使い分けていますか?
もし、あなたが、つい「すみません」を使ってしまう人だとしても、大丈夫。
困ったなあなんて思わないでくださいね。
まずはそれでOKです。
クセなので、言ってしまった後に修正して意識付けしていけばいいんです。
何度もチャレンジして、「ありがとう」をクセにすればいいのですから。

もちろん、自分が間違ったり、迷惑をかけたりした時は、素直に「すみません」と謝ることは必要ですし、大切なことだと思います。
だけど、もしミスを許してもらえたり、リカバリーを手伝ってもらって事なきを得たなんて時は、しっかり感謝の気持ちを「ありがとう(ございます)」で伝えられるといいですよね。

私は会社で取引先に電話をする時に「いつもお世話になってます」という代わりに、時々「いつもありがとうございます」ということがあります。
そうすると、相手はたいてい恐縮して「いや、いや、そんな・・」って感じで反応されるのですが、悪い気はしない様子で、柔らかい雰囲気で話が続くように思います。

「ありがとう」は魔法のことば、なんて言うように、言った方も言われた方も嬉しいし、いい気分になります。
いい気分になれると、心が温かくウキウキしてきませんか。 
あなたの一言は、相手も自分も喜ばせる言葉になるのですから、感謝の時は、「ありがとう」をぜひ使ってみてくださいね。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

松尾 たか

自己否定、自己嫌悪、疎外感、自己肯定を得意とする。「その方の心に寄り添い、一番の味方でいること(安心感)」をモットーに、わかりやすい言葉で恋愛問題や対人・自己との関係を紐解き、改善・生き易さへと導いている。  東南アジア2カ国での生活経験もあり、国や文化の違いについても造詣が深い。