ありがとう、ありがとう、ありがとう

料理をしていた時のことです。
「包丁が切れにくくなったなぁ~」と感じました。
「じゃぁ、また実家に行くときにおじいちゃんに研いでもらおうっと。」
思った瞬間
「はっ!それは出来ないんだった・・・・。」と気づきました。
この春、祖父が他界したのです。
結婚して家を出てから17年、
もう長らく一緒に住んではいないので、
正直にいえば、毎日存在を感じる人ではなくなっていました。
でも、こうした何気ない瞬間に思い出して
「もう居ない」ことに気付くのは、ショックも大きいですね。
お通夜やお葬式は、故人を忍ぶための時間ですから
悲しいのは、ある意味当然なのでしょうけど、
こうして何の心の準備もしていない時に不意打ちをくらうと
ダメージが大きいのだなぁ~と実感しています。
人間はショックなことが起こった瞬間や
衝撃的すぎることが起きた時には
割とやり過ごせてしまったりしますよね。
例えば、今回のように大切な人を失うことだとしたら
お通夜やお葬式、諸手続きに、来客への対応などなど
やらなくてはならないことが山ほどあり
そちらに頭が働くので余計なことを考えている暇が
あまりないですしね。
気が張っている分、なかなか悲しみを感じられなかったり
自分の受けた衝撃に気付かない事もありますね。
逆に言うと、ひとやま超えた時や、
一区切りついた節目の時には、注意が必要とも言えそうです。
実際に、うちの祖母は四十九日の終わった日の夕方に、
背中に大きな赤いぶつぶつができ始めました。
帯状疱疹でした。
喪主を務めた父は父で、翌日腰が痛くて動けなくなったそうです。
そのため、母は祖母を病院に連れて行ったり、
父の代わりにお寺に行ったりとそれはそれで大変だったようです。
「四十九日」ってやっぱり大きな区切りなんですね。
それまで、心も身体も緊張していたものが
ふぅ~と一息ついて、ふっと我に戻る瞬間なのかもしれません。
一方で
私にとって、今回の「四十九日」は、
むしろ感謝の気持ちに包まれる日となりました。
四十九日の法要の最中に、
いつもお世話になっている近所のお寺の本堂で
お経を聞いていた時にふと気になったのです。
「あれ?ここの本堂に入ったのって生まれて初めてじゃないかな?」
そうなのです。
40年間も生きてきて、
毎年お墓まいりに来ていながら、
子どものころにはお祭りになんかも顔を出しながら
身近にあったはずのお寺の本堂に、なんと初めて入ったのです。
つまり、私の人生が「法事」というものに
あまり縁がなく生きてきたということ。
幸せなことだと思います。
なんか、すごいことなのかも・・・と
ひとりで感動していました。
そしてもう一つ。
私が知らなくて驚いた事があります。
祖父が亡くなった時、母に何気なく聞いたのです。
「それで、四十九日っていつになるの?」と。
すると、母はカレンダーをめくり始めて
「えーっと、7週間だから同じ曜日になるんだよね。
1,2,3・・・」と数え始めたのです。
「何それー!?
そんなこと初めて聞いた!!」
と内心驚いたもののすぐに意味はわかりました。
「あぁ、
四十九日とは、
7(曜日)×7(週間)=49
という意味で四十九日なんだ。」
今まで生きてきて
「四十九日」という言葉は何度も耳にしてきたはずなのに
恥ずかしながら疑問にも持たず
なぜ49という数字なのか、この時まで知らなかったのです。
そして、
1週間ごとに卒塔婆を裏返す事とか、
お葬式にかかわることや
法事に関わることを全く知らない自分を
恥ずかしいと思うよりは、
「ありがたいな」と感じたのです。
だって、そんな知識を必要とせずに生きてこられたということ。
長く、身内を失わずにたくさんの家族に囲まれて過ごせてきたということ。
もはやアラフォーの私ですが、
なんと!6年前まで祖父母が4人そろって居たのです。
だから、娘には、祖父母(私の両親)に加えて
曾祖父母まで6人フルメンバーがそろって居たわけです。
夫側の曾祖父母は一人もいらっしゃらなかったので
それを思うと、全員そろって居たのはすごいことだな~と痛感します。
娘も私もたくさんの愛をたくさんの人数の家族から
もらっていたということですよね。
幸せな時間を過ごさせてもらったんだなぁ~という
あったかい気持ちでいっぱいになりました。
祖父を失ったことは、さみしいし、悲しいけど、
それだけでもない。
それ以上に大切な、家族のつながりを
思い出させてもらったような気がするのです。
そうそ、祖父は私の誕生日の朝に亡くなったんですよ。
「忘れてほしくない」
そんな祖父の祈りが入っているのかもしれません。
でも、そんなことをしなくたって忘れないのにね。
お茶目な祖父です。
おじぃちゃん、
長い間、幸せな時間をありがとう。
仕方ないから、これを機会に包丁の研ぎ方も練習するね。
でも、コツくらい、こっそり教えてくれないかな~。
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