二人で作る土壌~美しい花を咲かせるために~

離婚することを前提に結婚するカップルってあんまりいませんよね?とすれば、何か二人の間に問題を起こす要因(土壌)があったのでは?

パートナーシップの問題で、さまざまなご相談をいただくのですが、その表に出てきた問題そのものは実は二人の関係を“象徴する”出来事で、問題の本質は別のところにある、という見方ができます。

例えば、「3年経ったら浮気するからヨロシク!」「はい、あなた」なんて風に、浮気することを前提に結婚する夫婦なんていないと思うんですよね。
(その可能性は危惧していたとしても)
だから、もしその問題が沸き起こったときに「お互いにそれを意図していたわけでないが、二人が今まで築いてきた関係性に、浮気を作り出す要因があったのでは?」と考えてみることができます。

それはまるで、二人で一つの土地をずっと耕してきて、そこに「浮気」という雑草が育ってしまったような感じです。
付き合い始めたり、結婚当初は「美しい花を咲かせて、美味しい実を実らせようね」と仲良く耕し始めた土地も、知らないうちに荒廃し、花が枯れたり、芽が出なかったり、はたまた、雑草があちこち生えてきたりしてしまったりするのかもしれません。

バラの種を蒔いたはずが、気が付けばタンポポが咲いてしまうように。
(バラの花言葉は「愛」、タンポポは「別離」だそうです)

「旦那の浮気」という問題が出てきたとき、世間的に悪いのは旦那かもしれないけれど、もしかしたら、その問題が起きる土壌が二人の間にあったんじゃないか?今回はたまたま旦那側に「浮気」という雑草が生えただけなんじゃないか?という風に見ていくと、新しい気付きや解決の方向性が見えてくることが多いんです。

これは意識的なものというよりは、無自覚・無意識的なお話ですから、ちょっと曖昧な表現(「~じゃないだろうか?」)で捉えられるお話ですね。

●心の中にある裏腹な感情

ある奥さんをカウンセリングしていたときのことです。
「旦那が浮気して離婚を切り出してきたんです」と不安で一杯な表情をされていました。
最初はその不安や寂しさ、悲しみ、怒りなどの感情が出てきて絶望してしまうこともあったんですが、何回かカウンセリングを受けて、少しずつ一緒に心の中に入っていったとき、彼女はふとこんなことを言い出したんです。
「もし旦那が浮気してなかったとしたら、あたしの方がしてたかもしれません」

それに気付いた彼女自身もびっくりしてました。
(他にも同じことをおっしゃった方がいらしたんですね。
それで今回のテーマである「土壌」という見方を僕は思いついたんです。)

たまたま今回は旦那だったけど、そのタイミングが一つずれていたら自分自身が浮気してたかも・・・と。
それは“浮気”という芽が生える土壌(要因)が二人の間にあったのでは?と考えてみることができるんです。

彼女も不満や寂しさ、退屈さなどから、旦那さんに対して距離を取りたい気持ちが元々あったみたいなんですね。
浮気問題の発覚で、そんな気持ちは吹っ飛んでしまったけど。

また、セックスレスのご相談を受けていた頃です。
「私はセックスしたいのに、旦那はその気が無いみたいで・・・」というお話でスタートしたカウンセリングでした。
感情を解放したり、自分を変えるアプローチにチャレンジしたり、心の中をより深く見ていったりするうちに、彼女はこんなことに気付きました。
「私も旦那とのセックスに抵抗というか、すごい嫌悪感を感じてたかもしれないです。私、ずっとセックスが好きだと思っていたんだけど、実はそうじゃなかったかもしれないです。」と。

その後彼女とはセックスレスの問題から、彼女自身のセックス観、男性観を癒していくアプローチに幅を広げていきました。
今はその辺もだいぶクリアになり、セックスレスもキレイに解消しているようです。

これらのことに気付き始めると、あることが分かってくるんですね。
それは「この問題、旦那が悪い、悪いと思っていたけど、二人の問題だし、私自身の問題なんだ・・・」ということです。

旦那が100%悪いとしたら、旦那が変わらない限り問題はなくなりませんね。
でも、自分も50%絡んでくるとしたら、自分自身でも問題を解決できることに気付けます。
それが希望の光となってくるんです。

●どうしてそんな土壌にしてしまったのでしょう?

そんな問題が起きる土壌をどうして作ってしまったのでしょう?
最初にお話したように、誰も「3年後に揉める」予定で結婚するわけではないんですよね。
そして、そのために土地を作ってきたわけではないと思うんです。

じゃあ、なぜなんでしょう?
いくつかのケースを考えてみましょう。

○誤解やすれ違い。
一緒に土地を耕してたのに途中でどちらかが諦めてしまったり、一人でさっさと進めてしまって相手を置いてけぼりにしてしまったり。
あるいはどんな種を蒔くかでケンカしたり、自分だけが頑張ってるような気がしたり。
具体的には「家事は私に任せっぱなし」「亭主は仕事さえしてればいいんだろ?」「子どもはいらない」「最近ぜんぜん構ってくれない」など。

○我慢、抑圧と言ったもの。
雑草が生えてきたのに見てみぬふりをしてしまったり、相手の分まで頑張ってやってしまったり。
「ま、いいか」とか「私が気にしすぎなんだわ」という部分。
無価値感などから「これくらい頑張らないと認めてもらえない」という感情が隠れてるかもしれませんね。

○芽を枯らしてしまうこと、つまりは期待と諦め。
せっかく芽が出てきたのに水や肥料をやらないと枯れてしまいますよね。
夫婦で役割分担がはっきりしてきて、不可侵条約を結んでしまったかのようにコミュニケーションが取れなくなってしまったり、セックスがお座なりになってきたり。
「こんなはずではなかった・・・」という感覚ですね。

○競争の罠。
相手の成果を喜べない自分。キレイな花が咲きそうなのに嬉しくない自分。
「自分が、自分が・・・」と自意識過剰になったり、夫婦の間の距離が空いてきて他人のようにパートナーを感じたりします。

○破壊願望
我慢や期待はずれが続くと、花も実も美しく感じないために、叩き潰してしまいたくなります。
「受け取れない」「与えられない」。
不満や怒りが溜まっていたり、恥ずかしさを強く抱えてしまったり。

他にも色んなパターンが考えられますが、これらは今までの心理学講座の中でも触れてきた話題ですもありますね。

●土地を蘇らせよう

そんな中で雑草が大きく育ってしまったり(問題がはっきりしてしまった)、土壌が悪く、何も育たないような状態(デッドゾーン)になってしまったら、そこから、自分ひとりでも土地を再生させようとする意欲が大切ですね。

まあ、でも、最初はショックが大きすぎて、そんな気力は沸かないものかもしれません。
そんなときは土地を耕すことに疲れてしまい、体力が残ってない場合が多いですから、まずは、そんな疲れを取ったり、サポーターを集めたりすることが大切なんですね。

僕自身、色んなご相談を頂きながら、いつも「みんな頑張ってるんだよな」ということを感じています。
自分ではそうは思っていなくても、関係性を良くしようとしたり、細かな問題をクリアにしようと一生懸命頑張ってるんですよね。
それでもなお、雑草が生えてきたり、土地が枯れてしまったりするもんです。
それは絶望させるために起こるわけではなく、より大きな力と視野を手に入れるためだったりするんです。

でも、まずは多くの方にとっては休養が必要ですね。
初めてお会いする方に最近一番多く提案するのが
「少し今の土地を離れて旅行でもしてください」
「今まで我慢してきた好きなことを思い切りやってください」
「一つのきっかけとして、何か自分にプレゼントを買ってあげて下さい」
といった、自分を気遣うことなんです。

そうして、体力を復活させて、さあ、土地の再生事業に踏み切るんです。

○耕す

まずは足元の土に鍬を入れましょう。
相手の領域に踏み込む前に、自分の今いる場所から耕し始めるんです。

それは今の自分を見つめること、今の自分を知ることになります。
素直な自分、自然な自分を探し始めることも大切なことですね。

○水をやる

耕した土地に水をあげましょう。
水路を作って流し込んでもいいですね。

この場合の水というのは、潤いや余裕を象徴しています。
自分自身の感情を解放していくことが、その役割を果たすかもしれません。

○肥料をやる

いい土を作るために肥料、つまりは栄養を土地に与えてあげましょう。

夫婦が居心地よく過ごせる環境、雰囲気。
安心や安らぎの空気。

自分が作りたい関係性をヴィジョンとして描きます。
土地それぞれに性格があるように、まずは自分自身が作りたい関係性、そして、二人が作りたい関係性を見つめていきます。

○種を蒔く

どんな花を咲かせたいか、どんな実を実らせたいか。
たくさん種を蒔こうか、それとも、大きな木を育てるために苗を植えようか。

「こんな夫婦になりたい」という目標設定ですね。
より具体的なレベルに落ち着いてきます。

●桃栗3年、柿8年

一つの種を蒔き、あるいは、苗を植えて、それが実るには時間がかかります。
もし今あなたが家のプランターに花の種を蒔いたとしたら、実際に咲き誇るのは数ヶ月先になるでしょう。
しかも、最初の期間は種は土の中で成長しますから、変化しているのかどうか分からなくなってしまうものです。
そこで水やりを止めてしまったり、肥料をやらなかったりしたとしたら、その種は種のまま枯れてしまうでしょう。

カウンセリングを受け始めて3,4ヶ月経つ頃、実際自分がどんな変化をしてきたのかが不安になり、それを改めて確認する時間を作ることがあります。
なかなか変化には気づかないものなんですよね。

だから、継続的なチャレンジがとても大切なんです。

でも、種を蒔いて、水をやって、そして、芽が出たとしたら、すごく嬉しいでしょう?
それが希望の芽となるんですね。
実際に花が咲いているわけではありませんから「問題が解決した」という実感はまだ無いものです。
でも、芽が出た時点で「なんとかなるかも」という希望を持つことができます。

焦らず、できることから一つずつ、取り組んでいくことが大切ですね。
そうすれば必ず道は開けてくるものです。

※※※
今回は無意識的なお話でしたので、抽象的、象徴的なお話が多かったかと思います。
論理的に考えるよりも、感覚的に捉えて見られると良いかな、と思います。

(本文で紹介させていただいた事例はご本人に許可を頂いて掲載しています。)

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