嘘の心理学~人はどうして嘘をつくか・人はどうして嘘に騙されるのか~

私達はどうして嘘をつき、また嘘に騙されるのでしょうか?

嘘は、癌に冒された人を落胆させないためにつくような誰かのためを思ってつく嘘もあれば、自分のためにつく嘘もあります。自分のためにつく嘘は、オレオレ詐欺のような利得を目的としているもの、自分自身を慰めるために自分につくもの、そして嘘をつく人に自信がないために自分を飾ったり、愛を失わないようにつくうそがあります。

一方、詐欺のような嘘に騙されやすいのは、自己価値の認識が低く、それ故自尊心も低く、将来に不安を持っていたり、自分はついていないと思っているからです。

そして、嘘をつく人には、どんな嘘であっても殆どの場合後ろめたさを伴っているのです。それだけ、私達は正直に生きたいという純粋な気持ちを抱いているのですね。
それが本当の意味で信じられたら、嘘に翻弄される事は無くなります。

◎リクエストを頂きました◎
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思っても無いことを平気で口にする男性の心理を教えていただきたいです。
例えば結婚する気もないのに、「お前が嫁にこれればいいのに」とか、「妻にする」とか、「今度またここに来ような」など。

叶える気もない、本当に思ってもない、その場のノリや、その時ちょっと感じただけで口にする、その場限りの発言、相手の気持ちを考えない口先だけの発言をする男性の心理が知りたいです。
私は素直に信じて結局悲しく寂しい思いをするだけ。

嘘なのでしょうか、そんな事を口にする自分に酔いたいだけなんでしょうか。
このようなテーマをぜひお願いします。
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生まれてから今までに嘘をついたことがない、という人はいらっしゃらないのではしょうか?
また、嘘をつかれたことが1度もないという人もいらっしゃらないのではないでしょうか?

嘘の良し悪しの判断はさておき、嘘は私達の日常生活の中で常に身の回りにあるものです。
今日は、病的な嘘は除いて、嘘にまつわる心理についてお伝えしたいと思います。

嘘を大きく分けると、人の為につく嘘と、自分のためにつく嘘に分かれます。
前者は、例えば、癌の人に落胆をさせないために真実を知らせない嘘や、Oヘンリーの「最後の一葉」のように、木の枝に残った葉が全て落ちると死を迎えると思い込んだ患者を勇気づける為に画家が描いた最後の一葉の木の葉のような嘘もあります。

嘘も、自分のことを純粋に思ってつかれると、つかれた方もその人の愛を感じられて必ずしも悪い気はしないのではないか、と思います。

一方、後者の自分のためにつく嘘には、2通りの嘘があります。
一つは、自分を騙すために自分自身に対してつく嘘です。
これは、ネガティブな自分の感情や現実を否定したいときの嘘で、例えば、失恋したときに「男はアイツだけじゃないさ」と、実はまだそう思えてはいないのに、自分自身を励ましたりします。

もう一つは、自分の欲求(ニーズ)を満たす為に、誰かに対してつく嘘です。
その一つ目は、明確に利得を狙ってつく嘘で、オレオレ詐欺や、霊感商法、マルチ商法などがこれに該当します。
ところで、冷静に状況を考えれば引っかからないであろうこのような詐欺に引っかかってしまうのは何故でしょうか?

心理学的に考えると、これはその人の自信の無さを反映しているのです。
私達が「あの人には不安はないだろう」とか「自信がありそう」と思える人、例えば芸能人や政治家などでも騙されてしまうのですが、その人の心はその人のみが感じられるのであり、外からどう見えるかは全く関係がないのです。

自信のない人は、自己価値の認識が低く、それ故自尊心も低くなります。その結果、将来に不安を持っていたり、自分はついていないと思っていたりします。
また、それを自分の外の世界や人にも映し出し(「投影」といいます)、人を心底から信頼できなかったり、そのような悪い状況がたくさん起こると思っています。

例えば、オレオレ詐欺はそのような気持ちをベースにした上で、子供や孫を不幸から守ってやりたいという気持ちと、動転して正常な判断がつかない状況を巧みに利用した手法です。逆説的ですが、自分の子供や孫を信じ、世の中には滅多に悪いことは起こらないと思っていたら、動転もせず、冷静に状況を判断してそんな詐欺にはひっかからないという事になります。

自分の欲求(ニーズ)を満たす為につく嘘の二つ目は、罰を受けることを回避するための嘘です。
これは、親の大切にしている物を壊して親から怒られるのを避けるためについたり、犯罪を犯した犯人がやっているのに否認するといった事例です。

さて、自分の欲求(ニーズ)を満たす為につく嘘の三つ目は、怖れから逃げるという意味では前述の罰とも一部重なるところがありますが、嘘をつく人に自信がないためにつく嘘です。
愛されたいけど自信がないので嘘で自分を飾ったり、愛を失うのが怖くて嘘をついたり、自分を大きく見せるために嘘をついたりします。

今回リクエストをいただいた方の例で、男性(このような嘘は男性のみではないと、男性の私は思うのですが)がついている嘘は、愛を失うのが怖くて嘘をつく気持ちと、十分な事ができていない自分や何か悪い事をしていると感じる自分を感じて、それを補う(「補償行為」と言います)ためにつく嘘が混じり合っている感じがします。

そして、ひょっとしたら口に出した時点では嘘ではなくて、本当にそのような気持ちがあるのに、それを積極的に実行に移せない何らかの心の事情があるのかも知れないのではないか、と感じました。ここでいう心の事情とは、その人自身の深層心理にある怖れに由来の勇気の無さとか、選べないとか、決断ができないといった事情です。

嘘は、今まで述べてきたどのような嘘においても、殆どの場合嘘をついている事にうしろめたさ(罪悪感)を伴います。最初に述べました、人のためにつく嘘ですらそうです。

そして、そのうしろめたさを直接感じている場合もあれば、それを感じるのが嫌でうしろめたさを感じないようにその部分の感情を切り離している場合(抑圧している場合)もあります。そのような場合は、特に「自分は悪くない。騙される奴が悪いんだ」と言い訳をすることが多いですね。

嘘をつくには嘘をつくそれなりの理由があります。
しかし、私達は誰しも心の底では、正直に生きたいという純粋な気持ちを抱いているのですね。
それが本当の意味で信じられたら、嘘に翻弄される事は無くなります。
なぜならば、それだけあなたは周りを、そして自分を信頼できているのですから。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大谷 常緑

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。