「叱る」と「怒る」の違い~叱る技術を高める~

以前(と言っても3年前ですが)「褒める技術・叱る技術」というお話をしました。
前回のお話は「褒める技術」に重点を置いた内容でしたので、今回はその続きとして「叱る技術」をクローズアップして届けしたいと思います。

※前回の記事はこちら
(よければ合わせてお読みくださいね)

新人や部下に対して、こちらは単に教えているつもりだったり、うまくできていないことを個別に注意したり、多くの人に向けて話したりしているだけなのに、新人や部下には「怒られた」「否定された」と思われてしまうという、スレ違いが起きてしまう場面は多々あるようです。
中には「怒られる」ということにあまり耐性を持っていない新人が、自信ややる気を無くしてしまう、ということも。

こちらは指導して導いているつもり(叱る)なのに、
相手は「怒られた」と受け止めてしまう。

今回はその違いについて考えたいと思います。

突然ですが「怒る」と「叱る」の意味をご存知でしょうか?

辞書で調べると

◆おこ・る 【怒る】
[動ラ五(四)]《「起こる」と同語源。感情が高まるところから》
1 不満・不快なことがあって、がまんできない気持ちを表す。腹を立てる。いかる。「真っ赤になって―・る」
2 よくない言動を強くとがめる。しかる。「へまをして―・られた」

◆しか・る 【▼叱る/▼呵る】
[動ラ五(四)]目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる。「その本分を忘れた学生を―・る」
[可能]しかれる

といように、「怒る」の中に「叱る」が出てきて、ほぼ同じ意味のように思われがちです。
しかし、これは子育ての分野でも、よく言われている事なのですが、実は
『「怒る」と「叱る」はまったくの別物』

なのです。

上の辞書の説明のちょっとした違いが実は大きな違いでもあるのですが、

・「怒る」ことには自信の不満や怒りなどの”感情”が働いている
・「叱る」ことには相手の為を思う”理性”が働いている

ということなのです。
とても平たく言えば「自分の為に怒る。相手の為に叱る」ということですね。

【怒る】とは、相手が自分の指示通りに動いてくれなかったり、思った結果を出してくれなかったり、相手が自分に対して悪い影響を与えた場合に自分が腹を立てているということを相手にぶつけたり、意思表示する動作なのです。
「どうしてできないんだ!」「やる気ないのか!?」「いい加減にしろよ!」という風に、私は怒っています、というの相手に分かってもらおうとしたりとか、不満や鬱憤を発散させたいとか、相手を非難したい、困らせたい、というような目的がそこには隠れている訳です。

そして一方【叱る】とは、相手が自分の指示通りに動いてくれなかったり、思った結果を出してくれなかったり、相手が自分を含め、周りの誰かに悪い影響を与えた場合に、今の相手の問題点や改善点を考え、相手をより良くしようとするアドバイスや注意、サポートを、あえて強めに相手に伝える動作と言えます。
会社の中であれば、会社の信頼を傷つけたり、損失を出すような行いでああったり、会社と個人の価値観や考え方の違いにより、個人が自分のルールで動かないように捉え方を修正したりすることで、本人が同じ間違いを繰り返さないようにする、という目的がある訳です。

しかし、私達人間は「感情の生き物」ですから、全く怒るなというのも難しいもの。
なので、個人的には怒ったり不満に思ったり、イライラしてもOKなのです。
ただ、誰かを指導したり、注意やアドバイスをしようとする時にこの「怒る」を全面に出してしまうと、返って逆効果になる場合が多いのです。

それは、あなたと相手の立場が”対等ではない”から。
どうしても下の側からすると威圧的に感じれてしまったり、自身を否定されてしまったように誤解しがちなのです。
(これは子育てや教育でも同じですね)

感情的に指導する前に一呼吸置いて、
「自分の不満を伝えるのではなく、相手の為になるように叱るにはどうすればいいか?どう伝えればいいか?」
を考えてみる練習をしてみて下さい。

この「相手のために叱る」という叱る技術が磨かれれば、実は上司に対しても叱ることができるようになります。
例えば昨日と今日と指示が違うという上司に「この間と言ってる事が違うじゃないですか!」と不満をぶつけたとしても「言うとおりにやってればいいんだ!」という風に逆に怒られてしまうでしょう。
しかし、それを相手の為という視点から見ると、その指示の内容の違いはなんであれ、その上司にとって前回の指示よりも今回はこの指示をする”理由”や”意味”があるはずなのですが、上司はそれをきちんと説明していないので周りが振り回されているように感じるという問題点がある訳です。
なので、「その指示の真意がよくわかりません。我々にもわかるように、もう少し説明してください」という風に伝えることが出来るかも知れません。
そうした伝え方(叱る)でも、最終的には「言ってることが違うじゃないか!お前の言ってることはわかりにくい!」というあなたの不満や怒りを解消する答えは得られるのです。

最後に、効果的に叱る技術の3つのポイント。

1)すぐに叱る
その場で、その日の内になど、できるだけ早く叱りましょう。
後になって「この間のあの件だけどね」と叱っても効果が薄いです。

2)短く叱る
言いたいこと、分かって貰いたいことは山ほどあってもそれを長く説教のように言い聞かせてもあまり相手の心には響きません。
(自分を守る為に相手が心を閉じてしまったり、聞き流してしまう)
できれば二言、三言。長くても5分くらいで。
そして叱ったらすぐその場を離れて下さい。
そばに居て睨みをきかせたり、巡回して様子見は相手を萎縮させるので逆効果です。

3)みんなの前で叱らない
できるだけ1対1で叱りましょう。
みんなの前で叱って、相手に恥をかかせる必要はありません。
職場の多くの人が陥るような共通の課題や問題点について叱る時には、できるだけ一般論として話したり、ケースを少し変えて説明してあげましょう。

「キレる」という言葉が多く使われるようになった反面、「叱れない大人が増えた」と言われるようになってから結構な時間が経ちます。
その為、自分自身もきちんと叱られた事のない人も多いでしょう。
効果的に「叱る技術」を高めて、デキる部下を育てる参考になれば幸いです。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、対人関係、自己啓発、ヴィジョン、ビジネス心理を得意とし、”少しでも楽に・簡単に・シンプルに”をモットーに、分かりやすい心理分析と日常的に無理なく取り組める提案を行っている。 その人本来の輝きや、問題の先にあるヴィジョン(幸せな未来や才能)を引き出すカウンセリングが好評である。