追えば逃げる、自分らしさ

「あなたらしさって何ですか?」と尋ねられて、みなさんは、すぐに答えることができるでしょうか?
「あなたらしくふるまってください」と言われたなら、みなさんは、どうふるまわれますか?
可愛らしく?優しく?それとも、カッコよくクールに?
実は、ほんの少し前まで、私は、自分らしさというものがさっぱり分からずにいたんです。
「自分らしくと言われても、何が自分らしさなの?」って。
幼いころから思春期にかけての私は、神経質で、怖がりで、弱虫で、頼りなくて、いつまで経っても子供っぽさの抜けない女の子でした。
でも、大人になって、いろんな悔しい経験、自分に腹の立つ経験を経て、「こんな自分じゃダメだ」と思い、頑張った結果、男顔負けなくらいに強くて、なんでも自分でできて、サバサバした女性になりました。
「頑張って強くはなったけれど、それは表面上の姿。もともとは神経質で怖がりで弱虫な人間なんだ」と、最初のうちは思っていました。
でも、周りの人たちから、「あなたは、強くてたくましい人」という目で見られ、弱さを少しでも見せると「どうしたの?あなたらしくないっ!?そんなの似合わないわっ!!」と、ものすごく戸惑われたりしたので、やがて、私も、「強い人間、それが私なんだ」と思うようになったんですね。
ところが、心理学の講座やワークショップに通うようになって、そこで知り合った人たちからは、「あなたは、ふんわりと優しい雰囲気を持った、純粋で女性らしい人ね」と言われたのです。
「え?私が!?ふんわりと優しい?女性らしい?あり得ない!そんなの似合わない!それは私じゃない!!」
私はそう思いました。
家族や仕事関係の人たちは、依然として、私のことを「強くてたくましい人」という目で見ていたので、「いったい、どちらが本当の自分?」と混乱もしました。
でも、どんなに否定をしても、みんな口々に、優しいとか女性らしいとか言うので、そのうち信じるようになったんですね。
そうか、強くてたくましいのが私なのではなくて、優しくて女性らしいのが私なのかって。
しかも、「ふんわりと優しくて、女性らしいところが、あなたの魅力よ」なんて言われたものだから、極端というか単純な私は、「そうか、強いとかたくましいとか、そういうところは、魅力じゃないんだ」とせっかく頑張って手に入れたはずの強さ、たくましさを欠点として捉えるようにもなってしまったんです。
こんなふうに、私の「自分らしさ」のイメージが変わるのとリンクするように、洋服の趣味も変わりました。
昔は、シンプルでカッコいい服、活動的な感じの服を着ることが多かったのですが、ふんわりとした乙女チックな服を着るようになりました。
もちろん、乙女チックな服も、好きだったんですけどね。でも、そればっかり・・・となると、飽きてくるんですよね。
しかも、結婚して、一児のママとなり、40歳に手が届きかけている今となっては、ちょっと可愛らしすぎない?という気もします。
なのに、それでもまだ、「こっちが私らしいスタイルなんだから」と、洋服を買いにいくと、ふんわり乙女チックな服ばかりを探していました。
本当は、今の私は、シンプルでカッコいい服や大人っぽい服のほうが着たい気分なのに、「こんなのは、私らしくないんだ。」と思って。
今、好きで、着たいのは、シンプルでカッコいい服、大人っぽい服。
でも、選ぶのは、ふんわり乙女チックな服。
つまり、私は、「これが自分らしいから」と、着たくもない服ばかりを選んでいたんです。
そんな買い物って、楽しいと思いますか?
やがて、私の中で、「自分らしさ=自分の自由を奪うもの、窮屈なもの」という理不尽なイメージが出来上がってしまいました。
そんな、ある日。仕事の関係で、あるフォトスタジオで写真を撮ってもらうことになりました。
そこのカメラマンさんの撮る人物写真は、どれも自然で、被写体の内面が透けて見えるようで、まとっている空気までもリアルに感じさせてくれる気がしたんですね。
なので、ぜひ、この人に撮ってほしい!と思い、お願いしたのです。
撮影が始まったとたんに、びっくりしましたよ。
他のカメラマンさんなら、「はい、ここで、こういう風に斜めに構えて、手はこの位置で、はい、ニッコリ笑って~」なんて、ポーズの指示などがあって、あとは、「いいね、いいね~」くらいの声かけとともに、カシャカシャと撮るじゃないですか。目をつぶったりしたら、ダメ出しなんかも出たりしてw
でも、このカメラマンさんは違ったんですね。
私と向かい合わせに立って、カメラを構えた状態で、いろんなことを質問してくるんです。
どんな仕事をしてるのか、とか、どんなお客さんにどんなサービスをしてあげたいのか、とか、はたまた、仕事とは全く関係のない世間話など・・・。
それに対して、私は、答えていくのです。
彼、ものすごく聞き上手なんですね。上手に共感や相槌を入れてくれるので(カウンセラー顔負けですw)、撮影されていることなんて、すっかり忘れて、会話が盛り上がっていきます。
「自由に手も動かして、しゃべってくれていいですよ」なんて言われたものだから、私は、とてもリラックスして、しゃべりまくりました。
そのあいだ、彼は、私のいろんな表情を捉えて、シャッターを押していくんです。
いや~、2時間近くに及びましたが、あんなに楽しい撮影は初めてでしたね~。
会話が楽しくて、心がウキウキして、子供みたいに無邪気にしゃべりまくっていました。
だから、撮影した写真(100枚近くになりました。
)をパソコン上で見せてもらうと、どの私も、伸び伸びと自然で、満面の笑み、どころか、のどの奥まで見えるんじゃないかというくらい大口を開けて笑ってたりもしました。
まあ、なんとも節操のないというか、無防備というか、写真撮影なんだから、ちょっとは構えなさいよ、って言いたくなるくらいです。
中には、変な顔、目をつむってる顔もあったんですけどね。
彼、撮影中に、「あ、今、目をつむっちゃいましたね~」なんてダメ出しをすることもなかったんです。
そうして出来上がった写真を、変な顔、目をつむった顔もひっくるめて全部、「いい顔してますね~」って慈しんでくれました。
私、昔からずっと、自分の写真ってどれも好きになれなかったんですけどね。
彼がそんなふうに、どの写真も愛してくれたので、私もまた、撮ってもらった写真すべてを好きになれました。
「どれも私らしいな~」って。
ついでに、彼が以前撮った他の写真も見せてもらったんですけどね。その中に、ある男性の写真があったんです。
その男性は、講演中で、緊張しているのか表情がめちゃめちゃ固かったんですね。
「なんだか、表情が固いですね」と私が言うと、彼はこう言ったんです。
「そうですねえ。でも、これも彼らしさなんですよね」って。
あ、そうか☆
私は、自分の中のモヤモヤが一気に消えたような気がしました。
自分らしさを出すというのは、「これが自分よ」と自分らしさというものを自分で決めて固定させて、そこにこだわることではないんですね。
あらゆる自分を「これも私」と肯定し、愛し、素直に表現した先に、トータルとして顕れるもの、それが、「自分らしさ」なのかもしれません。
20代のころに、「その服、あなたに似合うわね」なんて言われた服にこだわって、40代になっても同じようなものを着つづけていたとしたら・・・。
私たちは、時々刻々と、体型も、好みも、表情も、変わりますよね。なのに、服は20代のころのままだとしたら、ちょっと似合わないんじゃないかなあ、って思いませんか?
「自分らしさ」も同じなんですね。時々刻々と変化をするうえに、私たちの中には、いろんな自分がいます。
なのに、「私らしさはコレ」なんて、ある一面だけに限定して固定して、そこに自分を縛りつけたとしたら、かえって、自分らしさを失うことになるのかもしれません。
つまり、逆説的かもしれませんが、「自分らしさ」にこだわると、自分らしくなくなってしまう、ということなのでしょう。
ふんわりと優しく、女性らしい私も、強くて、たくましくて、サバサバした私も、神経質で、怖がりで、頼りない私も、どれも、み~んな、私。
ふんわり乙女チックな服が着たければ着ればいいし、シンプルでカッコいい服が着たければ着ればいい、どれも、み~んな、私。
自分の好きなようにふるまえば、「自分らしさ」なんて後からついてくる☆
大事なのは、どの自分も肯定し、愛してあげること。
そう考えたら、自分らしさって、本当は、自由で楽なものなんだって思えてきませんか?
あなたが自由にふるまっているとき、もしかしたら、「それって、あなたらしくないわ」と言う人がいるかもしれません。
でも、大丈夫。あなたが「そうしたい」と望んでのふるまいであるなら、それは間違いなく、あなたらしさの一部なのです。
つまり、「自分らしさ」は、他人が決めるものではないのですね。
「自分らしさ」というのは、他人にも、そしてあなた自身にも、決められたり縛られたりすることのない、変幻自在で自由なものなのかもしれませんね。

この記事を書いたカウンセラー

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退会しました。

8件のコメント

  1. 鶴園先生、こんにちは。先日一足先に40になったワークショップの受講者です♪
    先生と同じようなこと考えてました。
    服装とか、自分自身のあり方とか。
    お会いしたときの先生はとても女性らしく可憐な、そして親しみやすく明るい印象を受けました。
    同年代と伺ってびっくり。
    でもそういえば私の小学校時代の親友に似てるな~って思ったりして。
    これからも自分探しにいそしみます。
    また機会があればお会いできるといいな。

  2. こんにちは。
    先日、ワークショップでご一緒させていただいた 鶴園さんより年上の 泣き虫女です。
    私も、一見、みんなにはしっかり者にみられるようで、嬉しくもあり、とまどいもあったのですが、先日、知り合いに「実は私って、案外ぽーっとしてるんだよ」
    と言ったら、「言わない方が良かった」と言われて、少しショックでした。
    でも、鶴園さんのコラムを読んで、そっか~、どっちも私なんだ~、と腑に落ちました。
    甘ん坊の私も、勝ち気な私も、ゆるゆるの私も、いろんな自分があっていいんですね!
    目指すは、オールOK!の自由な私 です♪
     

  3. 綱瀬 jokejodan 誠一 on

    綱瀬です。
    素晴らしいブログを有難うございました。
    6日のセミナーお疲れ様でした。
    夜の部の出席申し込みをしていましたが、義兄の急逝の為に参加が適わず、ドタキャンさせて頂きました。
    原・鶴園・ふなき・建部と大好きなメンバーのそろい踏みで、非常に楽しみだったのですが誠に残念でした。
    黄門様と助さん&格さんにプラス風車の弥七まで加わった最強メンバーだったのに(笑)。
    翌日の東京感謝祭も長女プラスその婚約者と参加予定がドタキャンとなってしまい悔しい思いをしました。
    でも着実に好転してきている実感もあります。
    今後も宜しくお願いします。

  4. > Larissa さん
    先日は、ワークショップにお越しいただいて、本当にありがとうございました☆
    実はですねえ、私も、初めてお会いしたときに、誰に似てるというわけではないのですが、どこかでお会いしたような不思議な親近感を感じてたんですよ~。
    意思の強さを感じさせる眉や目元、陽気な雰囲気、そして、温かい母性・・・強くて優しくて、とっても楽しい、良いお母さんなんだろうな~と思いましたよ☆
    ある人から言われたんですけどね
    「30代までは、自信をつけるために頑張る時代だったけど、40代からは、自分のために生きる時代よ☆」
    なんだそうです。
    お互い、40歳どうし、これからの人生を、自分のために、楽しく生き生きとやっていけるといいですね♪
    また、お会いできるのを楽しみしています。
    私にとっては子育ての先輩でもありますから、いろいろお話を聞かせてくださいね(^^)

  5. > めぐりん さん
    先日のワークショップにお越しいただいて、本当にありがとうございました。
    本当に、いい感じに、いっぱい泣いていらっしゃいましたね~。
    涙のぶんだけ、心が浄化されているということですから、とってもいいことですよ~☆
    確かに、めぐりんさんは、とっても聡明で清楚な、「しっかり者のお姉さん」という印象ですが(女優の鈴木保奈美さんとか、小雪さんとか、あのラインかと・・・)、私の目には、ちゃ~んと「たまに抜けちゃう」おちゃめなめぐりんさんも、見えていましたよ。
    そんなボ~っとした部分も、泣き虫さんなところも、いい意味で、めぐりんさんに隙を作っていて、完璧すぎて近づきにくい印象ではなく、ほどよくしっかり、ほどよくゆるゆるといった、素敵なハーモニーをかもしだしているなあって思います。
    本当にステキです♪
    また、お会いできたら嬉しいです☆
    これからも、いっぱい泣いて、いっぱい癒されて、どんどん自由でゆるゆるになっていきましょうね~(^^)

  6. > jokejodan さん
    コメントありがとうございます☆
    そうですか~、そんなことがあったんですね~。
    ワークショップだけでなく、感謝祭も、行けなかったんですね~。
    ホントに残念でしたね。
    でも、まだまだこれから、チャンスはあるでしょうから、また次回、黄門さま、助&格、風車弥七が揃ったときには(というか、揃わなくてもw)、ぜひ、ご参加くださいね☆
    いつも、いろんなかたちで、コメントやご感想をお聞かせいただいて、大きな励みになっています。
    本当にありがとうございます☆

  7. 色々なファッションを楽しむのが好きです。
    今日はワイルドに。今日はセクシーに。今日はかわいらしく。
    コロコロ変わる私は『変!なんか?』と思っていたので、コラムを読んですっきりしました。

  8. > みちこさん
    色々なファッションを楽しめるって
    素敵ですね☆
    いろんな「私」を持っていて
    それを表現して、楽しめるみちこさんは
    とっても魅力的な女性だと思いますよ~^^