●一つの言葉

私にとって、いつも大切にしている言葉があります。
それは、生前祖母がいつも私に言ってくれていた言葉です。
「やらんで後悔するならば、やってから後悔しなさい。
やらなくて後悔するのは、ずっと“あの時やっとけば・・・”と思うけど、やって失敗したら、後悔するはするけど、やらないで後悔するときよりもずっと後悔はしないよ」
という言葉です。
この言葉が無ければ、今の自分はいないな、と思います。
私が、東京に行く前、祖母は半身麻痺の状態で、ずっとベッドの上にいる生活を送っていました。
仕事を続けながら、家族や親戚と協力し祖母の介護をしていました。
その最中、私に会社から東京へ転勤する辞令が下されたのです。
会社に入ってずっと希望していた職種へ移動できる嬉しさや驚きもありましたが、辞令を受けた直後は正直戸惑いもしました。
東京に行くという事は、地元を離れる事になります。
そして、寝たきりの祖母を置いて行く事にもなります。
親戚ぐるみで協力しながら祖母の介護をしておりましたが、それでも一緒にすんでいる家族の負担というものは大きな物でした。
今でも大変なのに、私が東京に行く事によって家族や親戚の負担も大きくなります。
そして、何よりも大好きで大切な祖母と一緒に入れなくなる事は私にとって辛くて寂しい事でもありました。
いつも、私が悩んでしまった時の一番の相談相手は祖母でした。
そこで、転勤の辞令を受けた事、嬉しいけど戸惑いがある事、祖母と離れたくない事、いっそ会社を退職し祖母のお世話をしようかな、等を祖母にぽつりぽつりと伝えていきました。
祖母は、ベッドの上で、うんうんと私が言う言葉を聞きながら質問をしてきました。
「で、あんたはどうしたいん?」と。
そこで私は、正直な所、東京でやりたい事にチャレンジしてみたい気持ちがある事を祖母に伝えると、祖母は動くほうの手で優しく私の頭をなでて
「じゃあ、東京へいっといで。おばあちゃんの事はええからいっといで」
と、伝えてくれたのです。
その手はとても暖かく、そしてとても優しい目で私を見つめてくれていました。
そして、あの言葉を伝えてくれたのです。
「しないで後悔するよりも、なんでもやってから後悔しなはれ。
あかんと思ったらいつでも帰ってきてええんやからね。」と。
祖母が寝たきりな状態で、実家を出る事に対して家族や親戚の反対も受けましたが、それを説得してくれたのも祖母でした。
親戚は祖母に
「一番かわいがっている孫が遠くに行くのは寂しいやろ?」
と伝えた時は
「うちは、あの子が好きなようにしてる事が一番嬉しい」
と、凛として伝えてくれたりもしました。
そして、私は東京へ転勤する事になったのです。
もしかして、あの時東京へ行く事をあきらめていたら私はずっと、やりたい事ができるチャンスを逃してしまった事に対しての後悔をずっとしていたかもしれません。
今でも、何かにチャレンジしたいときに祖母がいつも伝えてくれた言葉を思い出します。
そして、祖母の言葉で「よし、じゃあチャレンジしてみるか!」という気持ちになるのです。
そして、思いきってチャレンジし、やり切った後はとても清々しい気持ちでいっぱいになります。
そして、そんな清々しい気持ちでいる私を、今も天国から笑顔で祖母は見守ってくれてるのでしょうね。
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