●果たせなかった約束

こんにちは、寺島です。
よくカウンセリングでは心変わりについての相談をお受けします。
浮気、不倫などは、その最たるものですが、
「ずっと愛してくれるって言ったのに、嘘つき!!」という嘆きを聞くと、
“あ〜、ホントにホントにがっかりされたんだなあ〜。
 すっごく喜んで期待していた分だけのがっかり感なんだなあ〜”
と、お気の毒になります。
この期待が裏切られて傷ついたという感覚は子供が、
「今度の日曜、遊園地連れていってくれるって言ったのに、嘘つき〜!!」
というのと同じがっかり感な訳ですが、事情はわかっていたとしても、
人間ですから、感情としては、寂しく思うのもしかたないよなぁ〜と思ったりします。
人によっては、極端なケースになれば、がっかりしたあまりに自殺を考える、
または、相手を殺してしまうという衝動にかられたりすると、
反応もいろいろですから、つくづく人間って不思議な生き物ですよね。
ところで、寺島自身は自分の約束を守ってもらえなかった場合に、
「ぷんぷん!!」とムカつきがちではありますが、
そういう時には、自分が過去果たせなかった約束を思い出すようにしてます。
しかし、これ、一旦思い出しはじめると、めちゃくちゃでてくるわ、でてくるわ・・・(^^;
あまりにも罪悪感を呼び起こすのもなんなんで、自己嫌悪に落ち込む前に、結果として、
「相手も完璧じゃないからな〜、私も果たせなかった約束がたくさんあるし〜、ま、許そ、許そ」
と思うようにしてます。
今回は一つ、いつも私の中で覚えている果せなかった約束を書きたいと思います。
私は29歳の時に初めて、正社員になったのですが、
そこで、とっても運命的な素晴らしい出会いがありました。
そのお相手は、総務で働いていたのですが、私を気に入って雇ってくださった、総務部長さんです。
この方は女性で、でも、女性でありながら、きっぷがよくて、強くて、優しい、姉後肌の方でした。
それまでの私は女性のリーダーや、上司というものを経験してことがありませんでした。
よくあるイメージとしては、テレビドラマなどの怖い女上司や、
若い子を虐めるお局様みたいなイメージしか持っていなかったのです。
けれども、彼女は優しい、部下を可愛がってくれる人で、
かつ、彼女は自分の主張を通すのに、男性の営業部長と怒鳴りあうくらい強い人でした。
旧来の日本の女性のこうあるべきとイメージとあまりにも違っていたのです。
私は女性にも自分というものがあり、自分で自分を面倒みられる力があって、
胸を張って生きられるのだということを、彼女から初めて教わりました。
さて、総務部で彼女は愛されてはいましたが、その一方で、営業部ではとっても恐れられていました。
会社の財布のひもを握る大蔵大臣さまであり、怖い監視役でもあった訳ですから、
立場的には恐れられてもしかない部分もありました。
営業さんは業績をあげる、利益をあげるために、少々の無茶をしてしまうところがありがちだったので、
総務・経理側ではそれをチェックする必要があり、無茶を際限なく許すわけにもいかないことがあります。
かといって、締め付けすぎると、全体のモチベーションをさげてしまうことになったりしますので、
それはどこにもでもみられる経営のジレンマであったと言えるでしょう。
今、振り返ると、総務部長と営業部長の衝突も必要なものだったとわかります。
そうして、皆をひっぱるリーダーの方たちの責任やプレッシャーは相当だったのでしょう。
なぜか、総務部長は私をお昼に連れていってくれて、
時々、一番下っ端の私にグチをたくさんこぼされていました。
あまりにも、立場が違う分、私に言いやすかったところもあったのかもしれません。
ところで、そんな総務部部長には、ぼけてしまったお母様がおり、
その介護の苦労話をよくされることがありました。
お仕事のプレッシャーには強い部長も、介護のプレッシャーは相当きつかったようです。
ある時、部長に、
「私もいつか母みたいにぼけてしまったら、その頃は会社を退職してても、
 それすら忘れて、また出社して、机に座ってしまうかもよ〜。そしたらどうする?」
と笑って質問されたことがありました。
その時、私は、
「大丈夫です。
たぶん、私は若いからまだ働いてますから、ちゃんと隅に机を用意して、
 部長、お机はここですからね〜。ここで仕事してください〜って、座らせて面倒みますよ〜」
と笑って答えました。
すると部長がにこにこされて、
「じゃあ、やっちゃんに任せて、安心ね〜」と微笑まれて、
その答えで、その場に一緒にいた同僚たちも、そうそうとうなづいて、大笑いしたのですが、
私は、半分冗談ながらも、部長が本気で自分の老後を心配されているんじゃないかな〜と、
ちらと思ったんですね。
なぜなら、以前に偶然一回だけ、私がただ老人ホームの話題にふれただけで、
「その話はやめてね!!」と、いきなり、厳しいお顔をされたことがあったからです。
いえ、それは厳しいお顔ではなく、その時の部長の表情は、本気で怯えていらっしゃってました。
営業に恐れられる、強いと思っていた方が見せた意外な一面だったので、
私にはものすごいインパクトがあり、それで覚えていたのです。
その時、上司もやっぱり1人の人間なんだな〜と思ったのも覚えています。
だから、私も部長のためにも、その会社で働き続けてあげたいな〜と思ってはいたのですが、
結局は、カウンセラーになりたいという夢をみつけてしまい、
私はその会社を部長よりも早くやめてしまうことになりました。
会社をやめる時に、何よりも先に、
“ああ、あの時の約束が果たせなくなってしまった・・・”と切なく思ったのを覚えてます。
部長ご自身はその時のことは忘れていらっしゃるし、
私の言葉を本気にあてにしていらしたとは思えないのですが、
なぜか私の方が勝手に覚えているんですよね〜。
私は彼女を尊敬してましたし、大好きでした。
会社をやめる数日前に、部長に大泣きして謝ってる夢をみて、目が覚めて、
一応部長とは赤の他人なんだけどな・・・と、自分でも、びっくりしたことがあります。
今はせめて、立派なカウンセラーになることで、
彼女が私に与えてくれたように、世の中にお返しができたらな〜と思ってます。
その後も、私は時々元気な姿をみせに会社に遊びにいきましたが、
いつも部長が笑顔で迎えてくださるので、嬉しく、はげまされてきました。
もう、部長も会社をおやめになっていますが、また彼女に経過報告しにいきたいと思ってます。

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