夏休みは、ごほうびの時間

7月も半ばを過ぎましたね。
これから夏休み!という方も多いのではないでしょうか。

私には、「夏休み」という言葉で浮かんでくる思い出があります。
それは数年前、私がうつ病になって仕事を休職して、1年半がたった頃のこと。

私が勤めていた職場は、規定で最長3年まで休職できました。
でも私は、
「復職まではだいたい半年、長くても1年も休んだら復職するもの」
というイメージを持っていたんですね。

なのに、もう1年半も休んじゃってる私。
とても焦っていました。

だけど復職を考えると気持ちがズーンと重たくなって、とても職場復帰できそうにありません。
じゃあ退職した方が良いのかなって考えてみても、それは勇気が出ない。
戻るのか?それとも辞めるのか?一体私はどうしたいんだ~!?と、毎日悩んでいました。

その頃の私はすでに心理学を学び始めていたので、講座を受けたときに、この悩みを講師に相談してみたんです。
先生は、こんなことを言ってくれました。
「この休職は、人生の夏休み。夏休みは楽しいことをして、自分にごほうびをいっぱいあげる期間だよ!思い切り遊びなさい。心が満たされると、前に進めるから」

さすが先生、良いことを言いますよね。

でもそのときの私は、「そんなこと言われたって、お金もないしなぁ……」と困ってしまいました。
いや、本当にないのは「お金」ではなくて、「遊ぶ気」だったんだと思います。
考えるべきことがありすぎて、ぜんぜん遊ぶ気分になんてならないのに~って感じ。

だけどそう思いながらも、先生の言葉がなぜだか心に引っかかりました。
なにが気になるんだろう?と、よくよく考えてみると、
「やるべきこともやっていない、こんな私が、楽しんで良いわけがない」っていう気持ちがあることに気がついたんです。

お金がないから。
うつ病で働けていないから。
休職して職場の仲間に負担をかけているから。
これからの進路に答えを出せてないから。
ついでに、夫が失業中だから。

だから、こんな私は遊んじゃいけない。楽しんだらダメ。
そんなふうに思っていたんですね。

たしかに、上に挙げた理由はぜんぶ本当のこと。
でも、だからといって「遊ぶ」「楽しむ」ということ自体を考えちゃいけないわけじゃないんですよね。
実際にできるかどうかはともかくとして、楽しいことを考えるくらい、しても良いと思いませんか?

あの頃の私が、どうして楽しんだらダメ!って思っていたのか、今ならその理由がわかります。

私は、1年以上も仕事しないで休んでいる自分のことを、「こんな私は間違っている」「こんな自分は悪い人間だ」って、めっちゃくちゃに責めていました。
自分のことを悪い人間だと思ったら、そんな自分にふさわしいのは、ごほうびじゃなくてズバリ、罰ですよね。
私は自分のことを裁き、囚人のように扱って、透明な監獄に入れてしまっていたんです。

でも先生が「いまは人生の夏休み、ごほうびだよ」って教えてくれました。
それはまるで、「なんでそんなとこに入ってるの?遊んでおいでよ!」って牢屋の扉を開けてくれたようなもの。
「私は悪い人間だから罰せられるにふさわしい」とションボリしていた私に、まったく新しいアイデアを吹き込んでくれたわけです。

それがきっかけになって、私は自分のことを囚人扱いしていたことに気がつきました。
そして「先生のお墨付きもあるし!!」と、牢屋から自分を解放してあげること、そして遊ぶことをちょっとだけ自分に許せたんですね。

それから少し後に、私たち夫婦は10日ほどの旅に出ました。

お互いにいくつかの予定をキャンセルして、出発2日前に夜行バスのチケットを取りました。
目的地は、奄美大島。その南側に位置する、加計呂麻(かけろま)島という小さな島。
前に写真かなにかで晴れ渡った海を見て、いつか行きたいな~って思っていた場所なんです。

私たちは東京からバスとローカル線を乗り継いで鹿児島まで行き、さらにフェリーで奄美を目指すことにしました。

そのときは台風が3つも九州に接近していて、大雨のためにところどころ電車がストップしていました。
鹿児島港から奄美大島へのフェリーも、天候によっては引き返すこともある条件付き運航。

電車が止まったことも、フェリーが目的地まで無事に行くかどうかわからなかったことも、もちろん不安ではありました。

でもね。
それでもこの旅の間、私はとてもとても楽しくて幸せだったんです。
どうやって目的地まで行こう?とか、今夜どこに泊まろう?とか、そんなことに夢中になって。
たまたま泊まった宿の温泉が最高だったりとか、暴風雨かと思いきや意外と晴れたり、フェリーと一緒にイルカが泳いでくれてすごーい!!って喜んだり。

気がついたら旅の間、仕事のことなんてキレイに忘れ去っていました。
なーんにも考えずに、海を見ながらただただ風に吹かれて。
気持ち良い、うれしい、楽しい、幸せ……!
そんなことをめいっぱい感じて、とっても贅沢な時間を過ごしました。

その旅で心から満たされて、じゃあその後すぐに前に進めたかというと、そんなこともなかったんですが(笑)

でも、実感したことが1つあるんです。
それは、
「1日を悩んで過ごしても、楽しんで過ごしても、同じ1日」
ということ。
どうせなら、楽しい日々を積み重ねた方が気持ちも軽やかですよね。

私たちはなにか問題が起きたときに、ついつい「これはなんの罰だろう?」と考えてしまうものです。
もっと言うと、まだ何も問題が起きていないのに「悪いことが起きたらどうしよう?」と考えて落ち込んでしまうこともありませんか?
だけど実は、罰を受けなきゃいけないほど悪いことなんて、私たちはなにもしていないのかもしれません。

夏休みは、いっぱい楽しんで自分にごほうびをあげる時間。
みなさんが、思い切りごほうびを受け取れることを、心から願っています。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

職場の人間関係をきっかけにうつ病になった経験を持つ。夫婦関係を見つめ直し心身ともに回復してきたことから「彼との距離が遠い」「人に頼れない」など恋愛・人間関係のご相談を得意とする。なんでも話せる安心感と、深い共感力に定評がある。クライアントの魅力や才能を引き出すことを大切にしている。