編み物がおしえてくれたこと~ネガティブな自分でも大丈夫!

編み物が好きな私にとって、秋は「なにか編みたいな~」とニット熱が高まってくる季節です。

自分用に靴下を編んだり、友人に頼まれてセーターや帽子を編んだり。
ハンドウォーマーのようなちょっとしたものをプレゼントにしたり。

毛糸も様々、編み方もいろいろで無限に遊べるところに果てしなさを感じながらも、ついつい「この毛糸で何を編もうかな」って考えるのが楽しくて、時間を忘れて編んでしまいます。

編み物は子どもの頃から好きだったんですが、手の遅い私にとって、1つの作品を編むのには時間がとてもかかるし、集中力も必要です。
だから大人になって仕事に就いて、ほぼ毎日残業のハードワークをするようになった頃には、やりたくても手をだせない趣味になっていました。

また編み物をはじめるきっかけになったのは、8年ほど前にうつ病になったことでした。

思い返すと、当時の私の心はめちゃくちゃな状態でした。
仕事に行けない。行こうとするとお腹を壊す。
仕事に行けないから、遊びに行くこともはばかられる。
そもそも毎日心がズーンと重たくて体が動かない。
でもエネルギーはあるから、グルグルぐるぐる延々と悩み続けていました。

考えることといえば、不安、心配、これからどうなるのか? ということばかり。
「ぜんぜん出勤できなくて、職場に迷惑をかけてしまっている」
「なんの役にも立たない私は、みんなから嫌われてしまう」
「こんな重たい私は、夫にも友人にも愛想を尽かされるんじゃないか」
「暗くて後ろ向きな自分は、ただ甘えてるだけなんじゃないか」

自分を責めては落ち込み、テレビを見ても笑えないし、本を読んでも文字が頭に入ってこない。
そして疲れ果てて寝落ちして、起きると「昼寝なんかしてる自分は怠け者でダメだ」と自分を責める……という、ふるえるほどスパルタな日々でした。

ただ、ラッキーだったのは、そんな状態がはじまったのがたまたま秋だったんです。

グルグルぐるぐる悩んでいるのだけど、仕事に行けなくなって家に引きこもることが増えたから、時間だけはありました。
私は「どうせ何もできないんだったら、この時間でニットでも編もう」と思ったんですね。

編み物は久しぶりなので、まっすぐ編めば出来上がるマフラーにとりかかることにしました。

起きている間はずーっと自分にダメ出しをしながら、私は黙々と編みました。
クヨクヨしながらも、とにかくひたすら手を動かし続けました。

マフラーは、私が思っていたよりも早く編みあがりました。
ベビーアルパカのふわっとやわらかい毛糸で、淡い8色のストライプに編んだマフラー。
首に巻いていると、体温が毛糸に伝わって、じんわりと暖まってくるんです。

完成したマフラーを見たときに思ったこと。
それは、
「この子、とってもキレイでかわいいじゃないか……」
ということでした。

うつ病でどん底で、グルグルのドロドロに悩んでいる私のネガティブなエネルギーを100%注入して作ったものが、こんなにステキになるなんて……!
われながら意外で、とってもビックリしました。

このマフラーは夫にプレゼントしたんですが、「お~めっちゃ良いね」って喜んでくれて、今でも使ってくれています。

ずっと後になって、誰かに「怨念のこもったマフラーだね」って言われて、「そういえば、確かに!」と思ったことがありました(笑)
でも私はそう言われるまで、不思議と、怨念マフラーという発想に至らなかったんですね。

感情には本来、「良い感情」も「悪い感情」もありません。
それは、お天気の日と雨ふりの日、どっちが良くてどっちが悪いとは言えないのと同じだと思うんです。

だけど私たちはついつい、嬉しい・楽しいといったポジティブな感情は「良い」けど、悲しい・しんどい・怒りのようなネガティブな感情は「悪い」とジャッジしてしまいがちですよね。
そしてネガティブな感情を自分が嫌っている分だけ、自分のことを「悪い」もののようにとらえたりします。

もちろん私も、「ネガティブな私=悪」と全力で思っていました。

だけど完成したマフラーを前にしたとき、
「どんなにネガティブな感情も、クリエイティブに使うことができるんだ」
とおどろき、その発見が、私のドロドロした気持ちを少しだけ「良い」もののように思わせてくれました。

最悪にネガティブな思いを抱いている私でも、大丈夫。
その思いがあるから、できることがある。
そんなふうに感じられました。

それ以来、悶々と悩んだときには「こんなときは、編み物だ!」と遊ぶようになりました。
もちろん、良い気分で編むときもありますけど(笑)

今年の目標は、自分用にセーターを、そしてうつ病だった私とずっと一緒にいてくれた夫にも、ベストを編みたいなと思います。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

職場の人間関係をきっかけにうつ病になった経験を持つ。夫婦関係を見つめ直し心身ともに回復してきたことから「彼との距離が遠い」「人に頼れない」など恋愛・人間関係のご相談を得意とする。なんでも話せる安心感と、深い共感力に定評がある。クライアントの魅力や才能を引き出すことを大切にしている。