夏休みの宿題

「夏休みの宿題」

大人になるとなくなって、今では懐かしく思いだす言葉です。

皆さんは、最初に早く終わらせて残りのお休みを楽しむ派でしょうか?
それとも最後にやってしまう派だったでしょうか?

私は、早く終わらせて残りのお休みを楽しむ派でした。
でも、小学校低学年の頃はそうではありませんでした。
自分でもどれくらいの量が出ているのかを把握していなくて、最後にお母さんに怒られて、夜遅くまで手伝ってもらってやっと終わるような状況でした。

「あんなにしんどい思いをするなら、楽しいことも、好きなことも後にしよう」

そう思って早く終わらせる派になったのです。
それが夏休みの宿題のうちは、私にとっても周りにとっても良かったのです。
早く終わらせるとお母さんには褒められるし、「間に合わない」と手伝ってもらう羽目になり迷惑をかけることにもなりません。

けれど、大人になってから「楽しいことも、好きなことも後にしよう」が私にとって辛くなってしまった時期がありました。

ある仕事でチームのリーダーを任された時のことです。
その時の私は、自分の仕事もいっぱいいっぱいでした。
今思うといっぱいいっぱいの中で良くやっていた方だと思うのですが、当時は他のリーダーさんと比べて「仕事のできない私」をいっぱい責めていたのです。
なので、仕事が終わってからも「明日のチームの朝礼では何を言おう」「あの件は、明日どうしよう」と毎日のように、それこそ休みの日も考えていたんです。

でも、仕事が終わったんだからそんなにずっと仕事のことを本当は考えなくてもいいんですよね。
けれど、その時は自分を追い込んでいるつもりもなく、できないからそれくらいして当然のように思っていたんです。

そのうち、好きだった本も見たくなくなり、お休みの日は誰にも会いたくない、人と話す気力もないと感じることが多くなりました。
最後には体調を崩して、仕事自体もう続けられなくなっていたんです。
その頃には、「私、何やってるんだろう…」って毎日ずっと思っていました。

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「楽しいことも、好きなことも後」

そのルールは、子供の頃の私には自分が楽になるだけでなく、お母さんを楽にできる上に愛されると言う体験をさせてくれたものでした。
でも大人になって振り帰ってみると、夏休みの宿題って毎日コツコツと自分の好きなことや遊んで楽しい時間を過ごしながらやっても良かったんですよね。

私達の中には、こんなふうに子供の頃の体験を通して作られた観念と呼ばれるルールがたくさんあります。
それは、子供の頃には親に愛されるためだったり、親を愛するためにとっても効果的でした。

でも、大人になるにつれてどうしても「そのやり方では無理」と言うことが出てきます。
そんな時は、そのルールを「手放し」と言う形で卒業すること、見直すことが必要になってくることがあります。

でも、頭ではわかっていても、すぐに「今を楽しもう」なんて気分にはなれませんでした。
だって、それで愛されてきたし、それが誰かを愛することになっていたのです。
自分に取って良いことだと感じていた分、自分がダメになってしまうようにも感じていました。

けれど、手放せないことで見えなかったものもたくさんあったことに後になって気付いたのです。

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それは、お仕事を辞める最後の日でした。
お母さんに一言、連絡をした時に「本当にお疲れ様だったね。何より体を大事にしてね」と言われたのです。

私としては、仕事を辞めてしまって怒られるんじゃないかと思っていました。
その後、しばらくの間は新しい仕事を探す気力もなかったのですが、両親からも友達からも「早く仕事見つけなさい」なんてことは言われなかったのです。

むしろ、「もっとゆっくりしなよ」「好きなことを大事にしてね」と言われる時間だったのです。
そして思い返せば、働いていた時も先輩に「話聞くから何でも言ってね」とご飯に誘われたり、後輩が仕事を手伝ってくれたりすることもあったんです。
きっと、周りの人は私がいっぱいいっぱいなことに気付いていて休む時間を作ってくれようとしていたのです。

仕事は夏休みの宿題じゃなから、本当は終わることなんてありません。
それなのに、私は「好きなことは後にするもの」と思いすぎるあまり、ずっとひとりでやらなきゃと抱え込んで、自分を責めていました。
そして、心の中で周りに「私ばっかりしんどい」って拗ねていたのです。
それは、自分でも気づかないうちに周りの人達も心配させたり、無力感いっぱいにしていたのかもしれません。
本当は一緒にやり方を皆で考えたり、誰かに話を聞いてもらったりすることで解決することも今思えばたくさんあったんですよね。

体調を崩してしまったのはしんどかったですが、それは私に「今を楽しむ」ことを選ばせてくれました。
それまでは「楽しいこと、好きなことは後」の選択しかなかったのに、どちらも選んでいいと思うようになれたのです。

どんな観念も、本当は最初は周りの人や自分を幸せにするために作られます。

子供の頃は早く終わらせることが、親にも私にとっても幸せだった夏休みの宿題。
それは大人になってから、もう一度、周りも自分も幸せにするために、「手放し」という形でもう一度私の前に来てくれたのでしょう。
あなたにも、今、全く別の形になって夏休みの宿題が来ているかもしれません。
それは、今はそう感じられないかもしれないけれど、新しいあなたと周りを幸せにするヒントを教えてくれようとしているかもしれませんね。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大麻 織江

お客様からは「話していて安心できる」「気持ちが落ち着く、整理できる」と定評がある。自身の過去のいじめから来る対人恐怖(男性恐怖)、過食症を克服した経験を持ち、繊細な感受性でお客様ひとりひとりの心に寄り添い、どんな時もお客様の魅力と光を見続けるカウンセリングを心情としている。