才能についての一考察 〜先天性と後天性〜

“才能”という言葉を皆さんはどのように捉えているでしょうか?
多くの人が、先天的に与えられる能力のみを“才能”だと思っているのではないかと思います。

私の友人に画家がいるのですが、どうしてうまく絵が描けるのかという話になったとき、彼曰く「人より残像が残る時間が長いみたいだ」と話していました。
それで対象となるものが細かく観察できるのだそうです。
私たちは目で見た画像を実は脳で変換して認識します。
例えば、目で捉えるのは単純な平面画像ですが、その情報が脳に届くとある規則に従って立体として捉えるように変換します。
これは先天的に備わった脳の機能なのですね。
前出の画家の彼の脳には、残像が長く残る機能が備わっていて、これはおそらく彼が先天的に持っている才能なのでしょう。

心理学の一分野で、遺伝的な影響(先天性)か環境的な影響(後天性)かを調べる双生児研究という分野があります。
遺伝子が全く同じである一卵性双生児を比較することで、遺伝的要素が強いか、後天的要素が強いかを統計的に調べるのです。
その際、後天的な要素、すなわち生育環境や生活環境などによる要因を排除するために、例えば双生児の一人が親元に残り、もう一人が里子に出されたケースなども調べられています。
その結果、背の高さや顔立ち、空間認識能力などは遺伝的要素が強いとの結果が示されています。
先天的と言えば、スポーツの世界ではバスケットボールなど背の高い人の方が向いているスポーツがあったり、体操など逆に背の低い人の方が向いているスポーツがあったりします。
そういう意味では先天的な要素が向き不向きに影響することがあるのは確かだと思います。
しかしながら、背が高ければ誰しもがバスケットボールの名選手になれるわけではなく、背が低ければ誰しもが体操の名選手になれるわけではありません。
様々な遺伝的要素と、後天的要素が相まった結果として名選手は生まれるのではないでしょうか。

さて、スポーツ界では、一流選手には末っ子が多いという話を聞きます。
例えば、サッカー2013年の欧州遠征メンバー23人の兄弟構成を調べてみると、第一子の割合は約10%,第二子の割合は60%,第三子以降の割合は30%になっています。
また、末っ子の比率は60%です。
この結果から第一子の割合は低く、第二子以降の比率が高いことがわかります。
この理由については様々な分析がなされていますが、一流のアスリートや音楽家達からの聞き取り研究を行っている東北大学の北村勝朗名誉教授(現日本大学教授)がお話しされていたのは「兄や姉がスポーツ教室に行くときに親と一緒についていく。試合や発表会があると家族で応援に行く。その雰囲気が楽しくて同じスポーツや音楽を始めたという人がとても多くいます」とのことでした。
この“楽しい”がスポーツや音楽などを始める一つの動機となり、継続する力になっているようです。
しかし、やがて“楽しい”だけではない一流になるために乗り越えなければならない壁が現れます。
その壁を乗り越えるためには“何をやったか”“どれぐらいやったか”“どうやってやったか”が重要なファクターとなるとのことでした。
ちなみに第一子が一流の選手にならないことについて、前出の北村名誉教授は「親の期待がプレッシャーになったり、お手本が無くて要領がつかめなかったりすることが原因の一つとなっている」とお話しされていました。
これらのことから、“才能”とは、先天的な要因も影響はしますが、それのみではなく、後天的な要因も大きく影響していることがわかるのではないでしょうか。

では、私たちが自分の才能を開花させるためにはどのように考え、どのように行動すればいいのでしょうか。
人間は誰しも様々な素質(先天性)を持っています。
しかし、「私には何も素質がない」と思われている方も多いのではないでしょうか。
ところが、当たり前にできていることは既に素質があるという証です。
そうでなければ決して当たり前にはできません。
しかし自己評価が厳しいと、自身のそんな素質に気づけなかったり、あるいはその素質を過小評価したりしてしまいます。
これはもったいない話ですね。
また、今までに経験したことのないことの中にも未知の素質が隠れています。
何かのきっかけでその素質に触れるということもあります。

その素質を活かしてどのように才能を開花させるかは、先ずそれと取り組もうと決意することです。
そのためには、「自分がやりたくてやる」という気持ちが必要です。
先ずは、自分が楽しそうだと思うこと、自分が楽しいと思ってやってきたことをテーマにすると取り組み易いのではないでしょうか。
そして、“何をやったか”“どれぐらいやったか”“どうやってやったか”という先に述べた重要なファクターを意識しながら、時にはコーチやカウンセラー、先輩などにアドバイスを受けながら進めるとよいのではないでしょうか。

小さな種を蒔いて育てると、大きな樹になり、たわわに実った果実が得られます。
たった一粒の種からは想像もできなかったほどの実りです。
才能を開花させるとは、このようなプロセスを歩むことではないでしょうか。
最後に、前出の北村名誉教授曰く「“才能”は、好きになつて、夢中になつて、がんばって努力した結果、誰もが開花させることができるものである」

この記事を書いたカウンセラー

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大谷 常緑

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。