実家の片づけとメルカリ

親の住む家がモノでいっぱいで片づかない、実家のモノを捨てようとすると親とケンカになる、いわゆる「実家の片づけ問題」は、戦後モノがない時代に育った親を持つ世代を悩ませています。

高齢になった親がモノであふれる家で暮らすのは、転倒やケガの原因になるだけではなく、衛生上やゴミ屋敷化してご近所問題にならないかまで心配の種になります。
また、現実的には、モノを大量に遺して親が亡くなったら困るでしょう。

私はこの夏、実家を建て壊すことをきっかけに実家の片づけ問題を経験しました。
その話を書いてみようと思います。

●「捨てる」は敵

処分して片づけたい子供世代が「捨てよう!」と提案すると、親世代は「もったいない」「まだ使える」「買った時に高かった」と反対したり、「これは○○ちゃんが△△で買ってくれて…」と思い出を語り出して本題に戻れなくなったりしがちです。

親世代にとっては、「捨てる」「処分する」は拒絶を引き出すNGワードのようです。
このワードを言うと、逆にモノへの執着が強まってガンコになる傾向があります。

心情的には、理由があって保管してきたモノが自分自身と重なり、自分や自分の思いが雑に扱われているように感じるようです。
親世代も片づけが必要なのをわかっていないわけではありませんが、子供世代ほどは手放す決断と行動がしにくいのです。

モノを手放しやすくするには、気持ちの面でのケアがあるといいようです。

●モノより思い出

実家の片づけに取り組むために、私が一番先にしたのは「自分の思い通りにしたい」という私自身の期待を手放すことでした。
そして、私が大事にしたのは、目の前にあるモノに対する親の思いをうけとめること、親の価値観を否定せずに現実を知ってもらうことでした。

まずは、片づけたいモノについて、親なりの思い出を聞きながら、今はもう「使っていない」と確認を取ることからはじめました。

たとえば、子供たちの思い出の品など、「懐かしいね」と思い出にひとしきり共感して、「記念に写真に撮っておこうか」と撮影したら、親の方から「もう(手放しても)いいよね」と言えることもありました。

親自身のモノであれば、ひとしきり来歴と思い出ばなしを聞いてから、「今使っているものの方が便利じゃない?」「同じ用途のモノがあるから、どちらかひとつでいいんじゃない?」と確認を取ると、手放しOKになるモノも多かったです。

さみしさの分量だけモノをためこむ、不安をモノで埋めようとしているのだとしたら、片づけに必要なのは、自分の思いをうけとめてもらうことや、安心できるつながりを感じるコミュニケーションです。

こう書くと、「モノひとつ手放すのにどれだけの時間がかかるのか?」と気が遠くなるかもしれません。
実際は、片づけ始めは丁寧に話を聞いていくことが必要になりますが、親が片づけることの気持ちよさを感じられるようになったり、たくさん話して「全部について言わなくてもいい」と思えるようになったりしていきます。

親にとっては、モノの扱いを通して「自分は大事にされている」と感じられることが重要なのです。

そして、片づけ成功のポイントは、親が手放しに同意したら、その場ですぐにゴミ袋に入れるなど、片づけてしまうことです。
目に見える状態で置いておくと、また見返しだして最初からやり直しになりかねません。
そして、老親の体力では処分するために運搬するのが一苦労です。
可能なら、運び出しまで子供世代でするとスムーズです。

●メルカリ大作戦

「使っていない」ことを認められるようになると、捨てるのはイヤだけど「誰か欲しい人がいればゆずってもいい」と思うようになります。

まずは、親の知り合いで譲りたい人がいるかを聞き、すぐにアポを取ってもらって、その人たちにモノを渡していきます。
喜んで受け取ってもらえれば、親は満足します。
また、「うちにも同じようなものがあるから」「置くところがないから」など、需要がないモノだと体験してもらうことも大事です。

ひととおり知り合いに譲り終わったら、オークションサイトの出番です。

親が譲りたがっているモノの取引相場を、オークションサイトで検索して値段を伝えます。
「あの頃は高かったかもしれないけれど、もう○年以上も経ったしね」と投げかけ、親が気持ちを消化するのを待ちます。

同時進行で、メルカリやヤフオクなども使います。
親世代が自分で手配するのは不可能と思っておき、子世代が代わりに手配します。
できるだけ親の見ているところで作業するのをおススメします。

私はメルカリを使って、品物の写真撮影・採寸・商品説明の入力・値引き交渉・商品の梱包と発送をすべて親の目の前でしました。
モノひとつを誰かに譲るのに「これだけ手間がかかる」というのをリアルに見てもらうためです。
作業段階を説明しながら、いくらの値段がついたのかなども細かく話しました。
時には「そんな安い値段で売ったのか!」と親から文句を言われて凹むこともありましたが、それでもめげずに出品を続けました。

●実家の片づけ最終章

我が家の場合は建て壊しだったので、「○日までに売れなかったら出品を取り消す」と期限を決めて出品しました。そして期限が来たら、売れなかったモノは親同伴でリサイクルショップに持ち込みました。

リサイクルショップでの買い取りは、自分で出品するよりも値段が安い場合がほとんどです。
親の望み通りではありませんが、親の知り合いにはもう欲しい人がいませんし、私がメルカリ出品した手間と値段とを身近で見てきたので、「出品の手間の分は安く買われても仕方がない」と親が納得して手放すことができました。

親世代は自分ひとりでは動けないし、世間の相場の調べ方もわからない、だから片づかないというケースもあります。
「できない」「わからない」と、今に不満でも人は現状維持を選びます。

実家を片づけるには、親が手放しを決断できるように、現実をうけいれるための材料をそろえるとか、自分では行動しにくい親をサポートして一緒に行動するなどの支援ができるといいようです。
私の場合は、親に決断と行動を求める前に、自分の決断と行動が必要だったと実感しました。

そして、実家のモノを片づけるのは、親と家についての自分の思いを整理する過程にもなりました。
親と同居していない私にとっては、親の老いをうけいれていく時間でもありました。
ケンカもしながらでしたが、親が存命中にこの時間が持ててよかったと思っています。

片づけを終えた日に、実家のモノを売ったお金をまとめて親に渡しました。
文句ばかり言っていた親の口から出た言葉は「あんたのおかげで片づいた。ありがとう。」でした。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大塚 統子

自己嫌悪セラピスト。心理学ワークショップ講師(東京・仙台) 「自分が嫌い」「自分はダメ」「私は愛されない」などの自己否定、ネガティブな感情・思考をリニューアルし、自信や才能・希望へと変換していく職人。生きづらい人の心が楽になる気づきや癒しを提供。テレビ・Web記事の取材にも多数協力。