愛は時を超える

愛って一体、なんなのでしょうか?
これは、私が心の世界を学んだり、カウンセラーになる以前の出来事を、最近になって想い出した時のお話です。

私は10代の頃から父との関係があまり良くなく、父の実家に行くのも好きではなかった子供でした。
父の実家にまつわる親戚たち=父、というように感じていて、父のことが好きになれない私は、父の実家も丸ごと全部が嫌いでした。
親戚達と同じ場所にいることがとても苦痛だったんですね。

私の父方は神社仏閣関係の一族で、父はお寺の跡取り息子だったのですが、私の母と結婚する前に一度離婚しています。
何十年も昔の田舎でお寺の跡取りが離婚したとなると、その地域では世間体が悪くなってしまいます。
結果的に父は実家を出ることになり、ずいぶん経った後、私の母とお見合い結婚しました。
そして私の母は、父の母や親戚たちからあまり良く思われていませんでした。
再婚相手の女性というのは、昔の田舎ではとても肩身が狭い存在だったということが大きく関係していたと思います。
そんな経緯があり、私は自分の父や父方の親族を好きになれませんでしたし、私自身も母と同じように疎まれる存在だと感じていました。
そして、成長するにつれて父方の親族とは疎遠になりました。
 

話は変わりますが、数年前、私の兄に息子が誕生しました。
その甥っ子は小さい時の私にソックリで、それがとても嬉しかったです。
私の両親も大喜びでした。
そんな時、孫の写真をみて私の母が言った言葉があります。
「この子はゆりこにソックリだけど、亡くなったお義父さんにもそっくりよ」

私の父方の祖父は大正生まれで、私が生まれる前年に他界しており、私にとって存在に実感がない人でした。

そんな人に(しかも男性)に私が似ている??

実感のない「父方の祖父」という存在が、急に自分の間近に迫ってきたような感覚を覚えました。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、母が思い出したように父方の祖父の話を続けました。
「ゆりこのお兄ちゃんが生まれて、お義父さんが入院している病院へ見せに行った時ね、お義父さんがすごく嬉しそうに“この子が大きくなったら寺を継がせたいなぁ。この子は徳が高い子だ”って言ったの。」

私は「へーそんなことがあったんだね」と、母になんとなく返ことを返すと、母は
「それからこんなことも言ってたよ。“女の子が生まれたら、その子はお寺へお嫁にやって欲しい。その子は心が優しい子だから”って。」

その話を聞いた瞬間、私は雷に打たれたような衝撃を感じました。
なんだか涙が溢れてきそうで、私は慌てて母に
「そんなこと言ってたんだ」と返すと母は
「お義父さんは、生まれてくるゆりこがどんな子か分かっていたのかもねぇ。人望があって尊敬されていた住職さんだったから。」

その時、私は母になんと返したか覚えていないのですが、心に感じる衝撃をじんじんと感じていたのはよく覚えています。
 

最近になってふと、その出来事を思い出す時がありました。

人は、「自分は○○には愛されていない」と信じている時、意識の上では“特定の誰か”から愛されていないと思っています(当たり前ですね)。

ですがその時、心の世界では「自分は愛されるに値しない存在」だと、自分自身を解釈している状態になってしまっているんです。
そうなると私たちは、「きっと私はあの人からも、あの人からも、愛される訳がない」と、“特定の誰か”以外からも愛されないんだと、無意識に思い込んでしまうようになります。

そして心がそんな状態になっていると、「愛される自分」というものを、なかかな受け取りにくくなってしまうんですね。
それはとっても切ないことだなぁと思います。
 

これを私の経験に当てはめてみると、私は無意識のうちにずっと長い間、自分が生まれる前に亡くなった祖父を、「きっと私を疎んでいるだろうと私が信じる」親戚達と同じような存在として、扱っていたんです。

そして、そんな風に決めつけていた存在が、まさか私が生まれる前に私のことを想っていてくれたなんて想像も出来なかったし、あり得ないことでした。

生まれる前に亡くなった人の自分への想いを感じるって、不思議ですよね。
今振り返ってみると、祖父が私の母に話した話は、僧侶だった祖父の願いでもあったのかなと感じます。

母から話を聞いた当時は、自分の感じた衝撃に戸惑いました。
そして今振り返って感じるのは、あの時の衝撃は、祖父の愛を感じたことへの衝撃だったんだなということです。

「愛は時を超える」

そんな言葉が心に浮かびました。

会ったこともない、話したことも名前を呼んだこともない、実は写真も見たことがない祖父だけれど。
祖父の愛を、受け取ろうと思います。

おじいちゃん、ありがとー!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

結喜 ゆりこ

大学卒業後マーケティングリサーチ職で様々な業界に携わる。 長期間のハードワークで体調を崩し、30歳を過ぎた頃から日々漠然とした焦燥感に襲われるようになる。そんな時、知人の言葉がきっかけで10代の頃から興味のあった心理学を学び始め、現在はカウンセラーとして活動中。転職経験あり。