プライドの心理学(4) ~「誇り」をもつためにできること~

もう一度誇らしいと思える私であるために

強固なネガティヴ・プライドで守られた心は、傷つくことを怖れ、人とのつながりを拒絶します。このようなネガティヴ・プライドを手放す方法について解説します。「傷ついた経験」から何を学び、心を強くしなやかにするか、がポイントです。

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さて、今回の連載シリーズの最後はネガティブ・プライドを癒やし、手放す方法について解説します。

○傷は優しさに変えられる

僕たちは人生の中で本当に辛いと感じるような経験をすることがあります。

例えば、大きな失恋、離婚、失職、挫折・失敗など。

確かにこのような経験は、僕たちの心に傷を作るものです。

ただ、私達の学ぶ心理学では「傷は優しさに変えられる」といいます。

自分が傷ついた経験を自分の中だけで抱えていると、ほとんど役に立ちません。自分の内面で、再度傷つく恐れや不安を煽るものになるでしょう。

しかし、その傷を通じて、人を理解し、優しさを向けることができるとしたら、それは人を喜ばせ、自分自身を更に肯定する材料になることでしょう。

ネガティブ・プライドを作る心の傷を、優しさや学びとして使うか、自分が抱える傷として抱え込むか。

私達はどちらも自由に選べるというわけです。

 

○傷ついていることを自覚する

しかし私達は「自分が傷ついている」と気づきたくないものです。

「私はこんなに傷ついている」と、一つの被害者意識としては表現されることもありますが、多くの場合、傷ついた自分を恥じていたり、弱い存在だと捉えることが多く、その自分を否認している場合はとても多いものです。

だからこそ、ネガティヴ・プライドを手放し、真の誇りを手に入れるための緒は、「自分が傷ついていることに気づく」ことです。

傷つくことでときに辛い感情を伴いますが、しかしそれ自体恥ずべきことではありません。誰かを愛したり、何かしらのチャレンジしなければ傷つくことはないでしょうから。

だから、ここではいつも以上に謙虚に、丁寧に「自分」と向き合ってみるといいでしょう。

第3回目でご紹介した女性のケースも、自分自身が対人関係の中で深く傷ついて、ネガティブ・プライドを強くしていたことに気づけなかったわけです。その傷に気づき、受け容れ、その傷を通じて人を理解することができると人望も得られたかもしれません。

が、これ以上傷つかないために「どうして部下は私を理解しないのか」と、被害者意識を持ち続けたため、うまくいかない状況を導いてしまったというわけです。

他の事例をあげますと、例えば「仕事や結婚生活などに喜びを感じられなくなった」という場合。

ある女性は、今のご主人はいい人だけど退屈で、いつも他の男性と関係を持っていた。
ある男性は、今の仕事に情熱を傾けられず、退屈な毎日に不満を持っていた。

ここでは結婚生活や仕事が「つまらない」と感じているわけですが、そもそもなぜ「つまらない」と感じる対象と向き合っているのか、なぜ「つまらない現実が必要なのか」と考えていくことが自分と向き合うことになります。

すると、「好き」「大切」「失いたくない」と感じる対象と向き合うことが怖い、と感じているケースは意外と多いものです。

大切なものを失って傷つくぐらいなら、興味を持たないようにする。
興味がないものは愛せないから、自分は十分に仕事やパートナーと向き合えていないと罪悪感を感じる。
それは避けたいから「つまらない」が必要になる、といった感じですね。

しかし、多くの場合「夫がつまらない」「仕事がつまらない」と認識されることが圧倒的です。だから、なかなか自分の本当の感情と向き合えず、今のの状況を変えられずに悩み続ける場合も多いです。

「もし、自分がこの状況を必要としているとしたら、それはなぜだろう」

このように「自分のこと」として謙虚に向き合うことで、現実を変容させるきっかけを掴んでいくことができます。

 

○傷ついた自分の事情や感情を理解する

ネガティヴ・プライドは、自分が傷ついた分だけどうしても強くなるものです。

だからこそ、自分自身の過去、プロセスを見つめ直し、そこにある感情を癒していくことが手放しのプロセスです。

本当に辛い経験を味わったなら、そのとき自分がとった行動を後悔するよりは、その時の自分の気持ちを理解してみることです。

自分自身がそうせざるを得なかった選択だってあったかもしれません。
自分なりの思いもそこにあったかもしれません。
誰かを思って真剣だった自分もいたかもしれません。
思うように事が進まず傷ついた自分もいるかもしれません。

そこで辛い気持ちがあるなら、それを否定せず辛かったんだ、と受け入れていくことです。
悲しい気持ちがあるなら、悲しみを。悔しかったのであれば、悔しさを受け入れていくことです。

ここでは無理のない程度で行うことが大切ですね。無理に感じようとすることもリスクになる場合があるので、今、できるだけ感じて丁寧に受け容れていきます。

しかし、僕たちは傷ついた分だけ、このような本当の気持ちを否定したくなるものです。

たとえば「ガチで頑張ってた自分なんてダサい」「熱くなってた自分が恥ずかしい」「何も知らなかった自分が情けない」「自分のチャレンジは大したことではなかった」「そんなに本気で愛していたわけではなかった」などと扱い、処理しようとします。

これこそ「強がり」だと思いませんか。
そして自分自身を否定していることにお気づきでしょうか。

ついそうしてしまうのが僕たちの心の反応なのです。

ただ、心の傷は否定で癒やされるわけではありません。

自分なりに努力したこと。
自分なりに誰かを思っていたこと。
自分なりに愛したこと。

こういった前向きな思いが心の傷の影響から解放されることは、ネガティブ・プライドを手放すプロセスではとても大きな意味を持ちます。

「もう二度とあんな思いはしたくないと」いう思いの向う側にある、本当の自分の気持ちに気づき受け容れることで、更に自分の価値や愛に近づいていくことができます。

そこを感じ、受け容れ、そして許してみてください。

 

○成長のチャンスととらえよう

ある経営者は「困難な状況に陥ると、また一つタフになれたと考えるようにしている」とおっしゃっていました。

「タフ」という言葉は確かに男性的ですが、たしかにこの考え方は参考になりますよね。

あなたなりの感覚・思い・言葉でいいんです。

自分が傷ついたと思う経験から、あなたは何を受け容れ、学びたいと思うでしょうか。

また一つ「愛や優しさ」を学べた、でもいいんです。

「人の辛さ」がわかるようになった、でもいい。

あの経験が人を理解し、自分の愛や能力になったと思えるなら、それはとても深い学びですよね。

すると、今まで抱えた傷は人を愛し理解するツールに変化しますから、自然とネガティブ・プライドを強くする必要はなくなり、やがては不要のものになるでしょう。

その結果、自分自身も自由を感じられ、その才能や経験ももっと活かせるようになれます。

そこでは「どんな状況でも自分らしくいられる私」と出会えます。

ここで感じられるものが、ポジティブ・プライド(誇り)であり、揺るがない自信です。

「そんな自分になりたい」と思われるなら、まず自分の「今」を知り、受け容れることから始めてみてはいかがでしょうか。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

浅野 寿和

年間400件以上の面談カウンセリングを行う実践派。「男女関係向上・男性心理分析」「自信・自己価値向上」に独特の強みをもち、ビジネス・ライフワーク発見なども対応。明快・明晰かつ、ユーモアと温かさを忘れない屈託のないカウンセリングは「一度利用するとクセになる」と評され、お客様の笑顔が絶えない。