セックスレスの心理

多くのカップルが一度ははまる「セックスレス」の罠。その裏にはこんな心理模様があるんです。

セックスというのはパートナーシップにおいては、とても大切な位置を占めますね。
単に性欲の処理という意味以上のものをたくさん含んでいます。
心理学的に見ればセックスとはお互いの親密感の象徴ですから、セックスの問題はそのまま二人の親密感に関する問題となります。

実は夫婦の問題でカウンセリングを受けられる方の多くがセックスに関する問題を内包していたりします。表面上は別のこと(浮気、お金、子育て、仕事等)であっても。
結婚していなくてもある程度期間を経たカップルもやはりこの問題が出てくるケースもたくさんありますね。
今日はそんなセックスに関する問題で、もっともメジャーな「セックスレス」に関する問題を扱ってみたいと思います。


夫婦関係の状態をチェックする一番手っ取り早い方法が「セックスには満足していますか?」という質問だったりします。それくらい夫婦関係にとっては大切なアクションなのですが、それが無いということは、それ自体がもう既に問題と思っても差し支えありません。

例え今の状況に自分が満足していたとしても、心理的には何かしら二人の間に「正常ではない」状況として捉える方がいいのかもしれません。今は特に目立った問題にならなくても、将来的に「浮気」「離婚」などの大きな問題を引き起こす要因ともなりますから、注意が必要ですね。
もちろん、夫婦の形も今は多様化していますから、お互いに問題と感じていないのであれば急ぎ扱う必要はないかもしれませんが・・・。

セックスレスに至る道は本当にたくさんあって、カウンセリングに来られるカップルそれぞれが特有なので、一概にまとめることはできませんが、その中でも多くの場面で見られるケースとその対策を二つばかりご紹介しましょう。

家族のような、親子のような、兄妹・姉弟のような・・・近すぎる距離感

セックスレスの問題で一番大きな原因が、パートナーをパートナーという目で見られなくなってしまうことです。まるで自分の親のような子どものような、兄弟姉妹のように感じてしまうんです。

結婚当初はとてもラブラブで、人も羨むカップルで、お互い大好きで、いつも一緒にいて・・・というようなカップルが一番陥りやすいケースです。
というのも、このケースは潜在的な癒着の問題から起こることが一番多いからです(参照:癒着の心理学)。

自分自身が両親との関係で、十分に愛情をもらっていないと感じている分だけ「愛されたい」欲求が強まります。しかもそれは「父親」なり「母親」からの「特別な」愛情だったりします。そこでパートナーを手に入れるとついパートナーにその役割を求め、満たされない両親からの愛情をパートナーから補おうとします。僕たちはみんな意識的に「愛されてる」と思っていても、やっぱり「もっと愛して欲しい」と思うものですから、多かれ少なかれ、ほとんどのカップルが通る道かもしれません。

このケースにはまる最も多いパターンはお子さんが産まれてからですね。子どもが産まれると旦那さんは父親に、奥さんは母親になるわけです。母は強しで、子どもの世話に没頭していると、奥さんの側としては「妻」の顔ができなくなり、旦那さんとしては、奥さんを「妻」として見られなくなってしまいます。もちろん、この逆もまた真なりで、奥さんは旦那さんを「パパ」と呼ぶようになったりします。そうすると、まるでお互いが自分の父親・母親のように感じてしまうわけです。

そうすると仲はいいんだけど、男と女ではなくなってしまいますから、自然とセックスがタブーになります。だって、意識レベルでは夫婦でも、感覚的には親子なわけですから、夫婦のセックスが近親相姦のように感じられてしまうわけですね。

これのすべてが悪いわけでもなく、仲のいいパパとママですから、その点はむしろ素敵なことといえるでしょう。ただ、常にパパとママで居続けていると夫婦として向き合えなくなってしまいますから、長期的な問題に発展していくケースが多くあります。

で、どうしたらいいのか?(傾向と対策)
どうしてこうなってしまうかというと、これは人の心理的な距離感が影響していると言えます。この基準は人それぞれで、その感じ方も夫婦間でも違うくらいです。

僕たちは例えば「赤の他人の距離」「知り合いの距離」「友達の距離」「恋人の距離」「夫婦の距離」「家族の距離」などの「距離」をみんな持っています。
夫婦になる遥か以前は「他人」からスタートし、徐々に関係が近づいてめでたく「夫婦」になるわけですが、ここでお互いの両親との関係や子どもが産まれてからの新しい関係で、さらに「家族」にまで近づいてしまったとします。そうすると、先に述べたように近親相姦のようにセックスを捉えてしまい、セックスに嫌悪感・違和感を感じるようになります。

実はこの距離というのは「点」ではなく「線」であるのがここを抜けるカギになります。
正常な関係であれば、自然と家族の距離、夫婦の距離、恋人の距離、(そして、たまには他人の距離(^^;)とフレキシブルに距離が伸び縮みします。これは常に二人の関係を新鮮に保っておくコツで、マンネリに陥らない効果的な方法です。
でも、自分の家族との未消化の問題があって癒着のパターンを持っていたとすると、この距離が固定化してしまいます。そうするとその点で関係がマンネリ化しますから、その先にセックスレスという状態が生まれてしまうわけです。

家族もいいけど、少し距離を感じられる恋人に戻るのはとても刺激的なことですね。
具体的には、二人の時間を持つようにお互いがベストを尽くすことです。仕事や育児を言い訳にせず、相手を大切にするためにね。
例えば、休日や旦那さんの仕事が終わった後に待ち合わせをして食事に行く、とか、食事が無理ならお茶だけでもいいですよ。出来れば一日二人で居て、ホテルや温泉でのんびり一泊するのも素敵なことです。お子さんがいらっしゃるとなかなかそんな時間を作ったり、経済的な余裕もなかったりするかもしれませんが、そこはベストを尽くしてみてください。

とある夫婦(めおと)漫才師さんは毎月22日を夫婦の日と決めて、できるだけ二人で過ごすそうです。これはとても素敵なことで、自分たちの関係は元より、お子さんの自立を手助けする効果もあります。

不満、罪悪感、嫉妬、怒りなどなど・・・ネガティブな感情の支配

セックスレスの次なる大きな理由としては、相手に怒ってしまってる場合です。
これは表面的な怒り・不満・欲求などもありますが、多くは小さな不満が積み重なった場合が多いんですね。チリも積もれば・・・という奴です。

この場合は、触れられるだけでも嫌悪感がしたり、下手をすると一緒の部屋にいて空気を吸っているだけでも嫌気が差したりします。こそこそと逃げたくなったりね。
同時にパートナーに対して、何らかの罪悪感を感じている場合も同じようになりますね。罪悪感があるということは「自分は罰せられるべき」って思ってしまいますから、パートナーに近づけなくなって、背中を向けたくなります。

誰も不満を感じてる人には近づくことすらしたくありませんから、セックスなんてもっての他になってしまうわけです。
でも、そういうときに限って「夫婦なんだから・・・」と迫られて余計嫌悪感が高まってしまったり、夫婦って何?って考え出したり。

で、どうしたらいいのか?(傾向と対策)
このケースではお互いのコミュニケーション不足が一番の原因かもしれません。
それゆえか、また、自分にも引け目があるのか、夫婦が向き合えなくなってしまっているようです。目を合わせられなかったり、会話もなかったり。いわゆる「冷え切って」しまうことも多いでしょう。

きっかけはパートナーの些細なクセを「イヤだなあ」と思っても我慢してしまったことかもしれません。あるいは相手の態度にあんまり愛情を感じられなくて寂しくなってしまったのかもしれません。

でも、僕らは寂しさとか怒りとか悲しみとか、そういうネガティブな感情を感じたくありませんから、すぐに抑圧してしまいます。我慢したり、見なかったことにしたり。
それがどんどんチリのように心の中に溜まってしまって、自分でもびっくりするくらい大きな塊に育ってしまいます。
そしたら、その大きな感情を直視することは更にイヤな気分になりますので、その感情からは思わず目を逸らしてしまいます。と同時にその源泉となってるパートナーからも目を逸らしてしまうわけです。いわば、パートナーがネガティブな感情の象徴になってしまうわけですね。

ですから、まずは自分の心と向き合うことが先決です。
相手を責める、嫌う、無関心を装う前に、自分のそのときの気持ちを感じてみる。
それは溜めていればいるだけいやーな感じになるでしょう。

でも、それをまるでトイレ掃除をするかのように、キッチンのフィルターをキレイにするかのようにチャレンジしてみることが大切です。そうして、溜まっている感情をまずは解放してあげるのです。
そのネガティブな感情を自分が処理していくことで、ちょうど膜がはがれていくようにパートナーへの愛情を取り戻すことができます。

これはデッドゾーンに関するところでもありますので、なかなか自分一人では難しく、またパートナーも大抵は同じ状況にありますから、カウンセリングなどを使いながら根気強く関わっていくことをお勧めしています。


セックスに関する問題は多くのカップルにとってはなかなか複雑な問題となりますね。
特に僕たち日本人は性的な発達が遅いので、性的なことが社会的にも強いタブーになっています。
セックスについて、お互い本音で話し合えるカップルってどのくらいいらっしゃるんでしょうね。「えー?そんなことできないよ」と思われるかもしれませんが、それくらい深い話、タブーな話を向かい合って出来るほど、信頼関係が強いのかもしれません。

これからも折を見てカウンセリングの実例などを用いながら、セックスに関する講座をしていきたいと思います。

※セックスレスを扱った実例は“カウンセリングの実際”「セックスレスを克服する」「セックスレスを癒す」にてご紹介しています。
※また、根本のプロフィールページでは、雑誌向けに書き下ろしたセックスレスに関する記事を読むことができます。

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