藍染職人さん

先日、友人の誘いで京都大原へ藍染め体験に行ってきました。藍染めなんぞ、全く興味はなかったのですが、元々何かを手作りするのは好きだったこともあり「やってみたら面白いかも~」という軽いノリでお誘いにのってみたのです。

ちょうど紅葉の頃でしたので、京都の山間はとても美しい色を見せてくれました。藍染め体験の工房にたどり着くと、その玄関には真っ赤なもみじの木が一本ひっそりと顔をのぞかせました。

「こんにちは~」と声をかけると中学生くらいの男の子が出てきました。ちょっと待ってくださいね、と言われしばらく藍染め工房で待機させてもらいました。工房に入ると、まず、なんとも嗅いだことのない独特の香りが漂っていました。少し鼻にツンとくるような、ボールペンのインクに似たような感じですが、余韻は少し香ばしい香りでした。

しばらく待っていると、藍染めされた前掛けをつけた坊主頭でちょっと丸っこい体型の温和なご主人が「こんにちは、ようこそ」と出迎えてくれました。一目見て、職人さんなのにとてもオープンな人柄にホッとしました。

早速、染めたい生地を選ぶところから始まりました。私は自宅から白のシャツやカーディガンを持参したのですが、ポリエステル繊維や麻が使われており、藍染めには向かないとのことでした。そこで急遽、衣類を入れてきた白地で綿素材と思われるバッグを染めてみることにしました。それから、工房に準備してあった絹のストール生地も併せて藍染め体験することに決めました。

次に、どんな柄で染めたいか、ということを話しました。特に何も考えていなかったのですが、工房とは別の座敷に通されると、そこにはご主人の作品がずらりと並んでおり染めたい柄のイメージを思い浮かべることができました。

作品のイメージづくりをしている間、ご主人は藍染めのことを語ってくれました。藍染め体験をオープン工房(職人さんもお客さんも同じ工房を使う)にしているところは少ないこと、素人には藍の染料に手を触れさせない職人が多いこと、化学染料を使った藍染めがほとんどで自然のものだけを使うのはとても手間がかかること、藍は生きているから思うような色合いに染まるよう藍の状態を気にかけて世話をかけること、と私たちに教えてくれました。

その後、いよいよ藍染め体験へと進んでいきました。再び、あの独特な香りのする工房に入りました。マンホールのような大きく丸い木の蓋が四つありました。その下には地下2メートルほどある竈(かま)があるとのことで、木の蓋を開けるとあのツンとした強い香りがしました。

ご主人は、藍染めの原料となる藍の仕入れから藍竈での醗酵にいたるところまで一つ一つ丁寧に説明してくれました。藍が生きている、というのは、藍染めは藍を醗酵させたものを使うため醗酵の程度や期間により色合いが変わってくるという意味でした。ですから、季節によって醗酵の具合が変わらないよう温度管理を徹底したり、均等に醗酵するよう定期的に藍をかき混ぜたりして藍の状態に気を配っているとのことだったのです。

ここまで説明を受けてきた私はすっかり藍染めの魅力にハマってしまい、ご主人の話に食いついては質問し藍のことを一生懸命知ることになったのです。

藍染めは、竈に手を入れて生地に染料を含ませて絞り空気に触れさせ、また竈に手を入れて染料を含ませては絞り空気に触れさせるという作業の振り返りでした。90分ほどかけて丁寧に丁寧に染めあげた生地は天日干しさせて出来上がりました。

ご主人に記念撮影してもらったところ、インスタに載せてもいいか?ときかれました。あと、Facebookも、と言われ、どうぞお願いしますと答えました。
翌日、藍染め工房のホームページを確認してみると早速写真が載っていました。そこにはご主人のコメントもあり、こう書かれていました。

「凄く本藍の話を興味深く聞いて頂き丁寧に染めて頂きました」

私としてはそんなに興味深々でいたわけではないのですが、ご主人のお話を聞いているうちに藍染めに対する熱意を感じてつい聴きいってしまったわけなのです。

藍染職人さんの藍への熱意とともに、手間暇かけることの喜び、細やかな配慮があることをとても強く感じました。一つのことを突き詰める職人さんの在り方は私の気持ちにも大きな影響を与えてくれました。

心理学では「共鳴」という言葉があります。よく似た言葉に「共感」というものもあります。共鳴と共感は似て非なるもので、共鳴とは相手の感情の受け止めたうえで行動や感情の変化を伴うものであり、共感とは相手の感情の受け止めること(だけ)を指します。

本気の熱意は周りの人にも影響を与えるようです。もしかしたら皆さんの周りの身近な人にも何かに情熱を注いでいる姿をみたことがあるかもしれません。その人の伝えたい気持ちにふれたとき、伝わるものがあるんだろうと思います。今回の藍染め体験では、まさに、職人さんの感情が共鳴し私に伝わったうえでついつい話を聴き入ってしまったのだろうと思いました。私自身も強い熱意をもって誰かへの影響力となれる人になりたいものだなぁと思った体験でした。

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