お金の心理学

お金に関する問題というのはカウンセリングの中でも少なくありません。

お金に関する観念や感情を見ていくことで、お金とより良い関係を築いていくヒントをご紹介します。

カウンセリングで扱う問題には様々なジャンルの問題がありますが、その中で、お金が関係しているものが少なくありません。
お金がなくて欲しい物が買えないといったシンプルなものから、稼ぎが少ない、浪費してしまう、お金を貸した/借りた、パートナーのお金の使い方が気に入らない、遺産相続など、多種多様です。

「金の切れ目は縁の切れ目」という言葉もあるように、お金というのは対人関係とも密接に関係しています。

それでは、お金というのは、私達の心にどんな影響を及ぼしているのでしょうか?

●お金がもたらす問題

お金に関する問題の多くは「お金が足りない」「お金がない」というところに集約されます。

これを感情レベルで見てみると、不足感や飢餓感といった感情や感覚が問題になっている時に、現実の状況としてお金が絡んでくることが多いようです。

こうした不足感や飢餓感があると、その部分を埋めて満たしたいという欲求が芽生えます。その欲求を見たすのにお金は大活躍してくれるんですね。

お金があり過ぎることが問題になることもありますが、掘り下げていくと、そのお金を失うことや奪われることに関する不安や怖れが問題となっており、自分以外の人が持つ不足感や飢餓感が自分に向いた格好になります。

不足感や飢餓感というのは、程度の差はありますが、人ならば誰でも持っているといっていい感情なのですが、この感情が「奪う/奪われる」という争いを生み出す元となっています。
(満たされていると、「与える/受けとる」「分かち合う」という、争いではない形のやりとりができるようになります。)

このように、お金が引き起こす問題の根底には、不足感や飢餓感といった感情や、それを満たすための「奪う/奪われる」という争いがあります。

●お金は何の象徴?

お金というのはとても便利な道具で、1万円ならば、1万円分の価値のある食べ物や着る物やサービスなどと交換することができます。

欲しい物を手に入れる時に大活躍をしてくれる道具であり、お金の持つ万能性や価値というのは、人にとって大きな影響力を持っています。

例えば、「お金をたくさん持っている人が偉い」とか「お金をたくさん持っている人が幸せだ」などと、たくさん持てば持つほど、その影響は大きくなります。

このように、一般的には、お金というのは力の象徴となっていることが多いようです。

それゆえ、自分に力や価値がないと感じている人には、自分の力や価値の無さを埋め合わせるためにお金を持つことに対する執着が強くなったり、逆に、お金をたくさん持つと、自分が強くなったような感じで気が大きくなって、「金にものをいわせる」状態に陥ったりすることがあります。

それだけの力を持っているので問題の要因になりやすいのですが、お金はあくまで道具の一つなんですね。

例えば、お腹が空いて倒れそうな時に、食べ物自体がなかったり、食べ物を売っているお店がないと、1億円持っていたとしてもお腹を満たす事はできませんよね。
「俺は1億も持っているんだぞ!!」と泣いても叫んでも怒っても、お腹は減りこそすれ、満たされるということはありませんよね。
食べたことがないので正確なところはわかりませんが、おそらくお札を食べてもおいしくないでしょうし、栄養価も高くなさそうですよね(笑)

そんな性質を持った「お金」とどのように付き合っていけばいいのでしょうか?
いいお付き合いができるように、まずは、お金に対する観念について見てみましょう。

●お金に対する観念

お金に対してどんなイメージや観念を持っているのでしょうか?また、どのようにしてお金に対する観念は作られていくのでしょうか?

例えば、小さい頃に両親がお金のことでケンカをしていたり苦労していたりするのを見ていた経験があると、お金というのは、「大好きなお父さんやお母さんを苦しめたり、ケンカの原因になったりする悪い奴」になります。そして、「お金は人を苦しめるものだ」という観念ができます。
そうすると、お金=苦労になるので、無意識的に、できるだけ苦労(=お金)を側に置かないように遠ざけてしまったりします。
結果的には、現実の状況として「お金がない」状態を生み出してしまい不足感や飢餓感が強化されることにもつながります。

こうしたお金に対する観念や、その観念が元になった行動というのは無意識や潜在意識の領域で感じているものなので、普段は自覚することがほとんどありません。

お金が問題の中に入り込んできている時には、お金に対する観念をチェックして、今の自分に必要なかったり役に立たない観念は手放して、書き換える必要がある観念は書き換えていきましょう。

「私にとってお金とは○○だ」という文を20個ほど紙に書き出し、○○に入る言葉を探してみることでお金に対する観念をチェックできるでしょう。

●お金に対する感情

では次に、お金のことについて考えた時、どんな感情が出てくるでしょうか?

お金に関する問題を持っている人に聞いてみると、お金がないということで心細さを感じたり、淋しさを感じたり、惨めな感じがしたり、怒りや恨みや嫉妬を感じたりといった、ネガティブな感情が出てくることが多いようです。

お金が自分にとってネガティブな感情を感じさせるものであったとすると、思考レベルではお金が好きで欲しくても、感情レベルではお金を嫌います。
そうすると、嫌いなものというのはできるだけ遠ざけたくなりますので、やはり現実の状況として「お金がない」状態を生み出すことにつながります。

●お金に対する態度

お金に対してネガティブな感情を伴う観念があると、お金に対する態度がよくないものになってしまいます。

お金に対する態度というとわかりにくいかもしれないので、お金に諭吉君という名前と人格を与えてみましょう。

諭吉君に対して心の底では大好きだと感じているのですが、「いつも側にいてくれないから、諭吉君のことを思うと淋しかったり腹が立ってきたりするから、諭吉君なんて大嫌い」と嫌っていたり、「諭吉君のせいで私はこんなに辛い思いをしているのよ!」と責めていたり、「諭吉君と関わるとロクなことがないから、できるだけ関わらないようにしよう」と遠ざけてしまったり…

もし、あなたが、他の人からこのように扱われたとすると、どんな感じがして、どんな気分になるでしょう?

「大嫌い」と言われて悲しかったり、「あなたのせいよ!」と責められて申し訳ないという罪悪感で一杯になったり、自分をまるで疫病神のように扱われて淋しい思いをしたり、惨めな感じがしたり…

そんな気分を感じている時に、「その人に近づいてもっと仲良くしよう」とは思いにくいですよね。

諭吉君がいつもあなたのお財布の中にいないのは、ひょっとしたら、そんな気分だからなのかもしれませんね。

諭吉君をパートナーや親友のように大切に扱うことができると、諭吉君も喜んであなたの側にいたがるのかもしれません。

もちろん、諭吉君は実在しませんし、感情も持ち合わせてないんですけどね(笑)

諭吉君は実在しないのですが、実在する(していた)人の中で、この諭吉君と似たような接し方をしている人というのがいたりしませんか?

もし、そういう人がいたとしたら、その人との関わり方を変えることで、諭吉君との関わり方も変わってくるかもしれませんね。

逆に、諭吉君との関わり方を変えることで、その人との関わり方も変わってくるかもしれません。

そして、その誰かとの関わりを変えることで感じることが出来る感情、例えば、愛情や親密感といったものを十分に感じて満たされると、お金に対する必要以上の欲求や執着が消えたり、自分もまわりも気持ちのいいお金の使い方をできたりして、お金を巡る争いを減らすことができるかもしれません。

このように、「お金」にくっついている観念や感情、そして、「お金」に対する関わり方をチェックして、変えられるところは変えていくこと、そして、自分の心の中にある不足感や飢餓感、そこを満たしてくれる『本当に欲しいもの』に気づいていくことで、お金に関する問題をクリアする手がかりが見つかるでしょう。

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