不倫の心理2(2)~不完全性と親子関係~

不倫にはまり込んでしまう要因を心理学的に掘り下げてみます。

一つは自分自身の不完全性を恋愛で証明してしまう、というパターン。もう一つは異性の親(あるいは同性の親)から受けた影響について。どちらも、意識してやっていることというよりも、無意識・潜在意識に属する分野なのですが、そうした問題を通じて、自己愛や自己承認、さらには許し、手放しを学ぶことができるんです。

今回は不倫にはまってしまう深層心理について、2つの視点から掘り下げてみたいと思います。

●不完全性の投影

さて、もう少し心理的な面から見てみようと思います。
せっかく恋をしたのに、その彼には奥さんがいた・・・という話では「ニアピンだったねえ」なんて冗談めかして言うことがあります。「次は大丈夫かもね」とも。

相手にパートナーがいる人とはベストな関係とはいえませんよね。不釣合いというか、不完全性というか、バランスが崩れてしまうものです。

その関係性にはまってしまうのは、自分自身の内面にある“不完全性の投影”としてみることができます。
ベストでない自分、完璧ではない自分を証明するアプローチとして不倫関係に陥る、と見ることができるんです。

ちょっと難しいですね。
簡単にいえば「自分は完璧な人間ではないから、完璧ではない恋愛にはまってしまう」ということです。

感情としては、自己嫌悪や無価値感、罪悪感などが鍵になってきます。

でも、こんな感情、少なからずみんなが持ちますし、また、誰も完璧な人間などいないわけですから、誰もが不倫にはまってしまう可能性を持っているんです。
だから、不倫にはまって苦しんでいるとしても、少なくても心理学的にはその人を責めることはできません。
前回のお話からも伺えるように、不倫関係も不可避な問題として見つめることができます。

そもそも、私達の身に起こることで無駄なこと、無意味なものはありません。
またそれが社会的・倫理的には罪悪とされることだとしても、心理的には必要なことだってあるんですね。(それは本人、相手、そして、相手の奥さんも含めて)
つまり、そこから何を学ぶのか?は不倫でも、ふつうの恋愛でも同じ事なのです。

さて、このレベルではいかに本当の意味で自分を愛するのか?が一つのゴールとなります。

自分自身を心から愛すること。

それは私達みんなが持っているテーマでもありますね。

●異性の親との関係について

一方で、不倫の原因としては、異性の親からの愛情が不足しているから、というお話になることも多いことは事実です。

例えば、女性から見ると、「お父さんが仕事が忙しくて・・・」、「愛情をあまり示してくれなくて・・・」、「そもそも父親がいなくて・・・」、「父親がすごく暴力的で・・・」、「あまり遊んでもらった記憶がなくて・・・」といったお話を伺うことはすごく多いですね。

やはり、たとえ、お父さんの存在を知らなくても、心の中では父親からの愛情が不足していることをどこかで知っているのかもしれません。
だから、妻子がいる人に近づいたり、憧れを抱いたりして、そうして父親からの愛情を埋めようと(無意識に)動いてしまうように思えます。
パパに甘えたい気持ちはもちろん、大人の男性に安心して寄りかかれる大木を求めるのかもしれません。

(ただ、この心理。不倫だけに起こるとは限りません。不倫ではない恋愛でも、彼にお父さん役を求めて甘えすぎてしまい、重たくなって振られた・・・という話も少なくありませんよね。)

でもこれは「父」の代わりの「彼」なんですね。
だから、補償行為となってしまい、お父さんを求める心が満たされることはありません。
そうすると、心の穴を埋めるかのように、不倫から不倫へと連続することもよく起こるんです。

このレベルではお父さんとの関係を見つめなおすことが鍵になります。
少々困難を伴う作業になることも多いのですが、お父さんを許し、受け入れ、そして、その愛情を受け取る・・・このプロセスを軸に私達は見ていくことが多いです。

そして、お父さんとの繋がりを心の中で取り戻し、ほんとうはお父さんに愛されていたことを受け取り、そして、その結果沸きあがってくる深い安心感を感じたとき、まるで憑き物が取れたかのような気持ちになるものです。

(もちろん、お父さんを愛せないと幸せな恋愛ができない!ということはありません。それにいい恋愛を通じてお父さんとの問題を癒しきることもできるんです)

また、異性の親だけでなく、同性の親との関係も無視できないことがあります。
例えば、完璧なお母さん、すなわち“スーパーおかあちゃん”の下で育った女の子の場合、自分が母としてやっていける自信が持てなかったり、女性としての自分を認められなくなることがあります。
そうすると、先のこと(結婚・出産)を考えなくてもいい不倫関係にずぼっとはまってしまうことも少なくないようです。

この観点からは、自分の女性性を認めること(承認すること)、そして、完璧ではない自分を許すことがテーマになるでしょう。
また、お母さんをサポートすること、また、その愛をきちんと受け取ることにより、競争を手放すことができます。
そうすると、「自分なりにやっていけばいいんだ」と自信が持てるようになるので、結婚や子どもを持つことに対しても抵抗がだいぶ薄れてくるものです。

私達はカウンセリングやセラピーの中で、根っこを癒していくことを目指しています。
実が腐ったからといって、その枝を切ればいいわけではなく、幹や土壌にも目を向けていくことが大切なように、本質的な部分を掘り下げていきます。

今回の講座はまさにそんな「無意識」や「潜在意識」のお話でしたので、少々とっつきにくく、理解しにくいところがあったかもしれません。
でも、ぜひ、何度か読み直し、自分なりに考えてみていただきたいんですね。
その結果、必ず、気づきや心理的な影響を与えてくれるものと思っているんです。

>>>『不倫の心理2(3)~はまりやすく、抜け出しにくい理由~』へ続く

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