◇上司が教えてくれたこと

最近大統領選といい球団経営といいリーダーシップに関連した記事が新聞を
にぎわせましたね。
トップのやり方でその組織のカラーが決まるといっても過言ではありません。
リーダーシップといえば、私は職場の元上司のことが思い浮かびます。
以前彼と交わした会話で今でもずっと心に残っていることがあるんですね。
私が勤めていたところは女性が多い職場でしたが、同じ部署に私よりひとま
わり以上年上の男性の方が一人いらっしゃったんです。
仕事内容はほぼ一緒
でしたが、年功序列の給与体系のため彼のほうが給料がよかったのです。
ところが勤務中の態度といえば判断ミスが多く、注意されても改める素振り
もないし自ら学ぼうとする姿勢も見られません。
少し持て余す時間ができると仕事中に居眠りを始める始末。
チームワークの仕事なので、その分のフォローも必要だったわけです。
一緒に仕事をしているとイライラしていつも気分が悪くなっていました。
ある日私はブチ切れて上司に訴えました。
「同じ仕事していて、私の6割分しか働いていないあの人の尻拭いまでして、
向こうのほうが断然給料が高いというのは腑に落ちません!」
そのとき上司の返事はこうでした。
「若い人のほうが頭も回るし、仕事の処理も速い。
給料泥棒と言われても仕方ない。
あいつを見ていて確かに私も頭に来るときはある。
でもよく見てごらん。あいつなりに一生懸命やっているよ。
あなたから見たら60%の頑張りかもしれないけれど、
あいつ自身は100%の力を出してやっていると思うよ。
元々持っている能力に差があるのに、彼に対等さを求めるのは無理な話なん
じゃないね?」
へー、そうなんだ・・
そういえば、彼は仕事そのものは真剣な顔をしてやっているなあ・・
その時、自分のものさしで彼を見ていたことに初めて気が付いたんですね。
子供の頃から親に『相手の立場になって考えなさい』ということはよく言わ
れてきました。
けれども、今まで
自分の基準で相手の立場になる・・ことはしてきたけれど、
相手の基準で相手の立場になる・・ことはしてこなかったのかもしれないと
思いました。
自分の基準で考えると、
“私だったらこうするのに!”とか“私ならこんなに頑張るのに!”
という思いが強く出てきて、
“何でできないの!?”“何でしないの!?”
という言葉しか出てこないんですよね。
でも、相手の基準で考えると、
“もしかして一生懸命にやっているけど結果が出ないのかも・・”や
“自信がないからうまくできなくてサジ投げているのかも・・”など
相手を理解しようとする気持ちになるので、いろいろな見方が沸いてくるよ
うに思うんです。
しかし一方で能力の差だと言い切ってしまうのは、自分が出来る人間で彼は
出来ない人間だと相手を蔑んでしまうような気がして、その上司に再び尋ね
たんです。
「でも、能力に差があるのを認めるのは、人を見下げるような感じがして抵
抗があるんですが・・」
上司いわく、
「それはひとつの面でしか彼を見ていないからだと思うよ。
あいつは町内会長をしていて、町内行事は率先して引き受ける。
とても親孝行だし、嫁さんにはやさしい。
そこが彼の能力が一番出せるところかもしれない。
仕事をしているときは、持っている能力がたまたま発揮できていないだけよ。
誰にでも得意分野というのはあるわけで、あなたにだって当然苦手な分野は
あるやろ?」
あー、どこかに身を隠したい・・
とても狭い見方をしていた自分がとても恥ずかしくなりましたね。
誰でも才能って必ずあるんですよね。
自分の才能を得意とする分野で生かして使うことが大切なんですね。
それからその男性に対して腹を立てることがなくなったわけではありません
が、少なくとも気持ちに余裕を持って接することができるようになりました。
確かに仕事場というのは仕事をするところだし、その結果が求められる場所
だとは思います。
でもそれだけじゃないんですね。
自分自身を生きるとはどういうことなのか・・
人が助け合いながら生きるとはどういうことなのか・・
をその上司は教えてくれたように思います。
そんな上司に出会えたこと、そして彼の下で仕事ができたこと、今でもとて
も誇りに思っています。
ながのひろみ

この記事を書いたカウンセラー

About Author

ながの ひろみ

恋愛、人間関係、自己啓発、ビジネスなどのジャンルで、わかりやすい理論と感覚的なセンスを用いてアプローチしながら、優しく柔らかな雰囲気で包み込むカウンセラー。 ブレない安定感となごませる会話で「あるべき姿に気付かせてくれる」「いつもセンターに戻してくれる」と高い評価を得ている。