会社を辞めたいときの心の持ち方

会社を辞めるには理由には様々なものがあります。
上司や同僚との人間関係が悪い、仕事が面白くない、仕事が自分に合っていない、やりがいが無い、一生懸命頑張っているのに認めてもらえない、給料が安い、将来が見えない、過酷な労働による体調不良・・・。
また、会社の都合で辞めなければならない場合や、計画的にステップアップをするための転職もありますね。会社を辞めるには至っていないものの、会社を辞めたいなぁと1度や2度は思った経験をお持ちの方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

一方、会社を辞めるかどうか考えている時に、それを押しとどめようとする気持ちも出てきます。
次に勤める会社が決まっていない場合は、仕事が見つからないのではないかという不安や今よりいい条件の会社など無いのではないかという思い、転職してもまた同じような状況になるのではないかという不安、長続きしない自分を責める気持ち、私が辞めたら周りに迷惑がかかるのではないかという気持ちなど・・・。

ところで、私たちは何かの選択をするときに、往々にして既に結論が出ていて、それにマッチするように後で理由づけを行う場合があります。
心理学の実験で、アイカメラを付けた被験者に何枚かの異なる写真を同時に提示し、どの写真が気に入ったか決まったらボタンを押すという実験があります。この実験によれば、アイカメラによる視線の動きは、相当に早い時点で気に入った写真に集中し、暫くしてから被験者がボタンを押すという結果でした。
私たちが直観的に(感覚的に)結論を決めている一つの例かと思います。

さて、計画的なステップアップで会社を辞める場合はさておき、何らかの理由で自発的に会社を辞めたいと考えるときには、職場にいるときに感じる“嫌な感情”が原因です。
職場にいるときに感じる感情が楽しい感情ばかりであれば、辞めようとは考えないですね。
この嫌な感情を感じないために会社を辞めたいと思うのですが、それは時に直観的であり、後から理由づけを行う事が往々にしてあります。
会社を辞めるという決断は、場合によっては人生を大きく左右する決断になります。
後付けの理由によるのではなく、職場で自分がどんな嫌な感情を感じているのか、それはなぜそう感じるのか、自分の観念やルール、投影やコンプレックスによるものではないかと内面と向き合い、“自分の内面が変化しても難しい”と本当の理由を理解したうえで辞める決断をされるのがいいのではないでしょうか。
特に、同じパターンで転職されている方は、心のどこかに同じ状況に反応する原因が潜んでいる可能性が高いので、“嫌な感情”の正体と向き合われる事をお薦めします。

さて、一方会社を辞める事を押しとどめようとする気持ちについてですが、先ずは周りに気づかいする気落ちは一旦横に置かれることをお薦めします。
そのような気持ちは、優しさの側面もありますが、義務や犠牲といった「がまんする気持ち」でもあり、たとえ会社を辞める事を思いとどまったとしても、いつかはまた会社を辞めたいという思いが湧き上がってきたり、会社に残っていること自体が更に苦痛になったりしてしまいます。
また、会社を辞める事で仕事が長続きしないなど何らかの自分を責める気持ちが出てきたり、会社を辞める事で負けたり逃げたりする感じが出てくる場合には、それは心の罠だと認識してください。
冷静に考えてみるとわかると思うのですが、会社を辞めるというのは自身が持っている選択肢の一つであり、それを選んだからといって自分を責める必要はなく、また、勝ち負けの勝負をしている訳ではありません。
そのような感情を抱くことによって自らが自分の前進を阻もうとしているだけなのです。
新しい仕事が見つからないのではないかとか、今よりいい条件の仕事は無いのではないかという不安に対しては、先ずは具体的に新しい仕事を探す行動をしてみる事です。
そしてどのような状況なのかを確認して、その上で会社を辞めたいという気持ちと状況を照らし合わせて自分の気持ちで“選択”をする事です。
仕事探しにはタイミングもありますから、ある程度期間を取って新しい仕事探しをされる方が良いのではないかと思います。

会社を辞める決意をする、あるいは辞めないと決意をする時に最も重要なのは、自分で“選択した”という意識です。
どちらを選ぼうと、自らが選択したという意識がある度合だけ、後悔や義務犠牲感はなくなり、自分が選んだその後の状況を素直に受け入れる事ができます。

辞めてもよし、辞めなくてもよし、様子を見るもよし。
会社を辞めたくなった時のキャスティングボートは自分が握っていることを意識することです。

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この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。