○母と娘の行き違い〜「してあげたいこと」と「してほしいこと」〜

私の母がガンの宣告を受けたのは、4年前のことでした。
その後、入院、手術などを経て、現在は自宅で過ごしています。
検査の結果によると、病状は進行しているらしいのですが、一応、普通に
生活もできていて、ガンと共生している状態のようでした。
しかし、ここ1年は体調がすぐれず、少しずつ体力も落ちて、自分だけでは
だんだん家事もままならないような状態になってきました。


私も二人の妹も、結婚して実家から離れて暮らしているのですが、そんな母
のそんな状態を知ると、娘として放ってはおけません。
あまり病院に行きたがらない母を無理やりに病院に連れて行ってみたり、
「東洋医学が効くかも」と気功の先生のところに連れていってみたり、
「食事が大切だから」と玄米や自然食を勧めてみたり…思いつく色んなこと
を母に勧めました。
母も、とりあえずは私たちの言うことにつきあってくれるのですが、実のと
ころはあまり乗り気でないらしく、そのうちに文句を言い出したり、
「面倒くさい」とすぐにやめてしまったり、あまり熱心ではありません。
病気にいいと言われている食事を本やインターネットで調べて、せっせと
料理しても、「こんな料理ばかり食べるのはうんざり」とあまり食べてもら
えず、最後には「見るのも嫌だ」と言われる始末。
私もついつい、売り言葉に買い言葉で「だったら、二度と作らない!!」と
怒ってしまったこともありました(;_;)
そんな母の態度に、私たちは「こんなに心配しているのに」「一生懸命やっ
てあげてるのに」と腹を立ててばかりいました。
妹と電話で話すときは、いつも「どうしてお母さんは、私たちの気持ちを
受け取ってくれないんだろう?」「なんでこんなにガンコなの!!」と母への
グチのオンパレード。
母が何を考えているのか、まったく理解できませんでした。
母が私たちの気持ちを投げ捨てているように感じられて、悲しくて泣いた
こともありました。
思うようにいかない母に対して、怒ったり、あきれたり、母の好きにし
たらいいとあきらめたり…でもやっぱり思い直して、またよかれと思うもの
を勧めてみたり…
自分の気持ちが、コロコロと入れ替わるのがしんどくて、もううんざり、
という感じになってしまいました。
ところが、ある日、ガン専門の病院の栄養士の方が書いた本を読んで、大切
なことに気づかされました。
そこには、「食事療法も大切だけど、この先どれくらい生きられるかわから
ない人にまで、大好きなものを食べてはいけないとは言いません。その人が
幸せに食事ができるなら、それが一番大切だから」というようなことが書い
てありました。
まさに目からウロコです。
私は、「母のため」と言いながら、自分の考えを押しつけていたことに気が
つきました。
このことに気づいてから、これまでのことを振り返ると、母の言動も無理も
ないなぁと思えてきました。
体がしんどいから、何をするのも人の何倍も大変。
これでは、何か新しいことをやろうという気にはならないだろうし、病気の
せいで食欲がなかったり、味覚がおかしかったりするので、なかなか食事も
おいしく食べられないだろうし…
自分が調子が悪いときには、ついつい文句を言いたくなる気持ちも自分に
置き換えてみるとよくわかります。
母の立場で考えると、母がとってきた行動は当然のことで、私たちに
つらくあたっていたわけではないことが理解できました。
「母を何とかしてあげなくては」という切羽詰った気持ちが、
「これしか方法がない」と私たちの視野を狭くしていたようです。
何かをしてあげたいと思うことは、悪いことではないけれど、それにこだ
わる前に、相手が何をしてほしいのかを考えてあげられればよかったと
今になって反省しています。
母の病気が悪化してから、姉妹で話をする機会はずいぶん増えたのですが、
それが逆に、私たちを「母の気持ち」よりも「娘の考え」にばかり走らせ
てしまう結果になったようです。
今回の私の場合は、母の病気に関することでしたが、それ以外にも
老後の面倒をどうみるか、介護の問題、相続の問題など双方の思いが食い
違うことは、これからもたくさんありそうです。
私たちの年代は、仕事や子育てなど自分自身のことでいっぱいいっぱい
ということも多いので、ついつい親の気持ちを思いやる余裕がなくなり
がちですが、気持ちで納得しないことには相手も動いてくれませんよね
(^-^;
相手の気持ちをわかりながら、なおかつ私たちの思いも伝えられるような
そんなコミュニケーションができるようになりたいと思います。
お正月に実家に帰ったときに、母と妹と話し合ってわかったことなのです
が、「ゆっくり休んで、体を治すことに専念してほしい」という私たち娘
の考えとは裏腹に、母は「仕事をしてまわりから必要とされることが生き
がい。仕事をしようと思うからこそ、元気が出る」と思っているようです。
母には、できるだけ長く生きて欲しいと思う反面、残り少ない人生なら、
できるだけ母の思うようにさせてあげたいとも思います。
母の人生があとどれくらい残っているのかはわかりませんが、これからの
人生に母がやりたいと思っていることをやらせてあげる、それが母の一番
してほしいことなんだなぁと思いました。

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