私たちが周りの人たちと話をしている時には意識している・いないに関わらず、相手によって心の距離が違います。
この距離感を測り間違えることで、両者の間で誤解が生まれ、良好な関係が築きにくくなる場合があるのです。
職場であれば、部下が上司に相談できなくなってしまう、上司が部下にアドバイスがしづらくなるなど、お互いがストレスを抱えてしまい、仕事へのモチベーションが低下することも考えられます。
職場でのコミュニケーションでは、お互いに適切な心理的距離が必要ですが、言葉にもまた適切な距離感があるようです。
今回は、言葉の距離感についてお伝えします。
〇人を動かす “言葉の影響”
上司に言われる嫌な言葉の一つに
「この前も言いましたよね」
「既に説明したからあとは自分で考えて」
などが挙げられますが、皆さん、会社関係、家族や友人知人に言ったことがある、或いは言われた経験などありませんか?
その時、どのような気持ちになったでしょうか。
これは、上司が業務に関して指示や説明をしたことを部下が覚えていない、聞いていたが理解できずもう一度説明をお願いした場合に起こりがちです。
私自身も経験したことがありますし、周りの方から聞いたことがあります。
昔、同僚たちの前で言われて嫌な気持ちになり恥ずかしさを感じました。
そして理解できなかった自分が悪い、上司に二度も聞くことはいけないとも思いました。
人はある出来事が生じた時、良い・悪いという判断をすることが少なくありません。
自分が悪いと思うことで、相手への怒りを感じなくて済みますが、相手が悪いと判断すれば自分の行いを正当化できるかもしれません。
ですがどちらにしても、いい気持ちではいられませんね。
本来の目的は仕事を進めるため、上司から説明がないことで業務自体が滞り、その余波で周りにまで迷惑をかけてしまうこともあるのです。
部下としても周りに迷惑をかけたいわけではないのに、自分が人の足を引っ張る人、皆の仕事の邪魔をする人と見られているように感じたとしたら、辛い気持ちになってもおかしくありませんね。
また、自分が悪いと責められているように感じることがあります。
責められていると感じると、上司に対して反発を感じることもあります。
そうなれば、仕事へのやる気を失う可能性も出てきますし、今後コミュニケーションをとる気も失せていくかもしれませんね。
その他にも、頼れる上司と評価をしていたものが、冷たい、やさしさがない、丁寧でないなどネガティブなイメージに変わってしまうことがあります。
すると、また冷たいことを言われて嫌な気持ちにならないよう、同僚や別の人に教えてもらうなど、上司を避けるような態度になってしまい、結果コミュニケーションが取れなくなってしまうのです。
〇言葉の距離は心の距離
上司側もまた部下の言葉に何らかの感情を抱きます。
前に伝えたはずなのに伝わっていないと時、自分の説明が下手と言われているような気分になったり、指示を上手く伝えられない自分はダメな人と言われているように感じることもあるのです。
部下と同じように上司も責められたように感じているかもしれません。
そんな時は良い気分ではいられませんから、普段優しい上司でも相手が冷たく感じられるような言葉を言ってしまうこともあるでしょう。
私たちは人と接するとき、近接度の高い低いによって自分の言動が変わります。
例えば、家族やパートナーは対人関係の中でも特に近接度が高い間柄ですから、言葉使いや話し方など粗略に扱いがちだと思います。
そこには、やや雑な言い方をしても近しい人は傷つかないだろう、気にしないだろう、少々のことでは関係性は崩れないだろうという安心感や絆があるからなのでしょう。
近接度の高い相手には心理的距離が近くなり、言葉の距離も近くなります。
ですが、会社は社会的な場、人が仕事を行う場ですから、周りの人たちと適切な距離や言葉も適切な距離必要です。
普段は意識できても、ついうっかり言ってしまったのには、もしかしたら、家族に対して「僕がこんなに忙しいのに僕の手を煩わせないでくれ」というような言葉を余裕がなくなったがため、近しい人と同じような態度で接してしまったかもしれなにのです。
では、どのようにすれば良好な関係が築けるのでしょうか?
〇言葉の距離感を保つには心の余裕が効く
人それぞれ伝え方の違いはあありますが、「この前言いましたよね」と言ってしまうのは何故かという視点を上司側が持つ、言った相手にも理由があるという視点を部下側が持つと、お互い誤解を生まずストレスも減らすことができるのでないでしょうか。
また、自分の話を相手にわかってもらうには、伝え方の工夫や相手がこちらの話した内容を理解したかの確認作業をする。
人は他のことに心が奪われていると上の空になりやすいので、きちんと相手に定着したかを聞いてみる。
そして、上司側も部下側も言葉の距離間を知っておくと、お互い不必要な感情を感じなくて済むかもしれません。
そして、自分に余裕を作り、自分を労わること。
“しんどい、疲れている”自分の感じているものを認めて解放してあげることが大事です。
私たちは、不安やストレスが高まると自分の感情をコントロールするのが難しくなります。
自分のことで頭がいっぱいの状態では、誰かを思いやることも難しく、人と距離をとりたくなったり、つい相手を責めるような口調や突き放すような言葉を言ってしまうのです。
自分を労わるために何をしますか?
心に余裕が生まれることで、人にやさしく接することができ、部下と良好な関係を築けるのではないでしょうか。