世界のつづき

人と会う制限が外れて、再び人との交流が増えてくると、霧が晴れる様に「これは!」と思うものごとに遭遇したり、自分が望むもの、その条件などがしっかりとわかるようになったり、今まで掴めそうで掴めなかった未来の輪郭がハッキリと見えてきた、なんてことはなかったでしょうか。

心理学では、自分の心の中にあるものを、外側の世界に映し出していることを「投影」と言いますが、映し出しているものがある、つまり私たちは外側の世界に投影しているという前提で、自分の感情、感覚、観念や価値観などに気づくことを「投影の引き戻し」と言います。

投影には「ネガティブな投影」もあれば「ポジティブな投影」もありますが、ポジティブな投影とその引き戻しは、喜ばしいサインとして自分の今を知ることのできるもの。

自分がどんなことに感動し、どんな物事に対して「いいな~」「素敵だな」「好きだな~」「嬉しいな」「羨ましいな」と感じているのかを自覚する機会になるからです。

つながりを感じられる心があると、羨ましいこととは、自分にはないものだからという劣等感やくやしさ、みじめさではなく、「自分もそういうのが欲しかったんだ!」という気づきになります。

今年は桜の開花が全国的に早くて、桜前線が列島を一気に駆け登るニュースを目にして、なんだかワクワクした!なんてことも、すぐに忘れてしまうかもしれないけど。これもポジティブな投影のひとつですよね。

思いのほか、静かに留まる時間が長かったこともあり、ここへ来て、世の中の動きが、見直しやリニューアルを経て、新しくはじまりだしたのを感じています。

さきの統一地方選挙では、友人が市議会議員選挙の2期目に立候補し、当選を果たすことができました。
候補者、そしてそれを応援する仲間とのプロセスを間近で感じることができ、私にとっても幸せな体験でした。

定数38議席を45人もの方が名乗りを上げる激戦でしたが、当落に関わらず地域のために立ち上がった候補者の勇気と、それを支え応援する人のつながりに、深い、深い感動を覚えました。

私が小学生だったころの暗黒時代の記憶。
両親の夫婦げんかやDV、家族のきずなが崩れはじめたのは、父が町会議員選挙で落選してからだったんだと気づいたのは、4年前、友人が初当選を果たした後でした。

父の落選が失敗例だとしたら、友人の選挙はすべてにおいて成功例でした。
そう思えるほど、私が願ったもの、本当に見たかった世界がそこにはありました。

自分が目指すものを明確に示し、そのための応援や協力を求め、お願いできること。
そんなこと当り前のことかもしれないけど、本気のコミットメントがないうちは、人ってなかなか口に出しては言えませんよね。

他者の視点に耳を傾けること。
世界を理解するためには、自分とは異なる意見や価値観にも耳を傾けることも大切です。
どんな小さな意見でも自分に寄せられた要望に真摯に応えようとする友人の背中から、私も「そうありたい」と思えました。

誰かを本気で応援することを通じて、かつて自分のことを応援してくれた人たちのことを思い出し、胸が熱くなりました。
いろんな応援の仕方があるけど、自分なりの応援の仕方を通じて、また、そのことに気づくのです。

そういえば、学生時代の私は、友達に囲まれている一方で、ポツンと独りでいる人をみると放っておけなくて、なんとなくそばに近づいて行ってしまうようなところがありました。

少しずつ仲良くなって、ポツリポツリと自分のことを話してくれた人もいれば、なかなか心を開いてくれない人もいましたが、今思えば、自分の中で癒されずに抱えていた「ひとりぼっちのさみしさ」をその子たちに投影し、私自身がつながりたかったのだと思います。

心や感情、潜在意識が自分の人生に大きな作用をもたらしている。
そう気づいて、自分の癒しに取り組みはじめたのは、2回も離婚を経験した後でしたが、当時は貧困シングルマザーでした。

体験を重ねていく中で自分の現在地を知り、新しいリアルに対して新たに目指す行き先が決まる。
実感できなければ自分らしい人生の道は開拓できないといっても過言ではありません。

家族やルーツ、これまでの自分の歩み、その先に、自分の未来がある。
それは過去に引っ張られるということではなく、その過去に積み重ねてきた経験の意味やそのことへの価値を見出して、未来を創ることができるということ。

その土台があってこそ、新たな理想を目指し、未知なる領域を仲間とともに開拓していくことができるんですよね。

自分はなにをする人なのか?
自分はどこにいるべきなのか?

違いの中から自分のポジションに対する意識が定まり、明確になってくる。

遠慮でも謙遜でもなく、真摯な思いを分かち合うことで、異なる才能とキャリアを持つ仲間と協力し合いながら、多様性のある世界をつないで行くことができる。

今回は、市政を友人に託した話を例にあげましたが、信頼する人に委ねるとは、自分と世界をつなぐ知恵なんだと改めて思えました。

世界のつづき、人生のつづきは、感じること、信じること、愛することの先に希望とともに広がっていました。

自分が思っているよりも案外近くに、そのヒントがあるのかもしれませんね。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛、夫婦関係、職場の人間関係、転職・キャリアほか、自己実現など幅広いジャンルに対応する。 わかりやすいレクチャーをモットーに、感覚やインスピレーションを活用するハートフルなセラピーとの両面で癒しのプロセスを後押しするのが強み。自分のペースで気づき、変化、成長できると好評である。