初めて管理職になるあなたへ

これから春に向けて会社の新年度、人事異動や昇進の時期、という方も多いのではないでしょうか?

初めて管理職になったころ、私はひどくだめな上司だったな…と思い出すことがあります。

初めての部下は5人。
小さな営業チームのリーダーのポジションでした。

「リーダーの心得」のような教育の時間はあったような気がしますが、素晴らしい理想論を習っても、現実的にどうしたら良いのかはわかりませんでした。
がんばらなくっちゃ!と肩にチカラは入るものの、部下への接し方からチームとしての営業成績の上げ方に至るまでわかりません。

最初はみんな「昇進おめでとうございます。」と言ってくれたものの、しばらくするといろいろなほころびが起きてきました。

「あのお客さんは嫌いです。担当を変えてください。」と言ってくる部下。
「チーム内の〇〇さんと意見が合いません。あの人に言ってやってください。」と言ってくる部下。
「あの人さぼってます!」と言いつけに来る部下。
「家庭の問題で、しばらく休みたい」という部下。

末席の管理職ですから、困ったときは私の上司もいるわけですが、そのころ会社は合併に次ぐ合併で、私の上司は3か月ごとに変わるような状況でした。
前に相談した上司と新しい上司の意見がまったく違ったりして、そのたびに私が部下に言うことも変わらざるを得ないことも多々でした。

「言ってること違うじゃないですか。」
そう言われると「ごめんなさい。」としか言えないこともありました。

伝え方も高圧的になってみたり、お願いしてみたり。
だんだん「この人だめなんじゃない?」と思われている空気を感じると、ますます焦るばかりで判断に自信がなくなりました。

そして部下が「できません。」ということを、ひとつづつ自分が処理していくようになり、自分の上司からは「部下が育っていない」とダメ出しをもらい、自分の重荷だけが増えていったのです。

せっかく昇進も昇給もしたのに、ちっとも嬉しくなくて、もう一度メンバーに戻りたいとすら思いました。

でも、いったん管理職になると、たとえ転職したとしてもまた似たようなポジションを期待されてしまうのですよね。

転職したのにまた部下ができたとき、「もうあんな風に自分ひとりで背負いこんでがんばりたくない!」と心から思いました。

そこで、いちばん変えようと思ったのは、「わかりあうこと」でした。

自分のこと・会社のこと・組織のことで自分がわかること・伝えても良いことはなるべく話して、状況や展望をわかってもらおうと思ったのです。
となると、当然、自分のできること・できないこともわかってもらわなくてはなりません。
自分の限界についてさらけ出すことも必要でした。

そして、相手の状況・気持ち・希望を、すべてかなえてあげることはできなくても、せめて理解したいと思っている気持ちを伝えようとと思いました。

アプローチとしては「こうしなさい。」ではなくて、「こうしていきたいと思うけれど、どうだろう?」と相談するようにしました。

「できない。」と言う人に対しては、どうしてなのか?どこまでならできるか?をよく話し合うようにすると、「こちらも歩み寄る・相手も歩み寄ってくれる」という流れができてきます。

そのうえで「これはやってほしい。」とお願いすると、がんばってくれることもあるし、こちらもできるだけ協力しているうちに、結果が思わしくなかったとしても信頼関係はできていくような気がしました。

そして年齢を重ねていくと、ラッキーなことに、同じことを言っているのになんとなく説得力が増したりもしました。

そうしていると、だんだん大事なことがわかってきたのですが、それは実は「相手の感情を否定しないこと」だったようです。

仕事なんだから嫌でもやらなくちゃ!とか、嫌だと思っちゃだめだ!のように、一方的に相手の感情を決めつけるようなことがあると、たとえ仕事であってもうまくいかなくなるようです。

心理学では「会社を辞めたい時、それは会社を辞めたいのではなくて、会社で感じる感情をやめたいのだ」と言います。
職場では1日のうちの長い時間を共に過ごすわけですから、そこで感じる感情というのは重要な意味があります。

相手の感情をコントロールしようとするよりも「そうだよねぇ。こんなのきついよね。どうしたらいいかなぁ?」と一緒になって考えているうちに、「いや。もうちょっとやってみます。」などと言われることがあったり、「もうこれ以上はしんどいだから止めようか?」と言ったら、「何言ってるんですか!まだやれますよ!」などと、かえって励まされたりすることもありました。

もちろんうまくいった時は一緒に喜んで感謝すること。

そのうちに「小澤さん、しょうがないなあ。ここ抜けてますよ。やっておいてあげますよ。」などと言われることが増えたりしました。
情けないけれど、そんな関係の方が楽しく仕事ができました。

こうあらためて書いてみると、リーダーシップというのは、普通のフラットな人間関係と基本的には変わらない気がします。
ただちょっと一歩先に「私はこう思う。あなたはどう思う?」と伝えるだけかもしれません。

初めて管理職に就く方のご参考になれば幸いです。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

離婚やハードワークによる鬱、親の介護など、さまざまな経験をしてから心理学を学び、【心が変われば、いつからでも人生は変えられる】ことを体験した。企業の人事や人材サービス会社など、人に関わる仕事歴30年。その人らしさを大切にし、新しい希望を見出すためのサポートをモットーにしている。