私が怖いおばちゃんになってしまった話

年に何度か、我が家に家族が全員集合することがあります。
私のところでは、四世帯15人になるんですよ。
内訳は大人9人に子ども6人。
96歳の母を筆頭に3歳児までが揃うと、なかなか壮観な眺めです。
あ、うっかりしてましたがそこに姉のところで飼っている犬1匹も加わって、毎回それはそれは賑やかな一日を過ごしています。

先日も、皆がそろって食事をする機会がありました。
こういう時、私は一日炊き出し係です。
忙しいったらありゃしません。

その昔は、母が中心になってやっていたことなんですよね。
忙しくて慌ただしくて大変だけど、皆が楽しそうに過ごしている姿を見ると疲れも吹き飛びます。
母も、きっとそんな気持ちでいたんだろうなと思います。
超高齢になった今は、ひ孫たちとトランプに興じたりして結構仲良くやっていますよ。

さて、その日もワイワイガヤガヤの食事が一段落したので、私がデザートにフルーツカクテルを用意したんです。
フルーツカクテルとは、生や缶詰の果物数種類をさいの目切りにし、果汁を加えたシロップに浸して冷やしたものです。
本当に皆が大好きで、子どもたちは食べる前から「ねぇ、おかわりある?」なんて聞いてくるくらい超人気のデザートなんです。

一通り食べ終わっておかわりもし、それぞれ大満足した様子です。
そのうち、長老の母がワンコに果物をやり始めました。
本当は人間の食べ物、特に甘い味付けのモノを犬にやってはいけないのですが、高齢者は自分の手から食べてくれるのが嬉しいんですよね。
いくら言っても聞いてくれません。
バナナやリンゴを手にとっては、せっせとやっています。

それを見た5歳児のゆうちゃん。
自分も真似を始めました。
そりゃあ、ひいばあちゃんがやっているんですから、真似したくなりますよね。
私も、「やれやれ、仕方ないなぁ。」と思いながら見ていました。

そのうちふと気づいたら、ゆうちゃんが果物をスプーンに乗せてワンコにやっているではありませんか!
それだけならまだしも、その犬がなめたスプーンで今度は自分も食べようとしています。

「あ、ダメよ!それはダメ!」
私は思わずきつい口調で、ゆうちゃんを制止しました。
ビックリしたゆうちゃん。
そのまま固まってしまいました。

「犬と同じスプーンを使っちゃいけないんだよ。」
とは言いましたが、もう何が何だか分かってなかったと思います。
固まったまま、シクシク泣き始めました。

怒られた!
悪いことしてるって言われた!
まゆみおばちゃん、怖い!
悲しい、イヤだ、どうしよう・・・
きっと、そんな思いをしていたはずです。
はい、まさに私がゆうちゃんにとって怖いおばちゃんになってしまった瞬間でした。

そんなゆうちゃんの様子に気付いたのが、パパさんでした。
隣の部屋にいたのですが、「ゆう、どないしたんや?」と言って近づいてハグしたとたん、ゆうちゃん大号泣です。
「そうかそうか、よしよし。」
「もう大丈夫だよ。」
お膝の上で抱っこされて、体も心も丸ごと受け止めてもらって安心したのでしょう。
安心したからこその大泣きです。
5分もすれば落ち着いて、ケロッとしていました。
さらにパパさんからジュースをもらって、にっこり笑顔。
今泣いたカラスがもう笑った!

私はパパさんのナイスフォローに、ただただ感心です。
ゆうちゃん、良かったね。
感情は感じ切ると抜けていくといいますが、まさにその通りの姿を目の当たりにしました。
こういう対応をしてもらえる子どもは本当に幸せだと思います。

この時、母親である私の姪は何をしていたかというと、甥とゲームに夢中。
「なんか泣いてるな~。」とは思っていたようですが、自分のことに忙しかったようで。
おいおい、とツッコミたくなりました。

でも、こういうことはあまり神経質にならなくても誰かがフォローできればそれで良いのだと思います。
子どもは、そうやって社会性を学んでいくのでしょう。

幸い、私もゆうちゃんの中で怖いおばちゃんになったのは一瞬だったようです。
帰る頃にはいつものようにハイタッチして、「また来るね~!」と手を振ってくれました。

子どもは成長の過程で、さまざまな大人の態度を誤解することがあります。
けれど、いつか「そういえば、あんなこともあったよね。」と思い返して笑い話になれば良いなと思った出来事でした。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

1957年生まれのシニア世代。 自身の豊富な人生経験を生かした、自分らしく生きていくためのサポートが好評を得る。 得意ジャンルは、対人関係・自己啓発・恋愛。 “何かを始めるのに遅すぎることはない”の言葉通り、いくつになっても新しい人生を切り開いていけることを、身をもって実践している。