問題児は、家族で一番優しい子

「手のかかる子ほど可愛い」 とはいうけれど、子どもの成長に伴い、手をかけるどころか “手に負えない” と感じるほど、子供のことで心を痛め振り回されるということがあります。

あんなに小さくて可愛らしかった子が、なぜ、こんなことになったんだろう。
母親は特に、自分を責めてしまうかと思うのですね。
子供も親も苦しいです。

そんなとき、心の中では何が起こっているのでしょう?

 

■問題を起こす子供は、見守ることが大切

「お兄ちゃんは、良く出来た子なんですけど、弟は問題児で」

「妹は社交的なんですけれど、姉の方が引きこもりで」

など、子供たちのうちの1人が問題を抱えていて、どう接すればよいのか?
という内容のご相談をいただくことがあります。

・不登校
・引きこもり
・非行
・暴力
・万引き

など、問題は多岐に渡ります。

「この子はなぜ、心配ばかり掛けるの?」
「なぜ、迷惑ばかり掛けるの?」

「こんな風になったのは、私の育て方が悪かったから?」

親としては、子供に怒りを感じたり
自分を責めたりして、苦しくなるかと思います。

こんなとき、陥りやすいのが
「この子の問題行動を正さなければ」
と、子供を変えようとすることです。

けれど

”自分は変えることが出来ても人のことは変えられない”

といわれるように、子供を変えようとしても、事態は悪化することの方が多くなります。
なぜなら、コントロールされるということは、誰しも不快さを感じるため、反発心を引き出しやすいから。
なので、子供をコントロールしようとせずに、見守ることが大切なのです。

では親は、問題行動を起こす子供を見守りながら、どう理解し導いてゆけばよいのでしょう?

 

■心理的に見る『家族の役割』

心理学に『家族の役割』という言葉があります。

家族のひとりひとりが、それぞれの役割を担って家族を救おうとします。
役割には、以下の5つがあります。

 

・ヒーロー(スター、優等生、成功者)

家族の中の希望、光となって家族を救おうとします。
たとえば、家族が経済的に苦しんでいたら
「ボクが大きくなったら、みんなにお家を建ててあげる!」
と家族に夢と希望を与え、実際に勉学に励んだり生徒会長を務めたりして優等生  のポジションを取ります。
”家族の自慢の存在” となって家族を救おうとするのです。

 

・チャーマー(ムードメーカー、マスコット、ピエロ)

チャーマーは、みんなのアイドルといったところでしょうか。
可愛さやお調子者、ムードメーカーとなり、みんなを笑顔にして家族を救おうとします。
いわゆる、愛されキャラです。
ピエロやマスコットを演じるわけですから、エンターテイナーでもあります。

 

・殉教者(犠牲者、身代わり)

殉教者は、家族の犠牲になります。
たとえば、横暴な父親の暴力に耐える母親などは、よくあるパターンです。
また、母親の延々と続く愚痴の聞き役、怒られ役など 「私さえ我慢すれば」 と人が引き受けたくない役割を引き受け、自分を犠牲にして家族を救おうとします。

 

・傍観者(家なき子、迷子)

傍観者は一見、家族の問題は我関せずのように見えることがあります。
家族とは距離を取り、第三者的に客観的に家族を見ています。
淡々と、飄々と生きている感じでしょうか。
気配を消し、自分のことで家族に負担を掛けないことで、家族を救おうとします。

 

・問題児(悪役、スケープゴート)

問題児は、ヒーローの真逆です。
先に述べたように
・不登校
・引きこもり
・非行
・暴力
・万引き
などの問題行動を起こします。
そうやって自らが問題を起こし、家族全体の問題や個々の問題から目を逸らせることで、家族を救おうとします。

 

 

■問題児は、家族でいちばん優しい子

どの役割も家族を救おうとするものですが、問題行動を起こす問題児は
「悪役を引き受けてくれている」 と理解することが出来ます。

たとえば
両親の関係が何年も不仲で、家族もバラバラ。
家庭の雰囲気が冷え切っていたとき、次男の生活が荒れ出しました。

夜遅くに帰宅。
学校に行かない。
やがて、家に帰って来なくなり、ある日盗んだバイクで走っていたとのことで、警察から電話が。

警察まで迎えに行き、家に帰って来たかと思ったら、部屋に閉じこもりっぱなし。

何年も不仲だった両親は、次男をなんとか更生させようと、協力せざるを得なくなります。
それまで、バラバラだった長男長女も、一致団結して次男をなんとかしようとします。

問題児は自らが問題を起こし提起することで、夫婦間の問題、長男長女の両親への怒りや諦めなど、家族の問題を一手に引き受け、救おうとするのです。

もちろん無意識ですが、自らが悪者になって家族を助けようとしているのだとしたら、とても優しい子供ですよね。

家族の中で、人の感情にいちばん敏感で、繊細な感性の持ち主だといえます。

 

■自分の問題、家族の問題として見てみる

子供が問題行動を起こしたとき、多くの親御さんは 「子供に問題があるから」 そう見てしまいがちです。

「なぜ、あなたは学校に行かないの?」
「なぜ、あなたは人に迷惑を掛けるの?」

と子供の問題として捉えてしまいやすいのですが、それでは問題の解決には至りにくくなります。

「子供の問題行動によって目を逸らしている、私自身の問題があるとしたらどんなことだろう?」
「子供が家族の問題を引き受けてくれているとしたら、この家族の関係性にどんな矛盾があるのだろう?」

と親自身や家族の問題として捉えることで、家族関係のバランスが取れてきます。

問題を起こす子供が一手に引き受けていた、家族ひとりひとりの問題や全体の問題を、それぞれが正当に受け持つことで、家族間の心が調和され安定してくるのです。

「子供が、問題を起こして困っている」
そんなお話しからカウンセリングを進めてゆくと

「時に子供は、自分の人生を投げ出してまでも、親を救おうとするのだな」
と感じることが度々あるのですね。

これは子供からの親への愛ですが、そんな優しい子に育ったのはこれまでの親からの愛を、その子がどこかでちゃんと感じていたからです。

子供が問題行動を起こすとき

「この子は問題児となって、私や家族を救おうとしているのかもしれない」

そんな視点を持ってみてくださいね。

来週は、那賀まきカウンセラーがお送りいたします。
どうぞ、お楽しみに。

 

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恋愛や夫婦、浮気、離婚などのパートナーシップから対人関係、子育て、また、死や自己受容のテーマなど幅広いジャンルを得意とする。 女性的で包容力があり、安心して頼れる姉貴的な存在。クライアントからは「話しをすると元気になる」「いつも安心させてくれる」などの絶大なる支持を得ている。