「あなたのため」は私のため? ~思春期の子供の接し方~

■「あなたのため」の真実

「あなたのためを思って言っているのよ」

世のお母さんたちが、子供によくいうセリフです。

勉強をしない子供に。
朝、なかなか起きてこない子供に。
ダラダラする子供に。

「あなたのためを思って、言っているのよ」
「そんなことで将来、困るのはあなたなのよ」

子供のためだというのは、嘘ではないのですが
”あなたのため” と言いながら
実は、お母さん自身のためだった、ということがあります。

私自身、このことに気づいたとき愕然として
スンナリとは認めがたかったことを覚えています。

 

■言葉の裏側にある、親の不安

「あなたのために言っているのよ」

私も一時期、子供によく言っていました。

娘が中学校に馴染めず、一日行っては三日休む、なんてことが続いていたころ。

「ちゃんと学校に行かないと、勉強が遅れて困るのはあなたなのよ」
「社会はもっと厳しいのよ。あなたのために言っているのよ」

本当にそう思ってもいましたし、ごもっともな意見です。

しかし、心理学を勉強しだして自分の心を深く見てゆくと
”あなたのため” の言葉の裏に隠されているものは
”私のため” だったのだな、と気づいたことがあったのです。

「娘が学校に行かなくて、このまま引きこもってしまったらどうしよう」
「もしかして私は、子育てに失敗したのではないか?」

という、私の不安を払拭したい ”私のため”
子育てに失敗したとは思いたくない ”私のため”
だったのですね。

・子供はどう受け取るのか?

「あなたのため」
そういわれた子供は
「私のためを思うなら、放っておいて」
実際に口に出すかどうかは別として、そう感じるようです。

なぜなら、子供としても学校に行かない、行けないことで
自分自身を情けなく感じ、ダメな人間だ、と自分を責めています。

そうやって自分で責めているところに、親が
”あなたのためを思って” 言うことは

さらに責められているように感じるので

「私だってこんな自分が嫌で自分を責めているんだから、これ以上責めないでよ。
私のためを思うなら、そっとしておいて!」

となるのですね。

 

■見かけは大人でも、心は未成熟な子供

「うちの子は勉強もせず、日々ダラダラ過ごしています。
宿題も、わざわざリビングに持ってきて
集中力もなく、消しゴムを触ってみたりゲームを触ってみたり。

見ているとイライラするし、こんなことで将来どうなるかと
心配になるんです」

このようなご相談を、よく頂きます。

小学校高学年から高校生くらいのお子さんをお持ちのお母さんに、多いお悩みです。

親とすれば、じれったいような歯痒いような、なんとももどかしい気持ちになりますよね。

私個人としては、小学校高学年から高校生くらいまでが、一番ややこしい時期だと感じています。

小さかった頃の、ただただ可愛いだけでは過ごせない、ひと筋縄ではいかない複雑なお年頃ですよね。

しかしこの時期、子供がどのような大人になってゆくかを形成してゆく、踏ん張りどころでもあると思うのですね。
この先、親子関係をどう築いてゆくかという意味でも、大事な時期です。

いわゆる思春期で、子供のような大人のような、このシーズン。

子供の体はどんどん大きくなり、いっぱしのことを言うようになっても、彼らはまだまだ未成熟な子供です。

なので、口うるさくなるより、親としてはどっしりと構えて見守ることも大切です。

・ひとりの人間として尊重する

具体的には、精神的にはまだまだ子供なのだ、と受け止めつつも、ひとりの人間として接すること。

たとえば
「ちゃんと、宿題に集中しなさい。
そんなことでは、将来あなたが困るのよ」
「あなたのために言っているのよ」

と言いたいところを

「もうちょっと、勉強に集中した方がいいんじゃない?」
「明日、宿題出せずに困るんじゃない?」

と指示ではなく、提案するのです。

そして、あとは本人に任せる。

「あなたがどうするかは、あなたに決定権がありますよ」
という態度です。

これは、子供を一人の人間として尊重していることになります。

 

■子供自身が納得する人生を送るために、親が出来ること

人は、扱ったように振る舞います。

子供をひとりの対等な人間として扱うと、自立心が育ち、自分で考えて行動するようになるのです。

子供から大人へと成長する思春期は、3歩進んで2歩下がる、というくらい、親も子も困惑したり焦りを感じることが起きやすいです。

勉強面、友達関係、学校や先生との関係、男女関係、社会との関り。

子供は子供で日々、たくさんのことを感じ一生懸命生きています。

そんなとき私たち親が出来ることは、子供が自分で納得した人生を送ることが出来るように、導いてあげることかな、と思うのです。

“親の私が納得できる子供の人生“ ではなく ”子供が納得出来るようにサポートする“ ということです。

それには、自分の子供に対する不安や恐れを、子供に転嫁させるのではなく
自分の中に、子供の将来への不安と、これまでが失敗したのではないか?という恐れがあるのかもしれない、ということを受け止めること。
そして、子供を一本立ちした人間だと、認めること。

そうすると、徐々に子供は自分の行動を自分で選ぶようになります。
子供が自分で選んだ行動で、たとえ失敗したとしても納得します。

そして、子供になにかあったとき、いつでも受け止める心構えさえあれば、子供は安心して自分の人生を生きることが出来るようになりますよ。

子育てに悩みや疲れは、つきものです。
いっぱいいっぱいになったときは、ひとりで抱え込まずに周りに頼ったり、自分を労わりながら進んでゆきましょうね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、少しでもお役に立てれば、幸いです。
来週は、那賀まきカウンセラーがお送りいたします。
どうぞ、お楽しみに。

 

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦、浮気、離婚などのパートナーシップから対人関係、子育て、また、死や自己受容のテーマなど幅広いジャンルを得意とする。 女性的で包容力があり、安心して頼れる姉貴的な存在。クライアントからは「話しをすると元気になる」「いつも安心させてくれる」などの絶大なる支持を得ている。