心を縛る鎖のお話~観念の心理学~

知らず知らずのうちに自分の心を縛り、行動を制限してしまう『観念』という鎖。上手に解き放って心を軽くしましょう。

観念とは?

前回は「役割」について原がお話させていただきました。
その中で出てきた「こうあるべき」という考え方、思いのことを心理学用語では『観念』と呼びます。

僕たちは成長する上で色んな観念を作ってきます。
安全に生きるためでもありますが、その多くは傷つかないように、失敗しないように、恥をかかないように、とネガティブな目的で作られます。

また、親から躾という形でその観念を受け継ぐことも多いでしょう。
僕たちは嫌な気持ちを味わうのは、当然ながらイヤなわけですから、そうならないように色んな防御をするわけです。

そして、傷ついて辛い思いをするたびにもうそんな思いはイヤだ、と新しい観念を自分に作ります。
あれ?こんな話どこかでもしましたね・・・。そうです。前々回お話させていただいたプライド。この中に出てくる心の塀はこの観念という材料から出来ているのです。

そして、この観念が逆に僕たちの心を縛り付け、幸せを遠ざけていることが実に多くあるのです。
ところが、この観念のややこしいことは、今のあなたにとって、それが当たり前のことのようになってしまっていて、自分ではなかなか何が問題なのかが分からなくなってしまうところです。

もし、あなたが恋愛でも仕事でも対人関係でも「うまくいかないなあ」「もっとちゃんとしたいのになあ」と感じることがあったら、この自分的常識「観念」が見えない鎖となってあなたの心や行動を制限してしまっているのかもしれません。

それならば、あなたは今その観念を見つけ出し、手放していける事で、その鎖を解き放つことができるはずです。
そして、観念を手放した分だけ、楽さを感じることが出来るでしょう。

あなたの心の鎖(観念)チェック

そこで簡単にあなたの観念チェックをしてみましょう。
まずはあなたの恋愛観チェックから。

「あなたは恋人に○○しなければならない」
「あなたは恋人に○○してはいけない」
「あなたの恋人はあなたに○○しなければならない」
「あなたの恋人はあなたに○○してはいけない」

この○○に当てはまる用語を考えて見てください。
時間のある方は20個くらいざっと書き出してみてください。

例えばこんな風に・・・
・僕は彼女を裏切ってはいけない
・僕は彼女に優しくしなければならない
・僕は彼女を喜ばせなければいけない
・僕は彼女を悲しませてはいけない
・彼女は僕に気を利かせなければならない
・彼女は僕を自由にすべきだ
・彼女は僕に心配をかけてはいけない
・彼女は僕を安心させなければならない

これは誰の観念かは、まあ、横において(^^;;;、これをつらつらと眺めながら、こう思ってみてください。
「これは私の彼氏を作るときのチェックシートで、少なくともこの20個のうち18個はクリアしてくれないと安心して自分を委ねられないわ」と。
どんな気持ちがしますか?

観念チェックの使い方

実は僕たちは心のどこかで、こんなチェックシートを無意識的に描いて相手をチェックしてしまうものなのです。
そうすると、例えば「優しくしなければならない」と思っていたとして、彼が優しくない素振りを見せるとすかさず減点してしまうことになって、なかなか次のステップに踏み込めなくなってしまいます。

しかも、この採点方法は減点方式ですから、なかなか点数を回復するのが難しいのも難点です。
彼の魅力や価値を見ることよりも、チェックシートをくまなく採点する方(すなわち荒さがし)に奔走してしまうことになります。

特にお付き合いして最初のロマンスが終わり、関係が落ち着き始める頃にこのチェックシートが大活躍することがあります。
あなたも「なんだか最近妙にケンカばっかりしてるなあ」と感じたことはありませんか?
そんなときはお互い心のチェックシートで採点しまくっているのかもしれません。
これでは関係性は悪くなる一方ですよね。

ここでは恋愛編でしたが、これを仕事や対人関係、家族に置き換えて見ても成り立ちますので、時間の取れるときにちょっとノートなどに書き出してみてください。

カウンセリングの現場でもこれを時々やるんです。
3、40分かけて30個くらい書きだしていただくんですが、これを眺めながらの感想は「そりゃあ、うまくいかへんよなあ」が第一位です。

手放しのススメ

でも、実は30個でも少ないくらいで、僕たちの心の中にはそんな観念が数千、数万はあるといわれます。
日頃あなたの日常で、誰かの態度に気分を害したと思ってみてください。
なぜ気分を害してしまったんでしょう?
それはあなたが「してはいけない」と観念を使って禁止してるからかもしれません。

通勤の途中、会社にて、昼休み、休憩時間、仕事が終わってから、休日遊びに行って、、、僕たちの日常にはそんな「~すべき」「~してはいけない」がたくさんあります。

中にはもちろん必要なもの、いいこともたくさんあります。
「ゴミを道端に捨ててはいけない」とか「人に迷惑をかけてはいけない」とか。

でも、そこにどのくらい強い思いを持っているか?を考えて見てください。
確かに人に迷惑をかけてしまうことは良くないことかもしれません。
でも、人生において、人に迷惑をかけないことなんてどれくらいあるでしょうか?
生きる、ということは同時に周りの人たちに多かれ少なかれ迷惑をかけてしまうものです。
でも、そこに繋がりや愛情があるから「しゃあないなあ」と笑って許してもらえるものです。

もしあなたが「決して人に迷惑をかけてはいけない」と強く思えば思うほど、あなたは人に迷惑をかけないために人から遠ざかるしかなくなりますね。
もちろん、それを良しとする人もいらっしゃるかもしれませんが、僕はちょっと寂しい人生になっちゃうなあ、と感じます。

それならば、その観念を少し手放して「人に迷惑をかけるのは良くないけれど、もし迷惑をかけてしまったとしたら素直に謝ることができるようになろう」と書き換えてみるのはいかがでしょうか?

「彼は私に優しくしなければ行けない」と思っているのならば、彼もまた完璧な人ではないことを理解しながら「優しくして欲しいけれど、彼がしんどかったり、忙しかったりして優しくできないときは、きちんと理解してあげられる自分になろう」と書き換えてみましょう。

観念の書き換えエクササイズ

そこで、先ほど書き出していただいたリストを上のように書き換えて見てください。
全部やるのはしんどいと思いますので、選りすぐりで10個ほど選び出してから、やってみるといいでしょう。
簡単な国語の問題のようでいて、心理的にはなかなか抵抗の感じるエクササイズかもしれませんね。

でも、もしそんな風に抵抗を強く感じるものがあったとしたら、そこでもまた「なぜだろう?」って思ってみてください。
きっとそこにはまだ癒されていない心の痛みが一つ、二つ眠っているはずです。
そして、同時にあなたがまだ許していない人がいるのかもしれません。

そして、その痛みを感じ、許していない人を理解し許していくことがあなたの今の課題としてみましょう。
もしかしたら、その「人」はあなたがもうとっくに忘れていたはずの人かもしれませんし、意外な誰かかもしれません。

ならば、今がチャンス。
その人を許し、その痛みを解放することが今できます。

そうして、心の鎖をまた一つ解くことができたとしたら、あなたは心の軽さと楽さを感じることができるでしょう。

観念とは心を縛り付ける鎖のようなもの。
丁寧に断ち切っていきたいですね。

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