最近の品質問題から考える 〜問題の未然防止方法〜

最近、日本の名だたる大手メーカーで“品質の日本”を根幹から揺るがす問題がいくつも発覚しています。
鉄鋼メーカーや化学品メーカーによる製品データの改ざん、自動車メーカーによる検査規定違反、鉄道車両製造会社の製造現場による部品改造などです。

これらの問題の原因究明が、第三者委員会を立ち上げたり、社内調査により行われていたりしますが、その報告を聞くたびに、技術畑の私は「どうして?」と思ったり「なるほどそうなるかも知れない」と思ったりしています。

ここで、余談になりますが、メーカーで何か技術的な問題が生じたときに行う調査は、特定の個人の責任を追及するために行うことはありません。
その真の原因を明らかにし、再発を防止するために行うのです。
当然、その問題に関わった当事者にも話を聞きますが、責めることは無く、事実を淡々と積み上げていきます。
その代表的な一つの手法は、状況や現象に対して「なぜ」「なぜ」という問いを5回以上繰り返して、誘因や真の原因を突き止める方法です。
問題はただ単一の現象や事象からのみ起こるわけではなく、状況や現象が複雑に絡み合って生じます。真因を探るには、事実に基づいて深掘りを行う必要があるのです。
そして、明らかになった誘因や真因に対して、対策を打ち、その効果の確認までを行います。

さて、では「品質の日本」を揺るがすこのような問題がなぜ頻発しているのか(最近明らかになったことで、発生は随分と前、もしくは前から)について考えてみたいと思います。

(1)規則の背景と理由が伝達されない

どのような規則にも、それを作った背景があり、それに基づく理由があります。
その規則が制定されてから年月が経過していくにつれ、それらの背景や理由が伝わらなくなり、その規則の必然性がわからなくなり、ただ「ルールがあるから守っているだけ」という状態に陥ります。規則を作った時点とは状況が変化することもあるでしょう。
世の中には様々な人がいて、様々な考え方をしていますから「規則があるから守る」というタイプの人もいれば、規則を拡大解釈し、あるいは縮小解釈して運用する人も出てきます。
そうすると、規則が変質し、それが習慣となっていきます。先輩の「これでいいんだよ」という一言で片づけられてしまうこともあるでしょう。
こうなると、規則は守られなくなってしまいます。
これを防ぐためには、背景や理由まで遡って定期的な規則の見直しを行うことが必要です。その規則を残すならば残す、変更するならばどのように変更すればいいかを関係者で共有することが必要になります。
また、業務の改善提案を受け付ける窓口を作り、提案を奨励することも併せて行うと効果的だと思われます。

(2)守れない規則が作られる

規則を起案する側から見れば、その人の性格にもよるのですが、規則は可能な限り完璧にしたいという思いを抱く場合があります。
この場合、仔細に手順まで定めて規則に抜け道が無いようにしたり、多くの事柄に対して規則を作ったりして、起案者は“安心”を得ようとします。
一方、規則を運用する側から見れば、守るべき規則が多過ぎて覚えられなかったり、定められたとおりに実施できなかったりして、どうせ守れないならと考えるに至り、規則自体が運用者の解釈で変質させられてしまいます。
多過ぎる規則、複雑すぎる規則はあって無きが如くになってしまうのですね。
これを避けるためには、起案者側に必ず運用に携わる人を加えたり、運用者からよく話を聞いたりする必要があります。そして、“必要最小限度の規則”にとどめる努力をすることでしょう。
そして、規則の運用の前段階で試行期間を設けて検証し、修正の必要性があれば修正を行うことです。

(3)コミュニケーションの不足

言葉には、発する人と受け取る人の思い込みが入る場合がとてもよくあります。
ちょっと笑い話のような感じですが、田舎町のある喫茶店でその店をお手伝いしていた中学生ぐらいの少年に「ウインナーコーヒー」と言って頼んだら、コーヒーと一緒に焼いた赤いウインナーソーセージが2本出てきたことがあります。
まぁ、これはコミュニケーション不足の問題ではないと思いますが、それぞれが描いたイメージに沿って人は行動を起こすのです。
このコミュニケーション不足を無くすためには、再確認をすることがとても重要です。
短い命令ではよく復唱という手段が用いられますが、長めの指示などでは、指示を受けた側が要点をかいつまんで尋ね直すという方法がいいかと思います。
「明日15時に停電になるからそれに備えて機械を14時50分に止めるように」という指示を受けたとしたら「15時の停電に備えて14時50分に機械を止めるのですね」といったあんばいです。

(4)遠慮しない

私たちは、人の手を煩わせることを遠慮する場合があります。
遠慮は、特に日本では美徳的価値観で評価されることがよくありますが、この遠慮はある局面では「伝えるべきことを伝えない」「やってもらうべきことをやってもらわない」という結果になります。
特に品質が関係する場合やビジネスのシーンでは、この遠慮が致命的な問題となることがあります。
「遠慮をしない」「遠慮をさせない」状況や環境作りを心掛ける必要があります。

以上、最近の大手メーカーの品質問題を切り口として、問題が生じた原因を色々と考えてきましたが、これは何も品質問題に限ったことではありません。
お互いの信頼の上に成り立つ様々なビジネスシーンでも必要な事柄が含まれています。
ぜひ、問題を未然に防ぐという観点から実践できるところから実践してみてください。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大谷 常緑

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。