お父さんとの関係を見つめてみよう(女性編)

恋愛で、対人関係で見過ごせないお父さんとの関係。

どんな影響があるかを見つめてみる第一弾です。

カウンセリングの中で、よく“ご両親との関係”に着目することがあります。
「三つ子の魂100まで」ということわざもあるように、幼少期の両親との関係が男女関係や仕事、対人関係に及ぼす影響はとても大きなものがあります。
そこで、今回からお父さん、お母さんとの関係の見えない影響をお伝えしたいと思っています。

女性、男性、それぞれの立場から、両親との関係を見つめなおすことで、今の問題、これからの人生により良い光が見えて来れば・・・なんて思ってます。

もちろん、ここで紹介する事例がすべて当てはまることも無いかもしれません。
カウンセリングの現場では、こうした一般論ではなく「個別論」が中心になりますからね。
その中でも特に特徴的と思われる影響をご紹介させていただきます。

今回はお父さん+娘にフォーカスを充てています。
男性は自分のパートナーを理解する一つの見方としてお役立てください。

●お父さんの心理的な影響

お父さんの心理的な象徴というのは、社会性に関するものがほとんどです。
仕事、お金、権威・権力などのジャンルです。
女性にとっては異性ですから、パートナーの象徴になりますね。

お父さんとの仲がうまくいってなかったりすると、仕事やお金の面で苦労することがあります。
逆に仲が良すぎてしまうと、そうした問題は出てこないものの、女性にとってはパートナーとの関係に影響を与えてしまいますし、男性にとってはいつまでも息子でいたい欲求が強く「大人の男性」になる抵抗勢力になってしまうことが多いようです。

●お父さんとの距離が遠い場合

今の20代、30代にとって、そのお父さんというのは団塊世代もあって、モウレツに仕事をされていた頃にあたります。
従って、家庭よりも仕事に意識を向けたり、強い競争意識を持っていたり、父子間の距離も空いていることが多いように見受けられます。
また、仕事とは別に、アルコール依存症だったり、暴力的だったり、はたまた、浮気性なお父さんだったとしても、お父さんとの距離は空いてしまいますね。
特にこうした場合はお母さんとの癒着の問題がでてきたり、お父さんの2面性(優しいお父さんと怖いお父さん)から、パートナーシップに与える影響も少なからず出てきます。

お父さんとの距離というのが、女性にとっては「男性との距離」の“ものさし”になります。
お父さんと距離が離れていると、その離れた分だけ男性との距離を取ってしまうんです。
近い場合ももちろん同じです。

お父さんと離れていた分だけ、お父さんに甘えたり、頼ったりする経験が少なくなりますから、心の中に「甘えたい欲求」や「寂しさ」などが蓄積されていくんですね。
小さい女の子にとっては「パパはとっても大好きな人!」ですが、なかなか近づけない分だけ、いつも顔色を伺っていたり、甘えたい気持ちをぐっと我慢する癖がついてしまいます。
そうすると、彼氏ができたときには「もっと近づきたいんだけど、なかなかできない」とか「彼の前に出るとなかなか素直になれない」あるいは反対に「彼だけにすごく依存してしまうんです」といった壁を持ってしまうことが少なく無いようです。

そして、その“ものさし”が長くなると、彼ができても距離が空いていますから、寂しい分だけ無意識的にその距離を何かで埋めようとしてしまうんですね。
結婚されて子どもができた場合には、子どもで埋めようとして癒着してしまいます。
また、その間に“仕事”を入れれば「ハードワーカな彼」となり、“奥さん”を入れたら「不倫」に、“距離”を挟めば「遠距離恋愛」になっていきます。
もちろん、“暴力”や“アルコール”、“ギャンブル”を挟むことがありますね。

ですから、自分のパートナーがそうした問題を抱えているときには、そのパートナー自身の問題でもあるのですが、案外自分自身の心理的な影響が作り出していることも少なくありません。

例えば、ある女性のお父さんはアルコール依存症な仕事人間でした。
だから、小さい頃はお父さんに近づく時はいつも「今は大丈夫かな?」て思っていたそうです。
もし酔っ払っていたとしたら、暴言吐いていじめられること請け合いですから、すごく気を遣ってしまったんですね。

ですから、彼女の恋愛は遠距離恋愛やハードワーカなどの障害付きのものばかりでした。
その彼女をカウンセリングしていったときに見えてきたものは、自分を隠したい気持ちだったんですね。
お父さんの前ではいつもいい子をしてきました。
(そうじゃないと怒られますし、愛されないと思ってしまっていたからね)
だから、彼氏の前でも「自分の悪いところは隠し、いいところだけをアピールしよう」という思いが強く出てきてしまったんですね。
だから、彼女は彼との距離が近づくに連れて、酷い自己嫌悪や恐れ、不安を感じるようになりました。
本人はもちろん、もっと近づきたいし、いちゃいちゃしたい気持ちがたくさんあるのに、近づけば近づくほど、彼との関係に不安を感じてしまうようになったんです。

だから、彼女にはお父さんとの距離を縮めていくようなセラピーをしていきました。
そうして、寂しがっている小さな女の子がパパに甘えられるようになってきた頃、彼との結婚話が進み始めたのです。

●お父さんとの距離が近すぎる場合

エレクトラコンプレックスの考え方でいくと、このタイプは「勝者」で、特に「圧倒的な勝者」になりますね。
そうすると、お母さんからお父さんを奪ってしまった感覚が強い罪悪感を作り出します。

お父さんに愛された分、男性は得意です。
極端に言えば「世の中の男はすべて私のもの」みたいな感覚があるので、男性に近づくことは何の苦労も感じませんし、男性にとっても近づきやすい女性になります。

ところが、近づきすぎて男性に「気があるんじゃないか?」って誤解を与えたり、逆に彼の恐れを引き出してしまって距離を空けられてしまったりすることもあります。
また、そんな態度から「尻軽女」との噂を立てられたり、近くの女性たちの嫉妬を買って「男友達はたくさんいるんだけど、女の子には嫌われるんですよね」なんて問題を持ってみたりします。

あなたの周りで「男の前と女の子の前では態度がころっと変わる」女の子がいるとしたら、たぶん、このタイプと思って間違いないでしょうね。

パートナーシップの中では、罪悪感がある分、とても癒着的な恋愛をすることが多いようです。
ある女性はこんな話をしてくれました。
「彼ができると、なぜかお父さんに申し訳ないって気がするんですよね。エッチも始まってしまえばのめり込んで激しい方だと思うんですが、終わった後にすごく虚しい気持ちになったり、いけないことをしてしまったような気持ちになってしまうんです」

お父さんと仲が良かった分だけ、そして、お母さんに潜在的な罪悪感を持っている分だけ、彼氏ができたり、彼氏とエッチするときに「お父さんを裏切ってしまった」ような気持ちになるんです。
それはまるで浮気をしているような感じになるんですね。

そして、いざ結婚となったときに、はたとある壁が出てきます。
それは「私の理想のパートナーはお父さん」ですから、お父さんと彼をあらゆる点で比較してしまうんですね。
自分が小さい頃のお父さんはたくましくてかっこよくて、自分を本当に愛してくれる、守ってくれる男性でしたし、大人になった今は会社や社会の中でもある程度の地位や責任を持っています。
対する彼氏といえば、優しかったり、魅力的だったりしても、お父さんに敵わない点がたくさんあるわけですから、とても分が悪い勝負になりますね。

そして、先ほど紹介したように心のどこかでお父さんを裏切ってしまうような気持ちもあるので、彼氏は途切れずにずっとできるのに、結婚となると引いてしまう現象が出てきたりします。

彼氏をお父さんに紹介するのも勇気がいる場合がありますし、お父さんが「あんな男ダメだ」と一言言えば、あっさり別れてしまう女の子もいます。

このタイプは「ハートの真ん中にお父さんがいる」という風に例えることがあるのですが、お父さんにはきちんとお父さんの席に座ってもらって、ハートの真ん中にはパートナーを入れてあげることが目標になりますね。

また、このケースは男兄弟との距離が近すぎる場合にもよく見受けられる現象です。
特にお兄ちゃんと距離が近すぎる場合には、パートナーシップの中ではここで紹介したのと同じようなケースがたくさんあるようです。

●適度な距離を保つために

離れすぎている場合には近付き、近づきすぎている場合には手放す方法が一般的なアプローチです。
とはいえ、今まで数十年も知らず知らずのうちに作り上げてしまったパターンですから、焦らずじっくり取り組む必要がありますね。

できれば避けて通りたいものですけど、ここは向き合う勇気を持つことが大切です。
そして、すぐに楽になればいいんですが、多くの場合しばらくの間、嫌な感覚が出てきたりするものです。
ですから、一人で向き合うよりも信頼できる人にサポートしてもらう方が安全ですね。

僕たちの心というのは巧みなもので、向き合わないように、向き合わないように仕向けてきます。
ふっと何か用事を思い出したり、気持ちが削がれたり、うまいこと纏めてしまったり、「あれ?」なんてことになってしまうこともありますね。

そんな抵抗が無意識的に起きて来ることもあるんですね。
先日、面談のカウンセリング中に大嫌いなお父さんと向き合うセッションをしていたんですね。
そしたら、電源を切っていたはずの携帯電話が急に鳴り出したこともありました。
それを心理的な抵抗と言うこともできるんですけど、自分ではそんなこと、分からないですもんね。
僕も「面白いもんですねえ、こういう時に電話が鳴るなんて・・・」って笑ってしまいました。
でも、そこで諦めずにもう一度向き合ってみると、それまでの抵抗がふっと止んで、すーっと心の中に入っていけるから不思議なものです。

まずは、男性との関係や仕事などの中で起こっている出来事に、お父さんの影響があるって思ってみてみてください。
「んー???そーかなー???信じられないなあ」って思いで結構です。
誰でも最初はそういうものですから。
そんな“意識付け”をしておくだけで、ふとした出来事がきっかけで「あっ!」て気付くことも出てくるようになります。

深刻に捉えてしまうとはまりこんでしまいますから、気軽に考えるところから始めてみてくださいね。
そして、今の男女関係や対人関係をより良いものにしていきましょう。

この記事を書いたカウンセラー

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