お父さんとの関係を見つめてみよう(男性編)

恋愛で、対人関係で見過ごせないお父さんとの関係。

今回は男性編です。

前回は女性編をお送りしました。
今回は男性編です。
女性の方はパートナーや周りの男性を見る目でご覧下さいね。

同性の親は良くも悪くも自分自身のお手本になります。
いわば金型のような基本形になるんです。
それを大きくなるにつれて環境に適応するようにその金型を変化させていくのが“成長”ってことなのかもしれません。

小さな子どもにとっては、親が大統領でも、犯罪者でも「大好きなパパ!」に違いありません。
成長していくに連れて「あんな奴!」と思ってしまう存在でも、小さな頃は当たり前のようにその立ち居振る舞い、考え方、価値観まで真似をしながら成長します。
それが幼稚園とか小学校とかに入って、周りの親の存在が見えてくると比較するようになるわけです。
それで「うちの親って・・・」なんて自分の親が良く見えたり、悪く見えたりしてくるんですね。

それで良く見えたら真似をしようとがんばりますし、悪く見えれば“反面教師”として、反対の生き方を選ぶようになります。
お父さんの厳しいところが嫌いならば、過剰に優しくなろうとしてしまうわけです。

●お父さんと男の子の関係

ほとんど死語みたいなもんですが、「親父を越える」という言葉がありますね。
これは男性同士の競争を象徴する言葉なのですが、息子は父親の背中を見て育ち、やがては父親を越えることを目指して成長します。
いくつになってもこの感覚が残ることが多く、よって常にライバルになることが少なくないですね。

そういう感覚ができるのは元々男性には種を残す意識があるから、と言われます。
かつての一夫多妻制にも象徴されますが、男性は強いものしか妻を持つことができなかったんですよね。
つまりは「弱さ」ということを徹底的に嫌うわけです。
弱ければ生き残れない・・・そんな感覚なんですよね。
幼い頃に涙を見せようものならからかわれて、弱い奴として周りに認識されますから、悲しくてもぐっとそれを堪えるようになります。
大人になっても、冷静に、感情的にならないのが大人の男ってイメージがありますから、クールなタイプがもてはやされたりもしますね。
その一方で、強さをアピールするための情熱も強調されるようになって、熱い男になることもあります。
だから、男性は一般的に「クールガイ」と「熱い男」に分けられるようになるのかもしれません。

どちらにせよ、強い自立を求められるのが男の子の生き方であり、そのお手本となるのがそのお父さんになるんです。
だから、お父さんの存在というのはライバルとして常に意識のどこかにある存在で、とても大きな影響力を及ぼしています。

ただ、お互いを男として認め合うことができると、そこには強い友情のようなものが芽生え、女性(奥さん、女兄弟)が入り込めないような空気を作ることも少なくありません。
お父さん側にも、息子側にも自信や大人のマインドが必要ですので、究極の目標になりますね。

また、社会に出て行くとそこはまだまだ男性(的な)ところですので、お父さんとの関係は20代~30代になってから強く影響を及ぼすようになってきます。

僕自身は仕事の都合もあってお父さんとの距離があって、尊敬はしていたけれど存在感が薄かったんですね。
また、とても愛情が深かった一方で、それをどう表現したらいいのか分からない人でもあったと思っています。

だから、僕はまず大人の男性と上手に付き合えない問題を抱えていました。
ある程度年がいっている場合は良かったんですけど、比較的年齢の近い男性とはどう付き合っていいのかが分からなかったんですね。

●偉大なお父さんを持つと・・・

偉大なお父さんであればあるほど、その息子としては肩身が狭くなってしまうことが少なくありません。
どこに行っても「○○さんの息子さん」と言われるわけですから、自分を主張したい思春期以降には自分の居場所を定められず、道を外れていくことも少なく無いようです。
そして、“権威との葛藤”を感じるようになり、社会の中で生きにくさを感じるようになることが多いですね。

そして「良いことで目立てなければ、悪くなって目立とう」という感じになって非行に走ったり、放蕩息子になってしまったりします。
ま、戦意喪失とでもいいましょうか。
お父さんが偉大すぎる分だけ、子ども心に高い目標を持ちすぎるようになるんですね。
簡単に言えば「毎回テストで100点を取るぞ!」なんて実現不可能に近い目標になってしまうんです。

これは自分をちっぽけに扱ってしまう分だけ、とてつもないことをして認めてもらわなければ、という心理が背景にあります。
でも、結局は実現が難しいものばかりになりますので、どうしても劣等感や失敗感を心に抱くようになるんです。

そして、劣等感が強い分だけプライドが高くなりますので、ちょっと付き合いづらい関係を築いてしまうことも少なく無いようです。
「俺はこんなにすごいんだぞ」とか「お前はもっと俺を尊敬しなきゃあかん」とか、本当にすごい人は自分のことすごいなんて言わないだろう・・・なんてツッコミを入れたくなるような態度をとってしまうんですね。
これを“力の証明”なんていいます。

その裏には「男性としての自信の無さ」が見え隠れすることがあります。
つまりは力を誇示しないと周りの人は自分なんて認めてくれない、なんて心の中では思ってしまっているんです。
そして、そこでは虚しさや惨めさを強く感じてしまうようになり、無価値感を心の中に強く持ってしまう(そして、それを一生懸命抑圧する)パターンを持つんです。

また、男女関係では父親が偉大な分、結婚や子どもを持つことに対して臆病になる傾向もあるようです。
心理的に「父親=偉大なもの」となってしまっていますから、自分をちっぽけに扱ってしまった分だけ、なかなか前に進めない関係を築きます。

こういう男性に対しては、女性側が男性としての魅力や自信をサポートしてあげる必要があるものです。

●威圧的なお父さんを持つと・・・

威圧的だったり、暴力的だったり、そんな強いお父さんを持つ場合は、二つの傾向が見られます。

まず一つはそのお父さんと徹底抗戦を挑むタイプなのですが、子どもの自分ではお父さんには勝てませんから、敗者になって“権威との葛藤”を持ってしまうことが少なく無いようです。
つまりは、ここでも劣等感や敗北感を強く持つようになるんです。
これは先の「偉大なお父さんを持つと・・・」と同じパターンです。

このタイプは競争意識や上下関係にうるさくなりますので、お付き合いする女性に対しても、どこかしら威圧的だったり、まるでお父さんが家族にしていたようなパターンを内在させることも少なくありません。

こうした彼とお付き合いしていく場合には、一般的に、彼の内面的な自信の無さや弱さを見つめてサポートしてあげることが要です。
つまりは彼のその部分を知り、理解していくと、彼が取る威圧的な態度もそのように感じられなくなっていきますし、彼の態度も変わっていくことが少なくありません。
ただ、こうしたタイプとお付き合いすると自分自身も彼のその競争意識に巻き込まれてしまいがちですので、注意が必要かと思います。

また、一方ではお父さんと戦うことを拒絶すると、これは同時に男性性を否定する形になりますから、相対的に女性性が成長した男性になります。
男性が苦手だったり、恐れを持ったりしますが、その一方で女性から見ると接しやすい面を持ちます。
ただ、男性らしさに欠ける分だけ恋愛の対象になりにくかったりしますね。
「やさしいんだけど、ちょっと頼りないなあ」とか「男として見られないだよなあ」なんて気持ちを女性側が持つようになります。

このタイプの男性は、心の中の男性性が傷ついていることが少なくないですから、そこをケアしてあげたいですね。

●存在感の薄いお父さんを持つと・・・

影が薄かったり、頼りない感じだったり、仕事が忙しくて家にいない時間が多いお父さんの場合、男性としてのベースになるモデルが“弱い”ものになりますから、男らしさにちょっと欠けるタイプに成長することが多いようです。

最近、若い男の子が弱くなった・・・なんて話を耳にしたこともあるかもしれませんが、モーレツに働いたり、忙しいのが当たり前の社会になり、お父さんの存在感が薄れたことがその要因のひとつとしても考えられますね。

また、その一方で、お父さんの存在を補おうとする場合もあります。
このケースでは、お父さんを反面教師にしますので、お父さんができなかったことを家族や彼女、周りの人に与えようとするようになります。
だから頼もしい反面、お父さんをバカにしてしまうことがあります。
これは男性を軽蔑したり、バカにしてしまう行動に現れたり、同性が苦手になってしまうことも少なからずあろうかと思います。
ちょっと肩肘張ったタイプになるんですね。

ところが、このほとんどがお父さんへのあてつけのようになるので、ついつい犠牲をたくさんしてしまい、いっぱいいっぱいになってしまうこともあるんですね。
それはまるで子どもなのに大人の荷物をいっぱい持とうとしているように映るもので、周りの人から見るととても危なっかしい印象を与えます。
でも、自分がしなければ、と思う分だけ、周りに助けを求めることはできなくなりますから、そこをサポートしてあげることが大切です。

この場合、子どもなのに早く大人になろうとすることになりますから、子どもらしい甘えたい気持ちが満たされなくなります。
それで口では大人っぽいことを言っていても、態度に子どもっぽさが見え隠れすることがあるんですね。
とても強いニーズ(欲求)を持ったり、不満をたくさん抱えたりするんですね。
それは無理して大人になったときに持て余したものがでてきてしまったような感じで、30歳のいい大人なのにまるで幼稚園児のような態度をとってしまうこともあるでしょう。

それから、もうひとつのパターンとしては、お父さんの跡を継ぐように自分自身も存在感を失ってしまうタイプです。
これはお母さんがとても強い存在である場合に多いのですが、女性に対してすごく苦手意識を持ってしまうようになり、なかなか恋愛に踏み出せなかったり、社会の中でも自分のポジションを見つけられなくなったりします。

●大人の男性になろうとすること

社会に出るとお父さんとの関係が及ぼす影響は少なくありません。

これは女性でも同じですが、上司や社長、会社そのものにお父さんを投影し、お父さんとの関係を再体験することも少なくないんですね。
つまりは、威圧的なお父さんの下で育ったら、威圧的な上司にばかりめぐり合う、なんて風に。

また、お父さんに対して否定的な感情を持っていたり、心の距離がある場合には大人の男性になることに抵抗するようになります。
男女関係においては結婚話が進まなかったり、セックスレスになったり、または遊び人になったりするんですよね。

そこでは一度きちんとお父さんと向き合ってみる必要があります。
それは大人の男性になるプロセスでもあるんです。

まずは、父親に対してどんなイメージを持っているのかを考えて見ましょう。
もし、結婚されている場合には、義理のお父さんに対してどんな感情を持っているのかも合わせて考えてみると良いでしょう。

そして、そのお父さんの影響がどんな風に今の自分の生活に反映しているのかを、見つめてみることが大切です。

たとえば、お父さんとすごく距離があった場合、会社の上司とどのように接していいのかがわからなくなったりすることはありませんか?
また、お父さんが威圧的なタイプだった場合、上司の顔色を伺ってしまうことは少なくありませんか?
お父さんのことをバカにしていると、ついつい会社の中でも周りの人間をバカにしてしまうような態度が出てしまうかもしれませんね。

今の生活の中にお父さんとの関係を反映させて見てみると、フィットする場合が少なくないかと思います。
もちろん、いろんな影響が混じり合って今の状態が作られていますから、これだけで明解になることは少ないかもしれませんが・・・。

ただ、はじめはさっぱり何もわからないかもしれません。
男性は感情を抑圧しがちですから、いざ考えてみようとすると頭の中がシーンとなってしまうことも少なくないんですね。
最初はそれでかまいませんから、少しずつ気長にチャレンジしていきましょう。

そして、そのお父さんの影響を見極めたうえで、自分がどんな男性になりたいのか、あるいは、どんな人間になりたいのかを改めて見つめなおして見ましょう。
これが新たな目標設定になります。

面倒に感じてしまうかもしれませんが、その目標が定まったとしたら、それをお父さんに伝える手紙を書いてみることもお勧めします。
これは実際に見せても、見せなくてもどちらでもかまいません。
この手紙を書いてみると、自分自身への決意文になっていることが少なくないんですね。
ですから、お父さんに渡すことよりも、それを手元において見つめていく方が効果的かもしれません。
ぜひ一度チャレンジをしてみてください。

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