恐れから選択すること~犠牲の心理学2~

僕たちは知らず知らずのうちに「○○になるのが怖いから、××しよう」と恐れを使って行動を選択してしまうもの。

皆さんの中で「~になるのが怖いから、これをやっておこう」という経験はありませんでしょうか?

「嫌われないように、イヤなことも我慢した」
「怒られないように、笑顔を作った」
「浮気されないように、少々イヤでもセックスしていた」

そうした「本当はしたくないんだけど、恐れや不安を感じてやってること」を“犠牲”と言います。

そして、その結末は・・・嫌われないようにやってたのに嫌われた、浮気されないようにしてたのに浮気された・・・などなどその恐れが現実のものとなってやってくることも少なく無いようです。

心理学にはこういう格言もあります。
『○○にだけはなりたくない・・・と思っていると○○になってしまう』
という。

その一方で、嫌われないように頑張ってお付き合いしていても、その相手の気持ちって半分しか受け取れなくなるんですよね。
「私が嫌われないように頑張ったから、彼も私のこと好きでいてくれるんだ」
と思ってしまうから。

そこでは「私一人が我慢して、彼は私の気持ちなんてちっとも分かってくれない」という不満が自然と溜まりますし、それがやがては「どうして私のことも考えてくれないの!」というニーズとなって相手に襲い掛かってしまうことにもあります。

あるお客さまがその話をした際に「ほんと、私の自作自演というか、自己満足なのかもしれないですよね」って名言をおっしゃったのですが、感情的にはまさしくそんな気持ちになってしまうのかもしれません。

●恐れから選択してしまうこと

僕たちは幼少の頃から、そんな「恐れ」を使ってコントロールされる経験を少なからずしてきたのかもしれません。(※)

「お母さんの言うこと聞かなかったら、怖いおじさんがやってきて、○○君をつれてっちゃうよ」
なんて風に、怖い思いをしたくないからお母さんの言うことを聞いてきたわけです。

それがやがては、お母さんに言われるでもなく「○○したら、おじさんに怒られちゃうかも」という風に、自分で自分を恐れを使ってコントロールするようになります。
いわば、これが“犠牲”というものの素かもしれません。

そして、成長していくに連れて「先生に怒られないように」とか「周りの友達に嫌われないように」とか、自然と僕たちは周りに気を使い、犠牲をしていくようになります。

でも、ある程度の気遣いは、むしろ、協調性として長所になりうるものでもありますが、それが過剰になってしまうと、今度は“犠牲”となって、感情の我慢、抑圧を作り出します。

そんな風に、小さい頃から僕たちは自然と“恐れを回避するように”行動を選択してきてしまったのかもしれません。

そこでは、自分自身が本当に欲しいものよりも、誰かの望むもの、そして、自分を何かから守るものの方が優先されるようになります。

本当は自分はオムライスが食べたいのに、周りの子がみんなカレーライスにしたとしたら、何か悪いような気がしたり、ついつい自分も「あ、やっぱり私もカレーライスにしてください」と改めたくなるのも、その犠牲の一つと言えるかもしれません。

それがカレーライスだったら、まだマシですよね。

「彼に嫌われないように、いい彼女をしなきゃ」
「リストラされないように、不満も我慢しなきゃ」
「旦那が私に飽きないように、しんどくても頑張って女らしくしなきゃ」
とかになってくると、人生がかかってきますから、犠牲も半端じゃなくなります。

●恐れが相手に与える影響

そうして恐れから物事や行動を選択していると、最初に行動していたように恐れていたことが現実に起こってしまうことも少なくないものです。

カウンセリングの中でもよく耳にするんですが、
「その問題が起きたときにやっぱりな・・・と思ったんですよ」
なんて、話される方も少なく無いんですね。

「浮気されないように頑張って女性らしくしていたのに、やっぱり浮気してたんですよ・・・」
と涙ながらに話される奥さんもいらっしゃいます。

頑張ってる奥さんを目の前にするわけですから、僕としても厳しいことは言い辛いのですが・・・。

少し客観的な目を持ってみましょうね。
あなたが、浮気されないように頑張ってご主人に尽くしているとしましょうね。
その時、あなたの表情はどんなものだったんでしょうね?
それを見ているご主人はどんな気持ちになるんでしょうか?

その言葉を聞いて、奥さんはハッとした表情を浮かべられました。

「知らないうちに自分のことばっかり考えていたのかもしれません。
そんな必死に頑張って尽くされたら、主人だって気味が悪くなりますよね」

辛いことですが、それは事実だったのかもしれません。

恐れから行動を選択するとき、どんなに隠したつもりでも、そこには悲痛さや切迫感を隠すことはできません。
人間って目に見えるものだけではなく“感覚”も使うものですからね。
「顔で笑って、心で泣いて」も、一時凌ぎにはなれど、継続していけば、泣いている心ばかりが強調されるようになっていくものです。

そして、その恐れの強さだけ、または、そんな犠牲をしている期間が長くなればなるほどその感覚は強くなっていきます。

そうすると、その奥さんのように「浮気されないように頑張ってる」姿が、逆にご主人にあらぬプレッシャーを与える結果になってしまうんでしょう。

女っぽさをご主人にアピールする裏側で、「こんなに私が頑張ってるんだから、あんた、浮気しないわよね」なんてメッセージを知らず知らずに送ってしまったのかもしれません。

女性が女らしさを大切にしたり、成長させようとしたりするのは、とっても良いことです。
でも、それが「浮気されないように・・・」「嫌われないように・・・」という犠牲を伴う分だけ、むしろ、逆効果になってしまうことが多いようです。

●恐れを乗り越えて選択すること

そんなときは、その恐れを乗り越えてみる必要があります。

今日仕入れたばかりの新鮮なネタをご紹介しましょう。

歌の発表会を控えたお客さまが、なかなか自宅では練習できないままに日々を過ごしていたんですね。
そこでカラオケボックスに行って練習しようと思ったのですが、一人でカラオケボックスに行くのは恥ずかしいし、店員さんや周りのお客さんに変に思われるのが怖くて二の足を踏んでしまっていたんです。

でも、そこで彼女は考えたわけです。
「一人でカラオケボックスに行って恥をかくことを恐れるよりも、きちんとした歌を発表会で披露することの方が大事じゃないか!」と。

そう思ったら、勇気が沸いてきてカラオケボックスに出かけることができたそうです。

これは“恐れ”(=変に思われること)よりも、“大切なもの”(=いい歌を披露すること)を選択された、分かりやすい一例ではないでしょうか。

最初の方で触れましたが、“恐れ”から選択してしまうと、多くは自己満足、自己完結になってしまいがちなものです。
そこでは本当に大切なものを見失ってしまうんです。

だから、今の自分にとって何が大切なのかを考えてみること。
これが何よりも犠牲を抜け出すヒントになります。

犠牲を手放すと、本当に相手に与えたいものを与えられるようになります。
「嫌われないように、いい彼女でいなきゃ」という犠牲を手放せば、純粋に「いい女」を彼に与えられる女性になれるんです。

先ほどの奥さんの場合では「浮気されないように」ではなく「素敵な奥さんを持つことはご主人にも嬉しいことだから」という理由で女を磨くことが大切なんです。

「上司に嫌われないように」仕事を頑張るよりも、「いい仕事をして満足感を得たいがために」仕事を頑張る方が、より効果的でもあります。

「彼に嫌われないように」我慢するよりも、「彼ともっといい関係を築けるように」言いたい事を伝える方が、ずっと前向きでしょう。

もちろん、そこでは自信の無さや過去のトラウマなどが影響しているケースも少なくありません。

先ほどの奥さんは、過去に付き合った複数の男性に何回も浮気された経験があるそうです。
だとしたら、その奥さんは知らず知らずのうちに、「今度の彼も浮気するんじゃないだろうか?」と強い恐れを抱かれるのも無理のないことかもしれません。
でも、「無理のないこと、しょうがないこと」で、問題は解決されないのも事実ですよね。

辛いけれど、元彼との関係で受けた心の痛みに向き合って、乗り越え、本当にご主人を信頼できる女性に成長することが、その奥さんには求められていると思うんです。

犠牲をしてしまう、恐れから物事を選択してしまう裏には、そんなまだ未解決な心の痛みが眠っているものです。
もし、すぐにその恐れが拭い去れないとき、改めてその心の痛みを癒してあげる必要があるのかもしれません。

実際、その奥さんは浮気をしていた過去の彼や今のご主人を許していくプロセスを選択されました。
それは「浮気されないように頑張る」のではなく「いい関係を築きたいから頑張る」という選択でもありました。
「浮気される」という恐れではなく、「夫婦がいい関係でいる」という大切さを選ばれたんです。

少々の痛みや頑張りは必要だったのものの、その後数ヶ月して、ご主人はきちんと元の鞘に、前以上にフィットして納まったようです。

あなたもそんな恐れを乗り越えて、本当に大切なものを大切にできるように犠牲を手放していくことにチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。

※参考

『犠牲の愛~犠牲の末に手に入るものはこれだけ!?~』
http://www.counselingservice.jp/lecture/lec77.html

『人を操りたい心理~コントロールの心理学~』
http://www.counselingservice.jp/lecture/lec44.html

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